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序章1

 気がつけば、俺はエレベーターに乗っていた。


 未来的なエレベーターで、角は丸っこく柔和な感じがする。

 SF映画の宇宙船などで出てきそうなデザインだ。

 圧迫感はないのだが、一つ問題がある。


 それは、なぜ俺がこのエレベーターに乗っているのか、というところだ。


 はっきり言ってこのエレベーターに乗った覚えがない。

 というか、さっきまで大学にいたはずだ。

 一体いつの間にこんなエレベーターに乗ったんだ?

 そして、どこに行こうとしてるんだ?


 ちょっと記憶を遡ってみよう。



 ◆◆◆◆◆



 俺の名前は伊達明路だてあきみち

 大学2年生。一浪しているので、21歳だ。

 某国立大の工学部機械工学科に所属している。


 午前の講義が終了し、昼飯を取るため学食に来ていた。

 俺がいる学食は、工学部敷地と道路を挟んで向かい側にある、文学部の敷地内にある。

 工学部の敷地内にも学食はあるが、工学部の皆はわざわざ道路を渡って、文学部の敷地内にある、この学食で食べる。


 なぜか?

 もし君が工学部の学生なら、説明する必要など全くないはずだ。

 文系の学生、または大学生でないなら、わからないかもしれないなぁ。

 だが、想像はつくだろう。


 そう。工学部敷地は荒野なのだ。

 華がない。

 うちの学科では1学年200人あたり女性は4人。

 もちろん、0人の学年もある。

 建築や材料工学はもっと悲惨だ。全学年で女性がいない。

 男子校もかくやといった荒野っぷりだ。

 工学部敷地といえば、最新の設備と、近代的な研究棟が並んでいる。

 でも、何でか雰囲気が灰色なんだ・・・


 古い棟を潰して、新しい棟への立替なんかがよく行われているんだが。

 古い棟は廃墟っぽく見えるし、工事中の棟も再開発してるっぽく見えてなぁ。

 ポストアポカリプスな雰囲気なんだよ・・・


 ちゃらいキャンパスライフを妄想している高校生、浪人生に言っておく。


 そんなもん、工学部にねーから!

 悪いことは言わない。文系にしとけ。


 就職?

 確かに、工学部は就職率がいい。

 というか、普通に卒業できれば、教授が企業へ売り飛ばしてくれる。


 だが、文系でも就職は出来るだろう!

 花の大学生活は1度しかないんだぞ!

 灰色の工学部生とバラ色(に見える)文学部生と、どっちで一度しかないキャンパスライフを謳歌したい?


 といわけで、俺は文学部側の学食で食事をしているのだ。

 すまない。ちょっとムキになりすぎた。

 まあ、実際、文学部敷地は道路挟んだだけとは思えないほど雰囲気が華やかだ。

 なにより、おなごがおる。

 キャッキャウフフしとる。


 今も俺が食べている隣で、女子大生がおしゃべりに興じながら食事をしている。

 普段なら、何をそんなにしゃべることがあるんだ? なんて思うもんだが。

 午前中いっぱい荒野の中のヤローしかいない隔絶された空間で、専門教科の講義を受けていた今の俺には微笑ましく思える。

 癒されるわ~。


 そんな、これぞ大学の学食、っといったなかで、俺は一人でぼそぼそとカツカレーを食っていた。

 講義の関係上、他のヤツラは帰ってしまったのだ。

 馬鹿なヤツラだ。

 俺に付き合って、学食でメシを食えば、もしかしたら現役女子大生とお知り合いになれるかもしれないのに!

 その可能性があったのに!

 いいんだぞ! 今、そんなイベントが起こっても、いいんだぞ!


