国民として生まれてきたからには
国民の三大義務には入らないけれども、社会契約説って今も有効なのかな…
あと三話です…が、今さらながら章立てにしてみました。
ライに刺激され、俺はこの国の裁判制度の確立を決意する。
魔法にも慣れてきたし、この国の政治に携わった今なら、それも可能だろう。
ただ、それでも国を巻き込む規模だと独力では難しく、奴の力を借りる必要がある。
「ルーレ・コントラクティア!」
神の名を借りて、まずは国中を覆うコントラクティアを発動する。
それに呼応して同意した者を裁判制度へ組み込む仕組みだ。
国の範囲は、帝王ロウの目の届くところ(あいつ、本気出せば100キロ先まで見えるっていうんだから、やばくないか。)。
そして、同意しない者には陳情を強制する。陳情イコール、ロウとの喧嘩であいつにうんと言わせないと通らないから、同意しようがしまいが、ほぼ関係なく裁判制度に組み込まれる寸法になっている。
あまり手荒い方法はとりたくないが、日本人だって日本に生まれれば、法律への同意もくそもないし、訴えられて応答しなければ敗訴する。一応、制度から脱する機会を与えただけ、手続保障は手厚い。そう思おう。
それに、国外脱出は自由だ。パスポートも不要だから、不満があれば、勝手に出ていくだろう。
そして、裁判官は、各村からの陳情者で俺が見繕った者を選定する。村の代表として陳情に来るくらいだ、人望も厚いだろう。そいつに、ガベル・ヴィレッジの木槌のミニチュア版(それでも2メートルある。)と、ジャッジの魔法、裁判の基礎知識の三点セットを渡す。
もし、村の裁判官の裁判に不満があれば、ガベル・ビレッジへ、さらに不満があれば帝都の俺の下へ。一応、三審制にしておいた。
法律も、裁判官も、将来的に教育制度が整えば中央で用意するつもりだ。だが、今のところはとりあえず現地の裁判官と慣習法でいくしかないだろう。それでも、今の裁判の信用性は、裁判官の独立でも法律でもなく、帝王であるロウが担保しているから問題ないだろう、あいつの強さが目に見える分、あえて犯そうという者はそうそういないだろうしな。
それでも確定した裁判に従わない者は、タンスの横を通ると必ず小指をぶつけるなどの、ちっちゃいが、ひたすら耐えがたい罰が神から与えられるようにコントラクティアに組み込んでおいた。その範囲は刑罰に限らず、債務の踏み倒しにも及ぶから、いわゆる取り立てる財産がなくて最強の人も、足の小指がもげたくないから、必死に働く。なお、破産制度も作ったからちゃんと手続を踏めば、そこから逃れることも可能だし、そもそも神も、必要以上の介入を避けるから、裁判の結果に自ら従えば、何もしない。万が一、裁判が神の眼から見て誤審だったとしてもだ。
神判も選択肢だったが、やはり人の世は人が裁くべきだろう(ロウを人と呼んでいいかは説が分かれるが)。
民主制はまだまだ時期尚早だが、これで社会制度はそれなりに回っていくことだろう。
そしてまた、俺は不完全ながら裁判官職に舞い戻ってきた。しかも定年までには届かないと思っていた三審制の頂上、最高裁の地位だ。ただ、前は仕事が好きなだけだったのに、今は別の理由で職務に邁進しようとしている自分がいる。
俺はもう、異世界のサイバンカンではなく、この世界の、この国の、裁判官になったということなのだろうな。奴の思惑通りになっていることは気に障るが、まさに天職、天から授かったものとして、ありがたくその職を拝命することとしよう。
ようやく主人公が本職に戻りました(笑)
まぁ、主人公が別の才能を発揮するのはラノベあるあるなので、まさよしくんには遅くなったことを許してもらいたい。




