表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/44

バッティング       【芦崎辰海視点】


●芦崎辰海 高校1年



「すごいわ!大地くん。当たれば、ホームラン」


千々和先生が拳を握りしめ、感嘆の声を上げる。


「これで、むらっ気がなくなればなぁ」


大地のバッティングは、ホームラン狙い。

当たれば本塁打、それ以外は空振り。調子がいいと柵越えホームランをガンガン打つけど、悪いとまったく当たらない。


「大地くんのバッティング、お兄さんの静真くんと似てるわね。でも、ちょっと違うような?」


千々和先生、よく見てるなぁ。


「大地と静真兄ちゃんだと、狙いが違うからフォームも変わってくるんだよね」

「狙いが違う?」

「本塁打狙いの大地と違って、静真兄ちゃんは確実に点を取りに行くためのスイングをするから」

「なるほどねぇ。静真くんは長打狙いではあるけど外さないスイングなのね」


千々和先生が感心してくれるから、話をしていてうれしくなってくる。


「静真兄ちゃんは飛んできた球の軌道に合わせて最適解の振りが出来ちゃうけど、大地はそんな器用なことできないから、長打狙いのバレルスイング。当たれば長打になるけど空振りがどうしても多くなる」

「最適解の振り?静真くんはピッチャーだけでなくバッターとしても優秀なのねぇ」


優秀なんてもんじゃない。なんでも静真兄ちゃんの真似をする大地でも、さすがにどうにもならなくて静真兄ちゃんに教わったバレルスイングのみに絞ったくらいだ。

静真兄ちゃんのバッティングは、瞬時に見極める目と技能があるからこそできる神業。


「ほうじゃ、兄ちゃんは優秀なんじゃ」


打席に立ってたはずの大地が、なぜか近くにいる。兄ちゃん自慢できるチャンスを逃さないよな。大地って。


「大地くんも芦崎くんも優秀よ!先生、プロ野球をよく見てるけど、二人ともプロと遜色ないくらいすごいわ」

「先生、それはさすがに持ち上げすぎだって」


静真兄ちゃんならプロレベルといってもいいだろうけど、オレと大地はまだまだだ。

千々和先生、担任の欲目になってるよ。


「芦崎くんと静真くんは確実に当てるバッティング。大地くんは点を取る本塁打狙い。タイプの違う打者がそろってるのは強みになるわね」

「チワワはわかっとるのぉ」


あれ?今、大地、先生の名前を呼んだ気が?


「大地、先生の名前、覚えたんだな」


今まで、大地が教師の名前や顔を覚えたことねえからびっくりだ。


「当然じゃ。チワワじゃろ。ちゃんと覚えとる」

「覚えてません。千々和です!」


う~ん、大地にしては、合格なほうだな。


「一時はどうなるかと思ったけど、千々和先生が顧問になってくれたし、大地と芦崎が入ってくれたし。野球部存続はできそうだな」

「目標がちんまいのう」


満足そうにうなづくキャプテンに、大地が飽きれた目を向ける。


「そんなことないぞう。できればあと数人、新入部員が入ってくれることを希望している!」


キャプテン、やっぱり目標、小さいよぉ。


「今のところ、野球部在籍者は、3年が2人、2年が3人、1年が2人で。7人か。あと2人は欲しいところね」


千々和先生まで。


「まだ、部活動見学期間が始まったばかりだし、新入部員くらい、これから入ってくるよ」


みんなまだどこに入ろうか決まってない感じだし、オレらはフライングして部活に来てるみたいなもんだし。


「それがなぁ。うちみたいな弱小野球部はなぁ。新入部員を確保するのも一苦労なんだよ。中学で野球やってたやつも、高校ではエンジョイ系の部活に入っちまうし」

「エンジョイ系?」


キャプテンがタメ息をつきつつ語りだしたけど、エンジョイ系ってなんだ?


「今人気なのはアウトドア系だな。ワンダーフォーゲル部、ボート部。山に登ったりキャンプしたり、湖でカヤックに乗ったり。自然の中で身体を動かせるし、山梨の自然を活かせるからな。女子も多いし。高校にもなると、汗臭い運動部は敬遠されがちで……」

「そういう部があるんだ。……確かに、楽しそう」

「興味持つなよぉ」


キャプテンの言ってることが分かった。確かに高校になったら、そういう部のほうが楽しそうだよなぁ。中学と違って、遠出もできるし。

……キャプテンがオレを睨んでる。いや、本気でエンジョイ系の部に入ろうと思ってるわけじゃ……


「そういうわけだから、早めに手を打たないといけないわけだ。大地、芦崎、野球部に入ってくれそうな友人いないか?勧誘してきてくれ!」

「う~ん、野球部に入ってくれそうな友人かぁ。そう言われてもなぁ」


まだ、クラスの奴のことよくわかってないんだよなぁ。運動部に入る奴は、オレたちみたいにすでに部に顔を出してるようだけど。


「大地は、どうだ?」

「辰海しか友達おらんけえ、知らんの」


大地……


「大地はほんと……、取り繕う気が一切ないの、すげえよな」


唯一の友人みたいに言われると、ちょっとというか、すげえうれしく思っちゃうけどさ。


「オレも、クラスの奴とそこまで仲良くなってないしなぁ。一応、声はかけてみるけど、野球経験者はいなかったから、あまり期待できないと思う」


高校の野球部に、未経験者が気軽に入ろうとは、なかなか思わないだろうからなぁ。オレだって、不動兄弟と野球の真似事をしてなかったら、野球部に入ることはなかったと思うし。

でも、まあ、運動神経がよさそうなのに、声をかけてみるかなぁ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