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兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第二章

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マウンド    【不動静真視点】


●不動 静真



先攻か。

投手としてはありがたい。いきなりマウンドに上がるのは、プレッシャーがある。

試合に出るのははじめてというわけじゃないけどのぅ。投手としてマウンドに立つのははじめてじゃけえ、緊張する。

ストライクが入るか、打たれないか、そんな不安がどこからともなく湧いて来る。

期待に応えられなかったら……


「あっちで投げてるのが、常永のピッチャー?思ってたより速くない。……あれなら打てるかも?」


辰海がお気楽なことを言っとるのぅ。1番バッターだというのに緊張せんのじゃろうか?

大地の友人なだけあって、辰海は度胸が人並外れとる。


「2軍の投手だな。充分速いが、まあ、静真や大地と比べたらな」


反田先輩まで。


「兄ちゃん以上のピッチャーなんぞおらんけえ」


……大地は、こんな感じで諏訪原たちに吹っ掛けたんかのう。まいるのぉ。


「2軍投手とはいっても、常永で投手をやってるんだ。見くびってると痛い目に合うぞ」


久慈が諫める。久慈は頼りになる。


「ん~、そうなのかなぁ。ま、バッターボックスに立てばわかるか」


辰海はだんだん大地に似て来とるの。


「練習試合だからな。勝ち負けより楽しんできたらいいさ。今日は野球の楽しさを知るのが目標みたいなもんだ」

「キャプテンがそういうなら、楽しんで来よ」


ヘルメットをかぶった辰海が、軽い足取りでバッターボックスに向かう。


「キャプテンは甘いなぁ」


久慈が笑顔を浮かべる。

大地と辰海以外は、南海大付属常永に勝とうとは、はなから思っとらん。相手の実力をよくわかっとるからのう。

今日の試合で、今後の課題が浮き彫りになれば御の字じゃ。

練習メニューを作るのに役立つ。今日は自分たちの実力を知る試合じゃけえのう。



1番バッターの辰海が、バッターボックスに立つ。

緊張はしてないようじゃのう。

1球目。

辰海のバットから音が鳴る。白球が三遊間を抜けていく。


「おお!ほんとに打ちやがった」

「初球打ち!」

「やるのう」


辰海は瞬時の反応が飛び抜けとるとはいえ、初球を見逃さずに打つとはのう。

度胸も飛び抜けとる。


「辰海なら、あのくらい打てる」


大地が自慢気にふんぞり返る。うれしいんじゃの。


2番久慈も、つまったがセカンドの頭上を超え、ぽてんヒット。

2塁、1塁に走者がでた。


「おお、いけそうじゃねえか?」


反田先輩がうれしそうに身を乗り出す。


3番鞍掛キャプテンは、三振。


4番和泉副キャプテンの打球をセカンドが捕り、ショートに送球。二塁で久慈がアウト。

ファーストに送球。一塁で和泉先輩がアウト。

463のゲッツーを決められ、1回の攻撃は終了。


点にはならずか。

やはり、そう甘くない。打たせはしても点は取らせない。

それが強豪校というものなんじゃろう。経験がオレたちとは圧倒的に違う。

これから知っていくことになるのじゃろうのう。強豪校の強さを。


「覚悟せんとな」


ベンチを出て、マウンドに向かう。

早くなりかけた鼓動を、大きく息を吸って抑え込む。

顔を上げ、胸を張る。強気でいかんと。

相手が誰であれ、勝つ気で行く。


「オレは日本一のピッチャーじゃ。誰にも打たせん」


自分を騙せんようじゃ、バッターも騙せん。

マウンドに立ってる時は、オレは日本一のピッチャーじゃ。



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