 いいんだぞ・・・




 何事もなく食事を終えた俺は、食器を返却し、学食から出た。

 我が身の女性接触率の低さを思うと、将来が不安になってくる。

 流石にヤラハタを迎えると、このままじゃ大魔道士どころか、清らかなまま天に召されて大聖者になってしまうんじゃないかと思ってしまう。

 いざとなったら、バイトで貯めた資金で、プロのおネーさんにDTブレイクして貰うしかない。どうせなら、10万以上のサービスでブレイクしたい。

 バイト頑張ろ。


 学食を出て、購買部へ向かう。

 購買部は、学食が入っている、この学生会館の3階にある。

 学食は1階なので、階段を昇る。


 俺と同じように購買に行こうとしているのか、3人の現役女子大生が階段を昇っていた。

 学生会館は凄いな。

 階段にも女子大生がいるとは・・・

 セミロングの髪型の女の子が二人、もう一人はショートボブというのだろうか。

 髪型もそうだが、服装も垢抜けている。

 3人ともレベルたけーなぁ。


 一際目立つのが、セミロングの女の子の内の一人で、なんかオーラが違う。

 芸能人なみの容姿をしており、アイドルグループのセンター争いをしていてもおかしくない位の綺麗さだ。

 3人で話しながら階段を昇っているが、軽やかで品のある仕草と明るい笑顔がいい。


 セミロングのもう一人の子は、同じような格好をしているだけに、言い方は悪いが劣化コピーのようになっている。

 ただ、それでも並みのレベルではない。もう一人の子が美人過ぎる現役女子大生なだけなのだ。

 彼女に憧れて、髪型や服装を真似てるのかな?

 そんな感じがする。


 ショートボブの子は活発な印象だが、ちょっと大人っぽい雰囲気もある。

 他の二人とは印象が違うが、そういった子たちがつるむとお互いを引き立てあうというか。引き立て役になるくらいに、この子も美人だ。大学生のレベルじゃない。

 ただ、セミロングの子(美人のほう)がレベル高すぎなのだ。


 シャイボーイにして、草食系工学部男子であるこの俺をして見惚れてしまうほど、彼女たちは輝いていた。

 セミロングの子(美人のほう)を推す人が多そうだが、俺はショートボブの子のほうが好みだった。

 彼女は反則だ・・・少佐にちょっと似ている・・・


 しかし、セミロングの子(美人のほう)、見たことあるな。

 あれだけの美人だ。さぞ目立つだろう。

 しかし、基本荒野で生息している工学部生にまで知れ渡っているだろうか?

 ミスキャンパスとかだったっけ?

 彼女の写メとか出回ってたかなぁ?

 そんな感じで、見知ってたのかも。




 そんなことを考えながら、3人の後から階段を昇っていた。

 ふと足元に違和感を覚える。

 そのまま、足を下ろさず、横にずれたほうがいい気がするのだ。


 何故かは、わからない。


 なんとなく・・・極々些細な違和感だ。


 俺は脚を横にずらした。

 その瞬間。




「きゃああ!」


 悲鳴が上から降ってきた。


 と同時に俺の上にセミロングの子(美人のほう)が体当たりしてきた。


 違う。足を踏み外したのか、階段を落ちて、俺にぶつかったのだ。

 その衝撃で、俺も後ろに倒れる。

 女の子とはいえ、不意をうたれた上に、人一人の体重が圧し掛かってきたのだ。

 流石に支えきれない。


 倒れながら、女の子を庇う。

 折角美人に生まれたんだ。こんなところで怪我をしてもつまらないだろう。


 俺は女の子を庇いながら、階段を転げ落ちる。

 自分がどうなっているかわからないまま、体のあちこちを階段にぶつける衝撃を受けた。ガツガツと体を打ち付けているみたいだが、緊迫しているためか、痛みはない。


 そんなときでも、庇った女の子からいい香りが漂うのがわかった。

 余裕がある自分を褒めてやりたい




 長いようで、短い滑落のあと。


 一際大きい衝撃が頭部を襲った。


 二人分の体重が乗った衝撃だ。


 これはマズイ・・・


 薄れいく意識の中で、踊り場の床に頭を打ち付けたのだとわかった。


 その瞬間、ブラックアウトした。



 ◆◆◆◆◆



 それで、今、このエレベーターに乗っている。


 つまりは・・・


 夢オチなのだ。


 次の瞬間には、「あ~、死ぬかと思った」とか言いながら、医務室か病院のベッドで起きることになるだろう。

 そして、友達を助けたことを感謝した少佐似の子にお礼を言われるのだ。

 セミロングの子(美人のほう)も感謝してくれるだろうが。


 すまない。俺は少佐似の子のほうが好みなんだ。

 君は美人だから彼氏もいるだろう。

 だから、感謝の意だけ受け取っておくよ。

 で、だ。少佐を紹介して欲しいんだよね、俺としては。ついでに上手くいくように取り計らって欲しいんだよね。

 え? 少佐にも彼氏がいる?


