世にも奇妙なルームメイト
「よし、完成っと」
僕はダイニングテーブルに4人分の料理を運ぶ。
時計の針は7時を指していた。
そろそろ帰ってくるはずだ、僕のルームメイトたちが。
春から大学に通う僕は、生活費の節約のためルームシェアサイトを眺めていた。
すると『家事できる人歓迎!毎食作ってくれる人はひと月1万円でOK!』という破格の募集を見つけ応募した。
両親が共働きでよく家のことをしていた僕の家事スキルが認められ、めでたく合格となった。
ガチャ
玄関から音が聞こえ、僕はいそいそとお迎えに行った。
「おかえり~……なさい?」
そこには全身鎧に包まれ右手には剣を握りしめる騎士の姿があった。
「やぁただいま!……あ、ドルモ・トニモ!」
謎の呪文とともに騎士の姿は煙に包まれ、徐々に人の形が見えてくる。
「アタルくんただいま帰ったよ!」
そこにはルームメイトの一人、爽やかイケメンのイサムさんが微笑んでいた。
「イサムさんお帰りなさい。なんか今騎士みたいな恰好してませんでした?」
「え⁉あ、あぁ今のは忘年会で披露する手品だよ!瞬間お着替えマジックさ」
「へぇすごいですね、魔法かと思いました」
二人で話していると、玄関の扉が開き小柄なゴスロリ少女が入ってきた。
「……ただいま」
「アンさんお帰りなさい」
ダウナーな表情と声を携えてルームメイトの一人アンさんも帰ってきた。
「あぁ~疲れた」
アンさんが靴を脱いで足を床に乗せた瞬間、ゴトッと重い音が響く。
僕の足元にハンドガン?のようなものが転がってくる。
「これってもしや……銃?」
そっと手を伸ばしたときアンさんが光の速さで銃らしきものを拾い上げる。
「これはあれよ、忘年会で披露する手品の小道具よ。……もちろん本物じゃないわ」
「へぇそうなんですねすごいリアルだなぁ」
「ただいまぁ!」
大きな声が聞こえたほうを見ると最後のルームメイト、ギャルファッションに身を包んだレイカさんがいた。
「おかえりなさいレイカさん……あれ?後ろに誰かがいるような?」
「ちっ!成仏してなかったか!とっとと逝きな!」
レイカさんの懐から取り出されたお札が後ろの人に貼られると、スゥっとその姿を消した。
「レイカさん今のは?」
「ん~っと……あれよ!忘年会でやるマジックよ!ど、どうすごいでしょ!」
「へぇすごいなぁ。というか3人とも手品お上手ですね。ご飯できてるんでどうぞ」
手品が好きなルームメイトたちとの素敵なルームシェア生活は最高に楽しいなぁ。