デート日和
次回作に煮詰まっていて、今作を読み返していたんですが、手前味噌ながら、これを埋もれさせるのはもったいないなあと思い、サイドストーリーを挙げてみました。時系列的には、28話の前あたりです。
要旨の告知で済ませようとしたが、マザーから全文朗読をせがまれたので、詳細を話すことにする。
………
「なあ、レイア。」
「なあに、まさ?」
一緒に商談に行った帰りがけにレイアに声をかける。
「今度、一緒にデートに出かけないか?」
直球過ぎる。日本で、勉強と仕事に邁進してきて、恋愛なんてまともにしてこなかったからな。
「ええ、嬉しいわ。でも、制服しか外出用の服を持ってないの。」
優しいレイアは、そんな直球を正面から受け取ってくれる。
「デート中に買って、着てもらうのはどうだろう。」
「まさが選んでくれるの?」
「俺のセンスでよければ。」
「可愛いの、選んでね?」
意外だった。実用性を重視してると思ってた。レイアのことを知ってるようで、プライベートのことはよくわかってないからな。
次の日、街の中央広場に集合して、まず目的の服屋で。シンプルに黒のワンピースを着てもらうことにする。
俺はこっちに来て以来、法服だから、お揃いだ。元の世界じゃ、法服は一着を着まわしていた割に大して洗濯してなかったが、こっちでは魔法できれいにしているぞ。
レイアにはワンピースだけだと寂しいから、白いリボンをアクセントとしてセットにした。
白いリボンは、女性裁判官の正装だ。テレビ撮影時くらいしかお目見えすることはないが、可憐さが演出できていいと思う。
こうなると一式そろえたくなってきたから、アクセサリーなどの小物が売っている雑貨屋へ。
鏡をモチーフにしたイヤリングで耳元を飾ってもらう。
ちなみに裁判官のバッジは真実を映す八咫の鏡がモチーフだ。
結局、自分のセンスなんてこんなもんだ。でも、着る人が着れば、光り輝く。鏡は、美しい人を映すのにふさわしい。
宝飾品としてバッジはさすがに売ってなかったし、女性だとバッジをつける場所がないから、イヤリングにしてみたが、大正解だ。
フル装備で、笑顔のレイアが目の前でクルリと回るのを見て、自分は幸せの要件効果を初めて知ることとなる。
あとは、べたなデートコースだ。カフェでお茶して、ケーキをつついて、馬車に乗って、ぐるっと街の外周を一周する。俺に気の利いたエスコートを期待する方が間違っている。しかし、当のレイアは喜んでくれているようだ。
夕飯は、レイアの主人が薦めてくれた街一番の店へ。
「ここ、来たかったの。私のお給金じゃ、とてもじゃないけど来れないから」
「まあ、レイアのおかげで大臣にもなれたから。これくらいは。」
大臣ともなるとこの町でも10本の指には入る富豪の部類だ。
ちなみに、裁判官の最高位は内閣総理大臣と同じ給料だ。
自分も将来はと思っていたが、こっちの世界に来てからは判事は一人だけだから(ライはもう裁判官だが、まだ判事補だろう。)、自分が最高位かどうかは、もう気持ちの問題だ。
「いい店だから、さぞかし酒もうまいだろうな。レイアは酒は飲まないのか?」
「飲んだら、旦那様を5メートルも投げ飛ばしてしまって。幸い旦那様にはケガはなかったんだけど、それ以来禁酒を言い渡されてしまったわ。」
しょんぼりとレイアは言う。
「ははは…それは残念だ。」
「まさは飲んでいいからね。そう言うからには好きなんでしょう。」
「ああ、元の世界でもよく飲んでた。」
職場に飲み好きが多くて、三日と空けずに飲み会してたからな。ただ、昨今の情勢から昔ほどではない。
店の料理は、さすが、街一番と評判なだけあって、ワインもメインのステーキも極上だった。まあ、うれしそうにしているレイアの顔ばかり見ていたから、味なんて二の次だったが…
店を出ると、すっかり周りは暗くなって、空には満月が浮かんでいた。
「月が綺麗ですね…」
「どうしたの、急に?」
あー、もう死んでもいい!恥ずかしすぎて。
「楽しすぎて気づかなかったけど、ほんと綺麗ね。また誘ってね。」
本当に今日は俺の命日になるかもしれない。
そう言って、俺を振り返ったレイアの顔は月明かりに照らされて女神のようで、俺の心の臓を鷲掴みしたからだ。
いや、次回まではレイアのためにも生きねば。
さすがにデートの内容をこれ以上明かすのはレイアの刑訴法326条の同意がないと明かせないだろう。今後、ABCの階段を上るかもしれないからな。
ちなみに俺は魔法使いでもあるが、賢者になるつもりはない。
召喚されて、証言義務が課されても、守秘義務による証言拒否権を発動する。
ただ、司法取引でレイアの指輪のサイズでも教えてくれたら、検討しよう。
さて、これにて今日の期日は閉廷だ。
次回期日は追って指定する。またな。
本作には、その要素は出てきませんが、ちょうどクリスマスの時期になりました。甘い雰囲気を演出できてますでしょうか。メリークリスマス!




