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ちょっと少ないかもしれません....



暫くして夕日も沈んで辺りは暗くなっていた。

「ちくしょう!」

それでもまだ、大和の現実からの逃走は終わらない。そしてナナはそれを追うのに必死だった。

「ちょっと待っ───ふぁ!?」

ナナは途中で転がっていた石ころに躓いて派手に転倒する。

「大丈夫か!?」

驚いた大和が足を止め、ナナを起き上がらせる。

ナナはところどころに擦り傷を作り、血は出ていないものの見てるだけで痛々しかった。

「肘とか膝は大丈夫か?」

「なんのこれしき!へっちゃらです!」

「そ、そうか......?かなり派手なこけ方したけどな....」

「そんなことありませんよ!」

そう言って元気良く立ち上がるが、歩くとなるとひょこひょことぎこちない。

「本当に大丈夫か....?」

「うっ....まぁ....」

ふぅ、と大和は一息ついてナナに背を向けてしゃがむ。

「ほら、乗れ」

「え?」

沈黙が続く。

しまった、と大和は後悔した。この世界には『おんぶ』がないのであれば、大和のした行動は不可解なものになる。

「....すまん」

そう言って腰を上げようとした時、不意にトン、と肩に重さを感じた。

「....良いですよ」

耳元で優しく声をかけられる。その声が少しくすぐったく、大和は少し身を揺すった。

「....おう」





酒場。

大和がドアを開けると、そこにはセドリックがシャルナに何かを訴えていた。

「───そこを何とか!!」

「....嫌だよ」

「うぐっ....」

見た限りセドリックが劣勢のようだ。2人の間に割って入る。

「何の話をしてんだ?」

「ユウキ〜!丁度いいところに来た!」

そう言って大和の背中の上に乗っているナナを指さす。

「こんな可愛いらしい女の子を見殺しにするつもりか?なぁ!」

「そんなっ、可愛いだなんて!」

照れ隠しなのか手をブンブンと横に振る。だがそれが逆効果になった。周りのオッサン共が気持ち悪く黄色い声を上げる。

「う....」

シャルナはたじろぐ。それを好機と思ったセドリックはもうひと押しする。

「頼む!」

「......ッ!」

大和はそんな二人を目の端に追いやり、ナナを椅子に座らせる。

その後自身も椅子に体を預ける。

「....腹へった」

「そういえばお昼ご飯食べてませんよね....」

「....重かったしな」

「こら!女の子に重いなんて言わないでください!失礼ですよ!」

ナナの憤慨(したかのように見えた)にたじろぐ大和。

「すまん....」

謝ると、「わかればいいんです!」と自慢げに胸を反らす。

「....ところであの二人は何を話しているんです?」

ナナはまだ気づかないのか、首をかしげている。改めて2人を見やると、いまだ口論を続けていた。大和は一つ大きな溜め息をついて、ナナを睨む。

「......お前の宿泊先の話だよ」

「いや、別に必要ないですよ」

「えっ?」

「えっ」

大和がナナの予想外な答えに呆気に取られていると、酒場のドアが勢いよく開く。

「ナナちゃん!」

目をやると、ヒゲが繁茂した割りに頭部は全ての植生を許されていないキンド並のがたいのいい老夫が、息を荒げ大和に、いや、大和の隣にいるナナに向かって足早に接近して来る。

そしてナナに抱きつく。

「ナナちゃ〜ん!心配したぞ~!!」

髭を無造作に伸ばした顎でナナの頭をこする。

「ちょ、人前で抱きつかないで下さい!」

「あ、はい....」

ナナに怒られしゅんとする。その顔はまるで最愛の娘に拒絶された父親の憂いさを帯びている。

「....なぁ、ちょっといいか?」

大和が声をかけるとめんどくさそうな顔をしながら振り向く。

「あ? 」

この時点で大和は自身に少しばかり苛立ちを感じ、少しばかり毒を飛ばす。

「....今までお前は何をしていたんだ?」

「???」

この老夫は大和の嫌味には気づかず、ただただ首をかしげる。大和はまたもや大きな溜め息をついてもう少し分かりやすく説明する。

「....その間俺はこいつの為にに昼飯我慢する羽目になったし、宿泊先も探したんだけど?」

「......え? ああうん、お疲れ」

ハゲは適当に大和をねぎらいの言葉をかけると、ナナの腕を引く。

「え、ちょっ、ちょっと!」

ナナはなすすべもなく引っ張られていく。

「「「ちょっと待て!!」」」

その手を押さえるのは勿論、今回の件の被害者である大和、セドリック、シャルナの3人である。

「あぁん?」

カンに障ったのかピクピクと顔を引きつらす老夫。

大和は顎で酒場の出口を示す。

「....てめぇ、表出ろや」




今回大和がヤンキーみたい(笑)。

時間があったら新しい作品書いてみようかと思います!

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