私は義妹をいじめます
よろしくお願いします!
私はロザリンド・レーゼはゼーレ公爵家の長女として生まれた。
両親はあまり仲のよくなかった。二人とも愛人がいた。
家庭教師とメイドに育てられたが、黒髪に赤い瞳は吊り目がち、しかも、にこりとも笑わない私に親しみを覚えた人たちなどいない。彼らは義務として私と関わり、義務以外では関わろうとしなかった。
母親は私が10歳の時に愛人の元へ行く途中に馬車の事故に遭い亡くなった。
私が11歳の時に2歳下の妹ができた。父親が継母のフィーユと義妹のルーナを我が家に連れてきたのだ。
お継母様は平民の出だったが、とても聡明で美しい方だった。義妹のルーナは栗色の髪に淡い水色の瞳を持ち、可愛らしく人懐っこい子だった。
私と父は昔も今も変わらずほとんど関わりがなかったが、継母と義妹は公爵家で孤立していた私によくしてくれた。
彼女たちが笑っている姿を見て、うまく笑えない自分に悲しくなる時があった。そんな時お継母様は、無理して笑わなくていい、と声をかけてくれた。それでも笑おうとする私を見て、呆れつつも、笑い方を教えてくれた。
ルーナはよく「お姉様は無表情の時の方が感情がわかりやすい」といった。自分のことを理解してくれているようで嬉しかった。
ルーナは吸収が速かった。魔法もすごい速度で扱えるようになり、勉学も分野によっては私よりできる。私が彼女に勝てる分野は治癒と結界魔法くらいだった。
そんな彼女が私は誇らしかった。
お継母様とルーナが来てから 2年後、私は同い年でこの国の第一王子のトマス様との婚約が決まった。優秀な彼はこの国の次期国王だ。
そこから、3年経ち、私は魔力を持つ貴族が2年間通うことが義務付けられているコールス学園へと入学することになった。
全寮制なため、2年間は家に帰らない。
「お姉様、お手紙書きますね」
「ローザは頑張り屋さんだから無理しちゃダメよ。ちゃんとあったかくして寝るのよ」
「ありがとう、ルーナ、お継母様、いってきます」
私はルーナと継母に見送られ、学園へと向かった。
◆◇◆1年後◆◇◆
あっという間に月日が経ち、ルーナが入学してきた。入学式の後、ルーナに会いに行こうと思ったが、どこにも見つからなかった。
この学園は最低だが、平民を差別する風潮がある。お継母様は平民出身だ。加えて、まだ入学してない時から一つ下に妹や弟を持つ人たちがルーナのよくない噂について話していた。
何かあってからでは遅いと、焦って探す。ルーナがいたのは校舎裏だった。
一足遅かった。私がルーナが複数の生徒から囲まれているところを見つけた時とほぼ同時にルーナが女子生徒から平手打ちをされていた。
私は走りと怒りで乱れた呼吸を深呼吸で整える。
「何してるの?面白そうね」
とびきりの笑顔で彼女らに尋ねる。
「ろ、ロザリンド様!?」
「どうしてここに?」
「可愛い妹がここにいるって噂を聞いたのよ。あら?あなたそんなところで寝そべって何してるの?さっさと立ちなさいよ。はしたない」
私はそう言うと、あえて大きな音が鳴る魔法をルーナに向けて放った。
「お、おねえさま…?」
音に興味を持った人がゾロゾロと集まってきた。
ルーナの困惑と悲しみを混ぜたような表情を見てられず、ルーナから目を逸らす。
「あら、ごめんなさいね。驚けば立ち上がれるかなと思ったのよ」
私はケラケラと笑う。
「ルーナ!?大丈夫か?」
人混みをかけわけ、ナイスタイミングで走ってきたのは婚約者のトマスだ。
トマスは慌ててルーナの肩を支え立ち上がらせる。そして、ルーナをいじめていた相手を認識し驚愕する。
「ローザ、どういうことだ?」
私はとびっきりの笑顔で答える。
「なにって、いつも通りですわ?少しマイペースな妹が転んでいたので立ち上がるお手伝いをしてあげただけですの。何か問題でも?」
私はさも、当たり前なように答える。
トマス様は私の顔をしっかりと見た後、
「そうか、とりあえず行こう、ルーナ」
そう言って私の前からさった。
集まった野次馬からは
「ルーナちゃん、かわいそう」
