バスケ 【芦崎辰海視点】
●芦崎辰海
公園の片隅で不動兄弟がバスケしてる。
あのリングがバスケットのゴールとして使われてるとこはじめて見たかもしれない。あんなところにバスケのゴールがあったことすら忘れてた。
大地の兄ちゃんバスケもうまいんだな。大地の奴、子犬みたく周りを跳ね回ることしかできてない。
仲いいよなぁ。あの兄弟。
よくキャッチボールしてるし。
大地の手からこぼれたボールが、こっちに転がってくる。そのあとを、大地とイソベが追いかけてくる。
「イソベもバスケか?」
一足先にバスケットボールに追いついたイソベに話しかけると、大地がオレに気づいて口の端を上げる。
「辰海、犬も連れずに散歩か?」
「おつかいの帰りだよ。叔父さんのとこに土産を届けるよう母ちゃんに頼まれて」
大地は仲良くなっても、偉そうな態度は変わらないよなぁ。
大地の兄ちゃんと目が合う。
「大地の友達か?」
大地の兄ちゃんが、じっと見てくる。なんだ?視線が熱い。
「あ、こんにちは。同じクラスの芦崎辰海です」
「大地の兄の不動静真です」
知ってる。大地の兄ちゃんは有名だからなぁ。
頭がよくてスポーツ万能。しかも見た目もよくて背も高い。
クラスの女子たちが大声でキャーキャー騒いでる。
「芦崎もいっしょにバスケするか?」
「え?でも……」
大地の兄ちゃんが、にっこり笑ってバスケに誘ってくる。
バスケはあまりうまくないから、大地と同じことになりそうだしなぁ。
「背ぇ伸びるぞ」
「やりますっ!!」
くっ、お兄さん、男心わかってらっしゃる。
そんなこと言われたら、バスケしたくなる。
「なんじゃ、辰海、ワシら兄弟に勝負挑むんか」
大地がバスケットボールを両手で持ち、偉そうにふんぞり返ってるけど、おかしくね?
不動兄弟 対 オレ なの?
「いや、組み合わせおかしいだろ!実力的に、大地とオレが組んで、お兄さんと対決だろ!」
なにちゃっかり兄ちゃんと同じチームになろうとしてんだよ。
「む?ほうじゃのぅ。辰海じゃあ兄ちゃんに勝てんけえ、ワシが助けてやらんとのう」
「大地が、勝てないから、オレが助っ人をやってやるんだろ!間違えんな!」
兄ちゃんの周りで飛び跳ねてただけの大地が、なんでそんな偉そうなんだよ。
「二人がかりでも、オレには勝てんけどのう」
大地の兄ちゃんが余裕の笑みを浮かべる。
「やってみんとわからんけえ。辰海!足ひっぱらんようにのう」
「大地こそ、足引っ張んなよ!」
大地の兄ちゃんに、勝ってみせる!