せめて律令制であってくれ
アクセス数が三桁を超えました。感謝感激の嵐です。誰にも知られずに埋もれていくと思っていたのに…。完走できるよう、がんばりまっす。
とりあえず最終話まで下書きをアップしておこう。
「こんにちは」
こちらがにこやかに話しかけると、御者のお姉さんはびくっと驚いた表情をしている。
動揺しているのが、わからない言葉で話しかけられたせいか、馬車に轢かれて無傷な上に、モンスターの脳漿ぶちまけたままの法服マント男におそれをなしたせいかわかりづらいな。
近づいてきたということは前者の可能性が高いのだろうが…
おっかなびっくりという様子で、御者のお姉さんが口を開くと、想像通り、可愛らしい声が響いてくる。
「あなたは稀人ですか。」
「稀人?」
日本語ではない。だが、意味が理解できる。さらにわからない単語は、わからないなりに近い意味であろう日本語の単語に置き換わるという親切設計だ。会社法の条文を書いた人にも教えてやりたい。
そもそも、第一この世界人(語呂悪いな…)の第一声である、「危な~い」もちゃんと意味は通じていた。
慌てていてそこまで頭が回らなかったのと、「危ない」との、彼女の警告が無意味なものと化し、そのまま俺が馬車に轢かれたのは残念だったが…。
「稀人というのは、2、30年に一度の割合で、 異世界から飛ばされてくる人たちのことです。その人たちはすべからく特殊な能力を持ち、彼らが話す言語は、この世界の言葉ではありませんが、私たちに意味が通じ、コミュニケーションが取れるのです。」
そんなことが可能になれば、法廷通訳が必要なくなるな。それに、2、30年に一度となると、俺の前に飛ばされた人物は、民事訴訟法が改正された頃に飛ばされていることになる。
そもそも俺の世界の日本人が飛ばされているかも、時間軸が同じなのかもわからないが。
「確かに、私は魔法の使えない世界から来ました。あなた方の言うところの稀人でしょう。」
「そうでしたか。この国の決まりでは、稀人は保護することになっています。とは言っても、今回は私の方が助けられましたが…。 私の名前は、レイア。お礼が遅くなりましたが、モンスターから助けていただき、ありがとうございました。馬車で轢いてしまった件も謝罪を。」
この世界に名字はないようだな。俺もファーストネームで名乗るか。
「私の名前はまさよし。まさ、と呼んでいただいて構いません。謝罪についてはこのとおり、無傷ですし。助けたのも成り行きです。事務管理みたいなもんです。」
「ジムカンリ?」
ん?翻訳されているはずなのに通じない。
まあ、確かに日本ですら、一般人には馴染みがない単語だもんな。ただ、若干気にかかる。
「ところで、稀人を保護する国の決まりがあると言っていましたが、稀人の行動を制約するような法律もあるのですか?」
「ホウリツ?ホウリツとはなんですか?」
ガッデム!?
馬車を見て薄ら気付いていたが、律令制よりも文化レベルの低い可能性が出てきたぞ。
「法律も国の決まりなのですが、国民に選ばれた代表者達が議論によって定めるために、通常の決まりよりも強力なのです。」
「そうですか。先程の質問の答えですが、稀人を制約するようなホウリツはありません。ホウリツ自体がこの国には存在しませんが、そのような決まりがないという意味です。」
「ただ、レイアさんが『国の決まり』と言ったように、何かしらの手続によって、稀人に関するルールが決まっているのではないですか?」
「まさ様は議論によって決まりを定めると言いましたが、我が国にはそのような文化はありません。全て、稀人たるロウ様の武力によって定められたものです。」
Oh,shock!
律令制どころか、世紀末だった。
アクセス解析で年代とかも出ないかなぁ。法律用語は雰囲気だけ通じればいいけど、パロディネタがおっさん過ぎて若い人にはわからない気がする。おじさん、ちょっと心配。