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兄貴はいつも俺の味方でヒーローだった  作者: みの狸
第一章

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図書室     【芦崎辰海視点】

●芦崎 辰海


図書室で本を借りて読むという、楽なんだか面倒なんだかわからない授業。

担任が用事があるとかで図書室を出ていくと、すぐに騒がしくなる。


「大地は、何読むんだ?」

「ほうじゃのう、文字が少ないのがええのう」

「すぐに読み終わったら、読書になんねえぞ。……オレはこれにしようかな?『田舎町で犬と暮らす』面白そうじゃね?」

「……もう、田舎で犬と暮らしとるじゃろ?」


大地と面白そうな本がないか探すが、図書室にある本というのは、どれもイマイチだな。


「芦崎ぃ!大地といるとバカになるぞぉ」

「もう、なってるかもなぁ」


金囲たちが気色の悪い笑い声をあげる。


「お前らがバカなだけだろ。大地、行こうぜ」


マジでムカつく奴らだな。


「逃げんのかぁ」


大地の腕をつかんで移動しようとしたけど、大地が動かない。

大地が金囲の顔をじろじろ見ている。


「ああ、思い出したのぉ。母ちゃんのケツに隠れて泣いとったびったれか」


オレの手を振り払い、金囲たちの前に進み出た大地の雰囲気が変わる。金囲たちの顔から薄ら笑いが消えていく。

あ~あ、大地の導火線に火をつけちまったな。

いつも大地は、のんびりとした鷹揚な感じだけど、それだけじゃないことは、もうクラス中が知っている。当然、目の前のこいつらも知っているはずなのにな。


「ワシとゴロマキする覚悟できたちゅうことかのう」


金囲たちを見据えた大地の目は、獣が威嚇する時に見せるものだ。

周囲の連中も異変に気が付いたらしく話し声が消える。


「な、なにがっ、ゴロマキだ!」


金囲の声が裏返ってる。大地はからかっても無視することが多いから、今回も反撃されないと踏んでたのだろう。

一度、大地に泣かされたことあるくせに学習能力ない奴らだな。


「先に母ちゃんに電話したけりゃしてええぞ。ワシャぁ、覚悟決めたけえ。やりおうたるわ。おんどれらのタマちゅうタマつぶしたる」


大地ならほんとうにやるかもしれない。

金囲たちもそれがわかったのか、硬直している。

オレは大地の助太刀に入るべきか、止めるべきか。……迷うなぁ。

静まり返った図書室全体が緊張感に包まれて息苦しい。


「……っだぅ」


金囲が何か話そうとしたみたいだけど、声が出ずにカエルのような鳴き声を上げた。


「わりゃぁ!しごうしちゃるけえ、覚悟せえ!!」


大地が近くの椅子を蹴ると、大きな音を立てて金囲の横を滑っていった。


「ぅっ……ぅうっ……ヒッ……ヒック……ヒック……ぅ……ぅぅううっ……ヒック……」


大地の啖呵に、涙をぼろぼろ流して、金囲たちがしゃくり上げだした。

ビビって泣くくらいなら意地悪いことしなきゃいいのに。


「ぅ……ぅう、ふ、不動くんがぁぁ」

「極道になっちゃったあぁぁ」

「うぁぁあああああん」


釣られて図書室にいた全員が泣き出し、なんとも言えない重い空気になる。

生まれてこの方、こんな緊張感のある場面に出くわしたことねえ。どうすんだよ。これ。


「なんなら!」


ようやく大地が周囲の状況に気が付いたらしい。焦ったようにきょろきょろしだした。


「大地……、いくら何でも過激すぎるって。もうちょっとさぁ。言い方ってもんがあるだろ。相手は子供なんだから」

「ワシも子供じゃ!」


そうなんだけどさぁ。子供はあんなこと普通言わないんだって。



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