「平民出身で体を使って公爵家に乗り込んだ母親の娘とか言われてたけど、所詮噂なんだろうな」
「きっとルーナちゃんに関するひどい噂はロザリンド様が流した偽物よ」
「最低な女の子だと思ってたけど、ロザリンド様からいじめを受けていただけなのね」
そう言った声が上がった。私はそう言った声に表情をなくした。
それ以降も、私は笑顔でルーナに因縁をつけた。ルーナが他の生徒から嫌がらせやいじめを受けているときは必ず参戦した。
「あら、ごめんなさい、手が滑ったわ」
と言いながらルーナにお茶をかけた。
「あら、邪魔ね」
と言いながら階段から突き落とした。
ルーナが入学してから十ヶ月が経ち、彼女をいじめる人はいなくなり、悪い噂も消えた。すっかり、平民の血を継ぐから、とルーナを差別する人はいなくなった。
その一方で私が第一王子の婚約者に相応しくない、と言う意見が後を立たなくなった。
トマス様もルーナが婚約者の方が幸せだろう、と言う話もあった。
もちろん、トマスはいい婚約者だ。私にどんな噂が流れようと毎週私のために時間を作りデートに誘ってくれる。たくさん話しかけてくれる。
でも、噂の通り、ルーナと結婚した方が彼も幸せだろう。
私は卒業式の前婚約を解消されると踏んでいる。
この学園の卒業式は、貴族たちにとって重要な行事の一つである。それぞれの家の後継者の把握やコネクションを作れるからだ。加えて、今年は第一王子の卒業がある。王族と、多くの貴族が集まる。
落ち度のあった婚約者との婚約を破棄し、聡明な婚約者との新たな婚約を貴族たちに発表するのにちょうど良い場であろう。
卒業式の一ヶ月前、私はトマスからドレスと手紙を受け取った。トマスの瞳の色と同じ紺色を基調とし、金色の星のようなデザインが散りばめられている。腕や肩は露出控えめでレースがあしらわれている。アクセサリーは私の瞳と同じルビーのネックレスだ。
『これを着て卒業式に参加するように。当日、迎えに行く。』
手紙にはそう書かれていた。
◆◇◆一ヶ月後◆◇◆
私は制服でトマスを待っていた。私の姿を見たトマスは
「やっぱり早くきて正解だった」
と驚きもせずに呟いた。
「私に嫌気をさしたメイドがみんな出ていってしまいましたの。ですから一緒に参加するのは難しいですわ」
私は笑ってそう答えた。
「ミランダ、頼んだぞ」
トマスが誰かに声をかけると、彼の後ろから老年のメイドが出てきた。
「かしこまりました。ロザリンド様、時間がないので少々急ぎますよ。ほら、トマス様は出ていってください」
「将来の旦那なんだから別に良くないか?」
「そう言うものじゃありません。時間がないなら無理やり追い出しますよ」
「はいはい」
そう言ってトマス様は寮の部屋から出ていった。私は展開に追いつけないまま、あっという間に、ドレスに着替えさせられ、化粧を施され、あっという間にトマスが乗ってきた馬車に乗せられていた。
「どういうことですの?」
自分とペアルックのような格好をしているトマスに尋ねる。
「卒業式だぞ?婚約者を迎えに来るのは当然だろう?」
「妹をいじめている最悪の令嬢に王の妃は務まりませんわ」
私は今まででいちばんの笑顔でそう告げた。
トマスはそんな私の顔を見て少し悲しそうに顔を歪ませた。
「ねぇ、この一年僕はずっと我慢してたよ。いつになったらローザが話してくれるかなって。でも、ローザは僕に話さず、感情を美しく笑うことで隠して、ずっと僕とルーナから逃げてるよね」
「そういうわけでは…」
「なら、僕の前で無理して笑わないでよ。僕はそんなに頼りない婚約者だったかな?」
いつもは自信を漲らせているトマスの瞳が不安そうに揺れている。
「トマス様は自慢の婚約者です」
「なら、なんでずっと話してくれなかったの?」
「トマス様は将来この国を背負うお方です。ただ姉が妹を助ける、それだけの行為にあなたを巻き込めません」
「いちばん近くにいるはずの女の子も支えられない男が国を支えられる?」
トマスは自重気味に笑った。
守ろうとしすぎると、逆に苦しめてしまう、のだろうか…。私がやってきたことは間違いだったのだろうか…。
「ごめんなさい」
「僕もごめん」