 ・・・・・・


 バカいってんじゃねえぞテメェ!!

 少佐に彼氏がいるわけないだろうがっ!!


 そんなことになったらぁ・・・どんだけの漢が・・・血の涙を流すことになるか・・・


 ハァ・・・ハァ・・・フゥ。


 すまない。取り乱してしまったようだ。




 実際のところ、体中打撲したし、頭も床で打ったから、治療と検査のために、2,3日は入院するハメになりそうだ。


 代返と講義のノートを頼んどかなくちゃ。


 あと、バイト先にも連絡しないといけないし。




 不意に、ポーンと柔らかな電子音を立てて、エレベーターが止まった。

 エレベーターの扉が開き、俺は扉から外に出た。


 そこは、受付ロビーのような広間だった。


 10メートル四方の広さで、壁に受付カウンターのようなものがある。


 見渡すと、ロビーの中央付近に応接セットのようなものがある。

 すわり心地を寝心地がよさそうなソファーとそれにあわせたテーブル。


 そのソファーに女性が一人座っていた。


 俺が気づいたのと合わせたかのように、女性が立ち上がり、こちらを向いた。


 彼女を見た瞬間、背筋にゾクッと衝撃が走った。


 今まで見たこともない美しさだ。


 見ただけで、衝撃を受ける。


 完璧な造詣を誇る北欧系の顔立ちに、神の手で削りだされたかのような目鼻立ち、切れ長なのにどこか柔和な印象を受ける瞳。

 唇は赤く熟れた果実のようで、甘く柔らかそう。


 深く澄んだ蒼の瞳をこちらに向けながら歩いてくる。


 顔もそうだが、肢体のほうも完璧すぎる。


 大きくたわわに実りつつ、品格を保って突き出た双丘。そこから続く、たおやかにくびれた腰。張り詰めたお尻への曲線の見事さは表現しようがない。

 そこから伸びるスラリと長い手足は、稀代の彫刻家を以ってしても作り出せるものじゃない。


 男の理想だけじゃなく、女の理想をも体現したかのような肢体だった。


 髪はさらさらと流れるような深い緑色で、それ自体が輝きを発しているかのような髪を複雑に編んでいた。後方は一部がサラリと腰まで流してあるが、三つ編みの部分があったり、輪っかがあったり、お団子のように編まれていたり。複雑すぎて、俺にはどういうふうな髪型かわからない。

 その上、たくさんの髪飾りで彩られている。


 これがまた、似合っているのだから、呆然としてしまう。



 服装は、胸元がぱっくり開いた淡い水色のイブニングドレス。

 スカートには深くスリットが入っており、足を前に出すたびに芸術的な太ももが見え隠れする。


 完璧だ・・・完璧すぎる・・・


 こんな女性を目の当たりにすれば、誰でも思うことは一つだろう。


(この人、女神だ)




 女神風超絶美人が俺の眼の前に立った。


 どこもかしこも美しすぎて、どこに目を向けていいかわからない。


 とりあえず、顔を上げて、彼女の顔を見上げた。


 そう。この美人は背が高い。


 175ある俺より、頭一つ高いので、190はあるだろう。


 これだけの美人ににこりと親しげに微笑まれれば、女性との免疫がない俺などはそれだけでのぼせ上がってしまう。


「いらっしゃい。いえ、お帰りなさい、というべきかしらね」


 美貌に似つかわしく、鈴を鳴らすような美声で、訳のわからないことを言う。


 俺はよっぽど呆けた顔をしていたのだろう。

 超絶美人はクスクスを笑った。


「状況がよくわかっていないって顔ね、伊達明路君」


「へ? え? はぁ・・・」


 我ながら間抜けた返事をしてしまった。


「まず一番に理解しておかないといけないことがあるわ」


 超絶美人はにこっと笑いながらさらっと言った。


「あなた、死んだのよ」


 俺は目をしばたいた。


 この超絶美人は何を言ってるんだ?




 ここが夢だと俺だけが知っている。




 そう思っていた時期が、俺にもありました・・・


初投稿です。

書き溜めてないので、

週に2~3回更新できればなぁ~と思っています。

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