5.第3階層
落とし穴の先は、誰かが立っていた。
「あなたは誰?」
薄暗い中だから、はっきりと分からなかった。
「俺だよ。川冶だ」
「先輩」
私は、ほっとして、先輩のところへ近づいた。
先輩は、頭を押さえて座り込んでいたが、それいがいは大丈夫そうだ。
「ここはどこなんでしょう」
「さあな。分かってるのは、落とし穴から落ちたはずなんだが、妙なところに連れ込まれたということだな」
その時、私の背中からうめき声が聞こえた。
振り返ると、どうやら伊予たちが積み重なっているようだ。
あわててそれぞれを座らせると、ちょっと痛がっていたが、なんともないようだ。
「あそこ、階段ですね」
私はぐるりと取り囲んでいる壁の一部分を指さして言った。
「本当か。よくわからんが……」
「ほら」
私は、かなりしっかりと見えていたが、どうやら、他の人は、ぼんやりとした感じらしい。
「やっぱりね」
私たち以外の誰かが話しかける。
「だれ!」
誰もいないところから、足が見え体が見え、そして顔まで出てきた。
「ローエリ・オポルッコス。こっちは、使い魔のムリフェイン。私は、第2階層の族長の娘よ」
「第2階層ということは、ここは……」
川冶先輩がローエリに聞く。
「ここは第3階層よ。あなたたちのふるさと。でも、私を除いた女性たちはみんな特殊な人たち」
そう言って、人差し指だけを私たちの足元へ向けると、何かを唱えた。
すると、私たちがいるところの床が突然消えた。
「行ってらっしゃい、人柱たち」
彼女がそう言ったのを、私ははっきりと聞いた。