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兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第二章

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蛙    【久慈正樹視点】


●久慈 正樹



静真が投手としてマウンドに立つ。


「よーし!来い!」


キャッチャーミットを拳で叩くと、マウンドの静真が準備投球を始める。

バシリと音を立てて、ボールがミットに収まる。調子は良さそうだな。

今日はただの練習試合じゃない。静真がピッチャーとしての第一歩を踏み出す大事な試合だ。緊張するよなぁ。


「ナイスピッチー」


静真はピッチャーとして試合に出たことは今まで一度もない。

今までの試合では、静真も俺も内野外野と移り変わって守備についていた。

夏の大会が終わるまでは、静真を投手起用はせず、野手として経験を積ませると、反田前キャプテンが決めたからだ。

高校に入るまで、静真と俺に野球の経験がほとんどないことを知った反田前キャプテンの判断だった。


〈異なるポジションごとの役割や動き方を経験することで、野球の戦略的な視野が広がる。チーム全体のプレーを深く理解できるようになる〉


反田前キャプテンは少年野球チーム時代の監督に、そう教わったと言っていた。

実際にいくつものポジションについてみて、はじめて野球の動きが把握できた。

静真たち4人で野球もどきのことはしてきたけど、それだけでは足りないものが多いんだよな。

投打はそこそこできても、野球は素人。

俺も静真も経験を積む必要がある。


「今日は自分たちを知る試合ってことだよな」


あの甲子園常連の南海大常永と、いきなり対戦することになるとは思ってもみなかったが、チャンスではある。

静真の投球が、どこまで通用するのか。不動兄弟が凄いというのは、わかってる。けど、どの程度通用するのかまでは、実際に試合をしてみなければわからない。ただの井の中の蛙なのか、それとも……


「その相手が南海大常永とはね。俺たちの実力を測るには、ちょっと荷が勝ちすぎる気はするけど」


マウンドの静真は落ち着いている。常永相手でも臆していない。

大丈夫だとは思うが……


「兄ちゃん、ノーヒットノーラン言うやつやろう」


一塁で手を振る大地。ん、大地は確実に蛙だな。

まあ、静真も辰海もオレも大海は知らないけどな。


「ラスト一球!」


ミット目掛けて白球が飛んでくる。バシリと小気味よい音が球場に響き渡る。

大海は知らない。けど、2軍相手なら、どうにかなりそうな気はするんだよな。

不動兄弟がそろっているし、辰海もいる。

静真ならどうにかしてくれそうだと期待してしまう。


「俺も蛙だなぁ」


南海大常永を相手に抑えられたら、静真の投球はどこにでも通用するということになる。

大地と辰海が入ってくれば、来年、夢を見られるかもしれない。


試合が始まる。

静真の第一球は。



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