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兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第二章

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はじめての試合    【鞍掛秀俊視点】


●鞍掛 秀俊



キャプテンになってはじめての対外試合。……緊張するなぁ。


「打順と守備は、こんな感じに決めたけど、不満があったら言ってくれ」



1番 芦崎() センター

2番 久慈(1年) キャッチャー

3番 鞍掛(2年) セカンド

4番 和泉(2年) サード

5番 不動静(1年) ピッチャー

6番 古二田(1年) ショート

7番 不動大() ファースト

8番 船元(3年) ライト

9番 反田(3年) レフト



副キャプテンの和泉と考えた打順と守備だが、不安しかない。練習試合くらいは静真に頼らずにと思ったが、やっぱり聞けばよかったか。


「鞍掛キャプテン、オレがピッチャーでええんですか?」

「俺の投球だと、試合にならないからな。静真、頼んだぞ」


せっかくの練習試合なのに、俺が投げたら、あっという間にコールドゲームで終了になりかねない。


「反田キャ……先輩と船元先輩、すみません。今日は1、2年が少しでも多く経験できるように打順を組みました」

「当たり前だろ。俺たちは引退してんだ。俺たちは数合わせで来てるだけだからな」

「そうだぞ。もっと、堂々としろよ。キャプテン」


3年の先輩たちが励ますように背を叩いてくれる。1年間、キャプテン、副キャプテンとして、北仙丈野球部を率いてきた二人には、俺たちの苦悩がよく理解できるのだろう。

打順や守備を決めるだけでも、こんなにプレッシャーがあるんだもんなぁ。

引退したのに付き合わせて申し訳なくは思ったけど、先輩たちがいてくれる安心感は絶大だ。

顧問の野村先生は、家庭の事情でここ数年、まともに部活にでてきてないから頼ることはできないし。

今日も野村先生は来ていない。代理で野球のことは何も知らない社会科の教師が付き添ってくれてるがかったるそうだ。まあ、野球部に興味ないおかげで大地たちを出場させられるけど、顧問が付き添ってくれないことで対外試合の機会を得るのがさらに難しくなっている。

今日は、本当にチャンスなんだ。この機会を、存分に活かしたい。

常永に少しでも食らいつけるように……


「大地がファーストかぁ。まあ、無難なところか」

「そうなんか?」

「ファーストは大柄な奴がいいんだよ。守備より捕球が大事なポジションだからな。守備が下手でもなんとかなる」

「辰海は野球に詳しいじゃのぅ」


中学生二人の野球談義か。

微笑ましいもんだな。


「いや、なんで知らないんだよ。子供のころから静真兄ちゃんとキャッチボールしてたくらい野球好きなんじゃないのか?」

「キャッチボールしとっただけじゃけえ。野球のルールも、ようわからん」


ん?大地、今、妙なこと言ってなかったか?

芦崎が助けを求めるように、静真に顔を向ける。


「お兄さん、弟さんがあんなこと言ってますけど」

「そういえば、大地に野球のルール教えたことなかったの」


静真の顔が、曇った表情に……


「ええー!?大丈夫なのか?大地!ランナーにいつタッチするかわかってるか?」


芦崎、さすがにそのくらいは……


「……そがいなことしらん」


大地が顔を背ける。芦崎の顔から見る間に笑顔が消えていく。


「お兄さああぁぁん」

「……参ったのう。これから、教えるには時間が……」


いつも冷静な静真が、ちょっと動揺している。これはただならぬ事態だということだ。


「今日のところは、大地でもできるポジションに代えるか……」


今からルールを覚えるというのはきついだろう。内野手は意外と面倒なんだよな。塁に出てる出てないでタッチが必要不必要が変わるから。小学生の時は混乱した。


「いや、大地は実地で学ぶタイプだし、このままでいいんじゃないか?うちじゃあ練習試合もろくにできないからな。多少強引に行かないと、いつまでも学ぶ機会は訪れない」


和泉のいうことももっともだ。しかしなぁ。


「それは、そうだが……。ルールを知らないとなると……。反田先輩。どうしたら?」


大地の成長には、今日のような機会を逃すのは惜しい。だからといって、ルールも知らない状態では、相手チームに迷惑をかけてしまいかねないし……


「オレも和泉に賛成かなぁ。練習試合なんだから、経験を積めることしなけりゃ意味ないだろ?まあ、判断するのは、キャプテンのお前だけどな」


前キャプテンの反田先輩の言葉は重い。キャプテンのオレが判断しなければならないことなんだよな。うちには監督はいないんだから。


「よし!大地はこのままファーストを守らせる。ランナーにタッチが必要な時はオレが指示を出すから、聞き逃さないようにな」


こうなったら、実地で覚えてもらうしかない。どのポジションでも教える必要があるなら、内野に置いて、俺が声をかけるほうがやりやすい。そうすれば、大地だって覚えていくだろう。


「それなら、楽そうじゃ」

「覚える気ないな。大地」


辰海のあきらめたような呟きに不安が募る。

大地が大丈夫でも、俺が大丈夫じゃなさそう。



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