2020J
2020年春、日本プロ野球協会は、崩壊の日を迎えた。
遡ること、2019年野球界に革命が起こった。
日本プロ野球協会に加盟する過半数のチームが、協会を退会し、新たな組織を設立したのだ。
名称をJSPBL(ジャパン・スマート・プロフェッショナル・ベースボール・リーグ)という。
この新たな組織は、審判のデジタル化を図ったもので、日本のデジタル・プラットフォームを主軸にしたセンサー技術による正確な判定を企図したものである。
過去、人間の目視を主にした感覚による判定は、度重なる誤審を招いていた。
ホームランが、ファウルになり、アウトが、セーフになるなどの誤審は、チームの成績、そして、選手の成績や年俸に影響し、さらに、臨場の興奮を冷めさせ、観客の不満を招くこととなる。
さらに、今後の数年、数十年の未来を想像したとき、やがて、人間に代わって、電子的センサーによる判定は必定である。
遅かれ早かれ、いづれこの日が訪れるならば、世界に先駆けてスマート化することは、他国に対して経験的優位を獲得できるのだ。
デジタル技術の進歩は、やがて、人間の感覚をはるかに上回ることであろう。
ストライクか、ファウルか、スイングの判定をめぐって試合が中断することもなくなるのだ。
さらに、野球だけにとどまらず、サッカー、バレーボール、テニスなど、あらゆるスポーツに応用できる技術なのだ。
このきっかけとなったのは、2018年韓国・平昌冬季オリンピックでの日本選手に対する不公平とも受け取れる誤審が相次いだことである。
全てのスポーツをスマート審判化することは、スポーツの理想であるすべての参加者の公平、審判の公正を具現化することになる。
これは、若くして首相の座を得た中泉純次郎の唱える国策の一環でもある。
日本発の完璧な野球審判システムを海外に売り込もうというものだ。
2020年は、東京オリンピックの年。
多くのスポーツ選手や関係者が、日本を訪れる。
この機会にスマート判定システムを彼らに見聞してもらおうというのである。
スマート判定システムは、他のどの国も着手していない未開の業界であり、地球上のスポーツマーケットを独占できる。
いま、世界に先駆け先手を打つことは、大きな意味を持つのだ。
この日、デジタル化されたスタジアムが披露され、世界初のスマート審判による試合が行われた。
人間の審判は、ホームベースの主審のみで、各ベースの塁審は存在しない。
ベースや、ファウルラインには、センサーが埋め込まれ、300個の映像解析カメラが、グラウンドを監視していた。
ホームランか、ファウルかの誤審はなくなったのだ。
バッターごとに異なるストライクゾーンもセンター後方の監視カメラとホームベースに埋め込まれた複数のセンサーによって、完璧に判定される。
判定にかかる速度は、人間の半分の時間、つまり0.001秒で、主審の手元のモニターに結果が現れるのだ。
このときの判定は、テレビの画面にも即座に反映されるので、お飾りとなった主審は、結果を声に出すだけである。
感想は、良し悪しにかかわらず、遠慮なく、積極的にどうぞ。