気まずい空気が流れた。
パーティー会場についても気まずさはかわらず、そのまま時が過ぎ、そろそろパーティーが終わりを迎える頃だ。
「最後に発表がある、トマス、ロザリンド嬢は前へ」
王の言葉を受け、私は笑顔でトマス様の手を取り、前方へと向かう。
「ここに、第一王子トマスと、ゼーレ公爵家、ロザリンドの婚約を発表する」
その王の言葉に会場が一気にざわめく。
「お待ちください、国王陛下。ロザリンド様はトマス様のお妃としてふさわしくないかと思われます。ロザリンド様となんてトマス様も不憫ですわ」
何人かの学生が国王陛下の決定に異議を唱える。
「ふむ、なぜだ」
「義理の妹であるルーナ様をいじめているからです」
「そのような方にトマス様のお妃が務まるのでしょうか」
「だ、そうだが、ルーナ嬢、何か言いたいことはあるか?」
王は、ふむ、と言った後、近くにいたルーナに目を向ける。
ルーナは待っていましたとばかりに前に出てきた。
「はい、私はお姉さまにいじめられたことなど過去に一度もありません」
「「「え…?」」」
異議を唱えるために出てきた生徒だけでなく、パーティー会場にいる生徒全員が口を揃えた。
「う、うそよ。あなたにめがけて魔法を放っていたじゃない。見たことあるのは一回や二回じゃないわ」
「お姉様が放っていたのは攻撃系の魔法ではなく、治癒魔法です。他の方に暴力を振るわれた時にできた傷を治してくれたのです。お姉様は攻撃魔法が下手すぎるので、あんなに綺麗な攻撃魔法はだせません」
「でも、お茶をあなたにかけていたわ」
「あれは、私のカップに下剤が入っていて、私に飲ませずに席を離席させるためです」
「階段から突き落としたり、噴水に落としたりもしていたわ」
「他の生徒がやろうとしているのを見て、お姉様が先回りして防止したのです。ちゃんと全部、結界魔法で守られて怪我一つありませんでしたわ」
「でも、あなたのものを奪ったり、奪わせたりもしてたし」
「他の人に取り替えられた呪い入りの文房具でしたわね。お姉さま呪いの解除もできるのかと尊敬したわ」
ルーナが全て平然と答え、私に向き直る。
「お姉様が学園でずっと笑顔だからどうしたのかと思ってたら…。ちゃんと答えに辿り着いたのがつい二ヶ月前。ずっと守られていることに気づかず、もしかしたらお姉様に嫌われたとかと不安でしたわ…」
「守られていた、どういうことだ?」
ずっと黙っていたトマスが参戦する。
「この国の貴族の方々は平民を下等生物のようにみることがあり、その意識はコールス学園にも強く根付いています。その意識を変えるため、私が学園生活を快適に送れるようにするために、お姉様は自分から率先して私をいじめる風にしました。そして、私に怪我を負わせずに、周りの人たちに自分達がやろうとしている行為の浅ましさを気づかせる、気づいてない人たちは権力で牽制する、ということを一人でしていたのです」
私は全ての狙いがバレていたことに羞恥を覚え、顔を上げられない。
「被害者であると言われたルーナ嬢がこう言っているのだが、まだロザリンド嬢が時期王妃として相応しくないと、思うか?」
国王の目が鋭く、異議を唱えた生徒たちを射抜く。
「も、申し訳ありません」
生徒たちは、顔色をなくして頭を下げた。
トマスとルーナがが笑みを絶やさずに生徒たちに声をかける。
「君らは僕のことを不憫って言ったよね」
「しかもお姉様のことを、ロザリンド様『なんて』と言いましたよね」
二人が生徒たちに近づき、何かを言ったと思ったら彼女たちは顔色を失った。
「では、父上、僕はこれから愛しの婚約者とお話があるので失礼致しますね」
「私も、愛しのお姉様とお話がありますので御前を失礼ていただきます」
そういうと、二人は私を引っ張りパーティー会場から出て行く。私は二人に連れられながら、展開に追いつけないまま、なんとなくかんじる羞恥に顔を赤らめた。
二人があの時何を言ったかはいつまで経っても教えてもらえなかった。
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