表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/123

25話  三度目の襲撃

 周囲の建物などのアスファルトが焦げてそこから黒煙が上がる。

 誰もそれを気にも留めず足を動かす。目に映る事象を気にする余裕がないからだ。


 突如現れたキメラと呼ばれる人々を襲う化け物。中には火を噴く個体もいて、獲物である人間を次々と喰らい尽くす。

 恐怖と絶望の満ちた人々の叫び声が耳に届く中を走る三人の姿。先頭を走る女性の後を二人の少女が追い掛ける。


 自衛隊が逃げる人々の避難誘導をしていて、三人もその指示に従って走っている。

 一番後ろを歩く少女――小山優理(こやまゆうり)は三度目の化け物の襲撃に遭遇する。


 一度目の襲撃でそれまで当たり前だと思っていた日常を奪われ、二度目の襲撃で自分の無力さに絶望し、自分の命すら捨てようとした。

 そんな彼女の命を救ったのはエドナと同じ世界から来た神が創った人間だ。その存在はキメラを倒す力を持っており、人々はその存在に希望を見出す。


 キメラの襲撃で起きた事故で優理は身体にその神の神気が宿してしまったらしく、同じ境遇の少年たちと共に保護される。


 これまでの襲撃で誰かを見捨てながら生き延びてしまった優理だが、もう一度自分に何ができるのか、見つけるために生きる事を決めた。


 だから、その答えを見つけるまでは生きるのを諦めるわけにはいかない。

 優理は足に力を込めて走り、自分の前を走る女性――桐島岬(きりしまみさき)の後を付いていく。


 彼女は自分たちを保護してくれた女性だ。

 詳しい話は聞いていないが彼女も政府の関係者らしい。


 人気が少なくなった時に、避難誘導をしている自衛隊の隊員の一人に、懐から身分証のような物を取り出す。その隊員は岬と優理、そして、もう一人の幼い少女――一村夏鈴(いちむらかりん)を車に案内する。

 他の人は別の隊員が避難誘導の指示に従って避難している。


 今回の襲撃で自衛隊の行動は一度目や二度目よりも早く感じる。

 襲撃後すぐにキメラの足止めをしながら避難誘導を開始し、犠牲者を出さないように奮闘している。


 二回目の襲撃で自衛隊も多くの隊員を失ったが、自分たちの武器ではキメラを倒す事が叶わなかったらしい。そのため、キメラの足止めと人々の避難誘導に専念しているとの事だ。


 そんなキメラと戦うのはキメラと同じ世界から来た技術の神が創った二人の人間だ。

 その二人はロボットのような全身を装甲で覆われた姿でキメラと戦い、倒す力を持っている。


 優理はその二人を知っているのだが、実際にキメラと戦っているところを目撃していないため、その実力を知らない。


「あの、これからどこへ?」


 車に乗り込み、全速力で走ってために速い間隔で脈を打つ心臓を息を吸う事によって落ち着かせようとしながら岬に尋ねる。


「んー、簡単に言えば秘密基地みたいなところかな?」


 命の危険性が少なくなったからなのか、岬の表情は少しだけ柔らかくなっている。それでも、普段の表情よりも真剣だ。

 彼女の言う秘密基地というものがあまり理解できなかった。この状況でふざけているわけではないのだろうが、大人が口にするには少々子供っぽいような単語だ。


「私たちはキメラを倒す力は持っていないけど、何もできない訳じゃないからね」


 緊迫した状況の中、優理たちを乗せた車は無機質なエンジン音だけを響かせながら、ある場所へと走っていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