Ⅵ
更新遅れました....
遅れたってレベルじゃないっすね....はい....
採用試験2日目。
前日は結局鍛錬1つせず、セドリックと少し話をして飯を食って、そのまま寝てしまった。
そしていざ決戦の場へと腹をくくって来てみれば、大和は驚きで口が開いたままだった。
目の前にあるのは今採用試験での、試合のトーナメント表。
「おい、これはどういうつもりだ?」
1人の男がセドリックに問い詰める
キンド程ではないが、筋肉がしっかりついており、鞘に収めた双剣の柄はボロボロでかなり使い込んでる感じがある。セドリックによると彼が今試験の優勝候補らしい。
名前はカイン・マルズドア、並外れた剣速で繰り出される剣舞と、時折使う蹴りで一度も相手のペースにさせずに倒す、というスタイルで同じ優勝候補の1人に僅か1分で勝利したらしい。
「適当なペアを作って試合、という形式ではなかったのか?」
「それがな....自由すぎるのもアレなんだわ....。とにかく、各対戦相手はこちらで決めさせてもらった。勿論、公平に選んでいるぞ」
セドリックはポリポリと額を指でかき、薄く笑う。カインは何かを言おうと口を開くがすぐに閉ざした。
「....チッ....」
そして何処かへときえていった。
セドリックはそれを見届けた後、声をかける。
「それでは始めるぞ。第5試合目、ヤマトユウキとナナ=ウルザードは前へ」
ナナ=ウルザード。
今回の試合相手で、ローブについているフードを被っているせいで顔はよく見えないが体つきで少女だろうか。
その中でも特に目立ったのは本を片手に持っていることだろうか。
第一の予測。
彼女がとても好戦的な文学少女で、あの分厚い角でなぐられたら確かにひとたまりもないが、効率が悪すぎる。それで一回戦を勝ち進めたならば彼女自身どれくらいの身体能力があるのだろうか。
第二の予測。
彼女があの本を特定の『なにか』をするときに使うとしたら。
「......まさか......」
大和は知っている。ある職業の女性は大体こういう格好をしている事を。
「始めッ!!」
開始の合図と共に何かをブツブツと唱えたと思いきや、複数の火球が何処からともなく浮かび上がり、まるで踊っているかのように彼女の周りをふわふわと漂う。
初めてではない。大和はその類が『魔法』であり、この世界において影響力があるのは、召喚初日から身を持って体験している。
だからこそその恐ろしさが分かる。
大和が前いた世界では妄想の象徴の一つだった『魔法』が、ここでは”妄想”ではなく”現実”として現れた。
つまり、だ。
威力や周りへの影響力もまた、その”妄想”と同じと考えてもいいのではないだろうか。
「はは....」
思わず笑い声が漏れる。自身の背中が冷や汗でべっとりしていた。
「───『まいった』、と言ってくれれば貴方は傷つきませんよ?」
大和の怯えに気付いたのか、にこやかな笑顔で降参を勧めるナナ。
お返しにと、引きつった笑みで返す。
「....生憎と、あんたに『まいった』と言う為じゃなく、あんたに勝って、そして優勝する為に此処まで上り詰めたんだ」
「....そう、ですか....。では!」
ナナは腕をすいっと前に振るとと、周りの火球が一斉に大和の方へと勢いよく飛んで行く。そのスピードは中学生が投げるドッチボールぐらいと言ってもいいだろう。それぐらいならと、普通に避けてしまえば、残りの火球の餌食になってしまうだろう。
大和はちょっと待ってと言う事が出来なかった事に少しだけ後悔した。
轟音。
火球達は一点へと集中して飛んで行き、着弾と同時に爆発した。辺りに飛び散っていった砂や石の破片と、そして何やら大きな影がナナがいる方向へと飛んで行くのが見えた。
砂でも、石の破片でもない、大和勇希だった。
「あちぃっ!!」
「なっ!?」
ナナは驚愕の表情で大和を凝視する。
彼女の作り出した火球は、複数創り出して応用がきくようにした分、個々の威力は低い。大和はそう予測して、火球の1つに当たれば人一人分通れる場所を探して、そのまま突っ込んで行った。
悔しそうな顔で睨んでくるので、大和は取り敢えずドヤ顔で返す。
「……どやぁ……」
「くっ!!」
ナナは顔をしかめてまた火球を創り出そうとする。
「おっとさせねぇっ!!」
大和は近くにあった石の破片を飛ばす。火球に当たり、ナナの目の前で爆発する。
「ひゃっ」
可愛らしい声をあげてその場にへたり込む。歩み寄って抜いたロングソードの切っ先を向ける。
「───『まいった』、と言ってくれればお前は傷つかないぞ?」
攻守逆転。
コケにされたナナは口調を荒らげ言い返す。
「....生憎と、貴方に『まいった』と言う為じゃなく、貴方に勝って、そして優勝する為に此処まで上り詰めてきたんですよ!」
「馬鹿」
大和は間髪入れずにナナにげんこつを喰らわせる。
「〜〜〜ッッ!?!」
予想外の痛みに頭を抱えて悶えるナナ。大和は溜息を一つついてから、踞った少女に説教をする。
「勝てないと分かってて挑むもんじゃねぇよ。潔く諦めろ」
「でも!」
「でも、じゃねぇ!」
ムキになって立ち上がったナナを蹴手繰りで転ばせ、そのまま4の字固めを決める。
「痛い痛い痛い!!」
「まいったは?」
「分かった!!分かったからぁ!!まいったまいったぁぁ!!」
ナナが降参の音をあげる。大和は4の字固めをすぐに外してやり、セドリックに顎で指図する。
やや不服そうに試合終了の声を発する。
「......勝者、ユウキヤマト」
周りの目は激しい非難となり、大和に浴びせつける。
あそこまで女子をコケにして、その後4の字固めも極めたのだから無理もないだろう。
そこで終われば、なら。
大和はナナに手を差し出す。
「......?」
「......済まなかったな」
大和の声からは 周りに対する恐怖や、いくら戦いといえども仲良くはしていたいという下心等は微塵も感じられなかった。
ただ真摯に謝って、手を差し延べる。
その全ての仕草は一点の曇りもなく、ナナはつい手を掴もうとするが、さっき迄の大和の所業を思い出し、途中でその手を払う
「......なんなんですか。今更優しくしたって騙されませんよ」
「騙すつもりは毛頭ねぇ。......ただ謝りたいだけだ」
「......」
目の前にいる差し伸べた手をゆっくりと掴む。その手は、とても柔らかかった。
出来るだけ周ペースで更新していきます!さーせん!!