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ⅩⅩⅠ

一日おきの投稿っす!

もっとブクマ人数増やしたいなぁ....

「木の実....お、これとかうまそう」

大和は手頃な木の実や、茸などを採集し、カインから貰った袋に詰めていく。

生きるためとはいえ、生物を自ら手に掛ける事を大和は好まない。

だから、『狩り』についてはカインに任せておくことにした。

だが、こんな森の中で、無害そうな動物達がとことこと歩いているのを見ると、あの光景を思い出してしまう。

木々を薙ぎ倒していきながら、壊れていく身体。

「.....うっ」

思い出すだけで全身が粟立ち、体中がむず痒くなる。

「忘れろ....忘れろ....」

目を閉じて、ぶつぶつと呪文のように呟きながら歩く。

勿論、前が見えないまま何かにぶつかる。

それは動物的な柔らかさでゴワゴワした毛が生えていた。

目を開けると、巨大な肉食獣が。

よだれの代わりに火が口から溢れるそいつを、大和は知っている。

「....カトさんチィーッス....」



大和は。

数分間、巨大な獣と睨み合っていた。

嫌な汗が背中に流れる。

あの時は、たまたま相手が油断していてあの鼻っ先に拳を叩き込む事ができたが、完全に警戒態勢をとっているため、こちらに勝ち目はない。

もし、ヤケクソで拳を振りかぶってみても、難なく躱されて、その後の反撃でその爪の餌食になる。その場合、きっと瀕死は免れないだろう。

身震いをしそうになったがこらえる。

そして、依然まっすぐなその瞳を睨み返す。

だが獣もまた、大和に恐怖していた。

身体能力に関してはは完全に有利なのに、その体を動かせないでいる。

今、目の前にいるこいつは、弱肉強食の世界において、完全に『食う』側である自分をたった一発で重傷を負わせることができる。

獣は、改めてその事実をうけとめると、密かに戦慄した。

まだあの傷は癒えてない。

獣は、1度たりとも大和から目を離さず、木陰に溶け込むように去っていった。

緊張状態が一気に解かれると、今まで以上に汗が止まらなくなる。

「くそ......」

額の汗を拭い、深呼吸で落ち着かせる。

(....そろそろカインが狩りを終わらせて来る頃だな........俺も、戻らなきゃな....)

元きた方向へ向き直り、歩を進めていくうちに、敏感になっていた神経が、何かの視線に気づく。

「......」

嫌な予感が脳裏を駆けめぐる。

袋を持ち直し、一気に目的地へ走る。

それに応じて、茂みからガサガサと音が近づいてくる。

目的地がすぐそこまで迫り、眩しいほどの光が溢れる。

大和はそこで足に力を込めて跳ぶ。

「うおりゃああああああ!!」

木々が開けていて、草原の様になっているそこは、大和とカインとの待ち合わせ場所であり、戦闘には向いている。

そして大和の後を追うように現れたのはさきほどの獣。

この状況を確認する様に辺りを見回す獣。

危機的状況は変わらないが、少しでも危険性を減らした。

「俺には仲間が───」

───いる、と言おうとした矢先、カインを見つけた。

彼は白旗を一生懸命振っている。

『降参』と『応援』をかけたというところだろうか。

「......」

大和は開いた口が塞がらなかった。

「グルルァァッッ!!」

そんな事はお構いなしと、襲いかかってくる獣。

なんとか回避して打開策を練る大和。

「頑張ってくだされー!!」

「...さぁて......どうしようか...」

カインにも見捨てられた今、最早万策尽きた。

大和は溜息をつくと、背筋を伸ばし、更に首の骨も鳴らし始める。

「....どうやら....本気を出さなくちゃいけないようだな....」

その一言で空気がガラリと変わる。カインも獣も真剣な表情で大和を見る。

張り詰めた空気の中、大和は片足立ちになり、更に両腕も上げる。

「こぉぉぉぉぉッ!!」

カインはこれから何が起こるのか、ペンと羊皮紙を手に取り、固唾を呑んで見守る。

だが、なんてことはない。ただのハッタリである。

だが、無論異世界の住人達は『荒ぶる鷹のポーズ』なんて知らない。

加えて、大和の表情に鬼気迫るものがあった為、本当に彼の言う『本気』があるのかと錯覚さてしまう。

それは、さっきまで大和を黙って見詰めていた獣も例外ではなかった。

耳を後ろにたおし、体を低くかがめて、そして低く唸る。

その姿はまるで、突然舞い降りたからすに怯える犬の姿を彷彿とさせた。

(よし...かかった....!)

歓喜で叫びそうになるがなんとか堪える。

お互いに距離をとる。

だが、その緊迫した状態はそう長くは続かなかった。

獣が茂みの音に意識を向けた瞬間、大和は脱兎のごとく獣から背を向け走る。

よい子は、大型の肉食獣に背を向けて逃げてはいけない。

何故なら、追い掛けられるから。

「グルルルォッ!!」

「ギャァァァァァァス!!」

獣は物凄い勢いで大和との距離を縮めてくる。

大和はその牙の餌食になる前に森の中に逃げ込むことに成功し、そのまま姿を消す。

獣が入り込んだ時にはもう、森の中は静寂に包まれていた。

だが、奴も『獣』であるが故に、五感は人間のそれとは比べ物にならない。

姿無くとも音が無くとも、匂いで感じればいい。

すぐに居場所を嗅ぎ当てられ、飛びかかってくる。

「グァオゥッ!!」

「うぉう!?」

なんとか躱し、次の逃げる策を考える。

(....森の中ではあいつから目を離さなければ優劣が逆転する事はない....だからこそ、逃げたりしたらいっそう不利になる....なら....?)

獣の猛攻をなんとか避けながら、ふと木に意識が向いた。

そこで大和は1つ案が浮かんだかのように表情が険しいものから一転、余裕のある笑みに変わっていく。

そして、今度は木を盾に回り込む。

攻撃を防ぐ為の処置ならば見当違いだ。獣はかぱっと口を開き、喉から炎が溢れる。

このまま大和が木で防ぎ、獣がそれを焼き切る状態が続くならば、大和がジリ貧になること請け合いだ。

だが。

この処置が攻撃をする為ならば。

大和は木の幹に拳を叩き込む。

根っこごと掘り返され、獣へとふっ飛んでいく。

獣はギョッと身体を強ばらせ、思わず最大火力で燃やしてしまった。

その後に残るのは今まで感じたことの無い疲労。

大和は獣の顔に向かって振りかぶるが、その拳を止める。

何の反応も見せないそいつを黙って見詰める。

目の前で手を振ってもぴくりとも動かない。

横に周り、突き飛ばす。そのまま何の抵抗も見せず倒れる。

呼吸はしている。どうやら気絶しているだけのようだ。

だが、出血が酷い。これはつい先程できた傷ではない。

つい最近ついた傷で、ようやく閉じたのがまた開いたような。

(................)

大和は手をメガホンのように口に当てさっきまで白旗をあげていたカインを呼ぶ。

「カインー!!ちょっと来い!!」






個人的には好きなカト。

出番を増やそうかと密かに考える。

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