4.落とし穴
1年後、初めてのテストを受けた。
この学校は通年で1回だけ、1週間にわたりテストを行うことになっている。
そのテストに落ちると、また1年生を最初からやり直しとなるため、真剣にテストを受けている。
だが、これが終わると1ヵ月半以上の休みがあり、その間、里帰りとかをする人も多かった。
そのテストの最終日の前日、私たちは学年全員と一緒にテストを受けていた。
最後のテストは、1学年、2学年、3学年全員での野戦だった。
各自好きな班を組んで、最終日の正午までの丸1日、全員から逃げ続けるのだ。
逃げる範囲の中には、川、山、森、草原、砂漠、池、沼、谷など様々な自然の障壁がある。
学校の敷地である訓練場は9平方マイルあり、そこに全員が散らばった。
「ふう…」
私は、森の中で、友人と一緒に集合して隠れていた。
「どうする?」
丸1日間、私たちが誰からも発見されずに生延びれるかどうかは、最初にかかっている。
初期の時点でいい場所を確保していれば、そこから動かなければいいからだ。
そのために始まる1時間前から
「とにかく、深いところへ行きましょう。そしたら、きっと生き延びれるわ」
鈴木珠子、伊予葎、生井幺子の3人と一緒に話し合っていた。
「じゃ、行ってみましょ。ここで油売ってても仕方ないし」
そこに、誰かが私たちのもとへ来た。
「よう」
「先輩」
私と伊予が川冶悟先輩のもとへと駆けて往く。
「何してるんですか、先輩。学年をまたいで班はできないでしょ」
「まあな。俺は一人で隠れ場所を探しているんだ。その途中で、偶然見つけたんだよ」
「なるほど」
私は納得をした。
「そう言えばこんな話聞いたことあるか。この世界は層状にできているって」
「そうなんですか」
「噂だがな。この訓練場のどこかに、別の世界につながる穴があって、そこに行くと他の層に行くための建物に出るそうな」
「初耳です」
私たちは、初めてそんな話を聞いた。
「そりゃ、そうだろうさ。この話はしっかりと隠されているからな。あ、そうそう。この世界は第3階層にあるそうだ」
それだけ言い残して、先輩は去って行った。
どこか別のところに隠れるのだろう。
「私たちも…」
その時、なにか寒気がした。
振り向くと、保健の先生が立っている。
「先生。どうしたんですか、まだ始まって…」
「さっきの話、誰と一緒に?」
「え…先輩とですけど」
私が、妙な表情をしている先生に言った。
「もうこのあたりにはいないか…」
何かブツブツ言いながら、考えていた。
「どうしたんですか」
私が、先生に尋ねた。
「秘密を知りし者、皆、此処へ集え」
そう言うと、先輩がその場に現れた。
「わっと…」
何かにしがみついている格好から、急に落ちそうになり、体の体制を立て直そうとしていた。
「って、先生。どうしたんですか」
「…そうか、これだけか」
先生は、そう言うと、ニコッと笑って言った。
「さあ、あと15分ですよ。私は、ちょっと用事があるのでこのあたりで」
先生は言った途端に、その場から掻き消えた。
「私たちも、早く隠れないと…」
そう言って振り返った途端、先輩の顔が目の前にあった。
「きゃっ」
足元には大きな穴があいていて、先輩や友人共々、その穴に吸い込まれていった。