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裁判官がもし異世界に転生したら  作者: のりまき
帝都編
25/31

子供の未来

2話目。

子「供」を漢字で書くかどうかいつも迷ってしまう、おいらです。

大臣になってすべきこと、それはたくさんあるが、まずは子供だ。とりもなおさず、俺が子供好きだ。子供は宝だ。


こっちの世界は力がものをいうから、荒くれものが多く、強盗殺人や喧嘩による傷害致死で親が亡くなることもしばしばのようだ、それに未開の地が多く、モンスターに襲われることも無視できない。魔法はあるものの、大けがを治せる者は少なく、医療水準が低いのもそれに拍車をかけている。


孤児院に引き取られた者は、栄養不足で体格に恵まれず、力が優先されるこの世界では冷遇されがちだ。才覚を見せれば別だが、大多数は、普通に社会に放り出され、そのまま行く当てもないから、強盗団のしたっぱとなり、また孤児の再生産に加担する。


一方で、ハングリー精神だけはあるから、陳情で、孤児院への予算を勝ち取る者もいるようだ。


レイアにそのような子供事情と孤児院の所在を聞いたが、レイアもその孤児院育ちなんだそうだ。レイアがたまに影を見せるのも、そのことが関係しているのかもしれない。


早速、孤児院を訪れると、レイアを世話していたというマザーに会う。後ろでは、孤児たちが30人くらいだろうか、元気いっぱいに跳ね回っている。


「あらあら、こんにちは、まささん。レイアから話は聞いています。彼女もいい男、捕まえたわね。」


「初めまして。レイアにはお世話になっています。」


いきなりのあいさつに適当にお茶を濁すと、後ろから幼稚園児くらいの男の子が近づいてきて、


「えいやっ」


と膝カックンをかましてくる。稀人だからその程度では体勢を崩さないし、そもそも体格に差がありすぎて、俺のふくらはぎに膝が当たっている。それでも、わざと引っかかったふりをして、


「やったな、このやろう。」


と、こっちからはかんちょーをかましてやる。相手の尻と自分の指へのダメージリスクのある危険な技だ。なので、これまで封印していたが、男児に合わせてマイルドに解放してやる。


そうすると、男の子はきゃっきゃっ言いながら、尻を抑えて、孤児たちの集団に戻っていく。


「あら、子供の扱いにも慣れて。あなたとレイアの子供はさぞかわいいんでしょうね。」


「げほっ、げほっ。」


盛大にせき込むが、気を取り直して、俺は本題の孤児の就職問題を切り出す。


「ところで、子供たちがここを出た後の当てはついているのですか?」


とたんにマザーの表情にも影が差す。


「私たちも努力はしているのだけれども、孤児というだけで敬遠されて…」


やはりマザーも子供たちの将来を心配しているようだ。


よし、すぐに雇用を産み出すことはできないが、俺がこの孤児院に通って、法律を始めとする教養を叩き込んで、役所に取り込もう。それで評判がよくなってくれば、他でも雇ってくれるだろう。


俺は忙しくて通えそうにないが、ここで魔法の才がある者がいれば、奨学金付きでレガール魔法学校に通わせるのがいいだろう。日本の奨学金は実質学資ローンも多く、返済の訴訟も結構起こっているが、こちらでは人数もそんなに多くないだろうし、返済不要にしておこう。


優秀な人材は、いつの世だって求められる。

問題は、才能を見出して、伸ばせるかどうかということだろう。

チャンスがなく、ここで埋もれてしまっている者も多いはずだ。


そしたら、ライがあの歳で村長代理に就いたように、早くから才覚を発揮する者も出てくるだろう。場所場所によって、優秀さの定義は変わるが、この世界でも次第に力から知識へとそれはシフトしていくはずだ。


そんな話をマザーにすると、大いに賛成してくれた。


「まあ、いいわね。レイアが手伝ってくれたりして、私たちも最低限の生きる術は教えられるのだけれど、それも限界があって…」


日本では勉強嫌いの子も多いが、こっちのハングリーさであれば、どん欲に何でも吸収していくことだろう。「学ぶ」ということは、古代では裕福な者のみができたように、本来は貴重なものなのだ。


はてさて、こっちの世界では行為無価値と結果無価値、どっちが主流になるか、見ものだな。ちなみに俺は司法試験で有利だと思ったから行為無価値だったが、こちらには司法試験などないから公平に教えるつもりだ。いつか俺を論破する逸材が現れると嬉しいな。


大まかな合意はできたので、細かい話や実際の授業は後日行うとして、そのまま孤児院を失礼しようとすると、マザーから声を掛けられる。


「孤児が無事に巣立ってくれるのはうれしいのだけれど、レイアも不遇な身でね。どこかに彼女を幸せにしてくれる、甲斐性ある男性はいないかしら。まささん、ご存じない?」


マザーは、俺のどこを気に入ってくれたのか、話の途中にちょいちょいレイアの見合い話をぶっこんでくる。


お節介おばさんは世界を超えて共通だな。


ただ、こちらの世界では力が優先されるから、女性の結婚は、文字通り運命を左右すると言っても過言ではない。


ホントに俺でいいのか?


そんなもの、答えは六法にも書いていないのだから、自分で探すしかない。


俺、大臣職を全うしたら、結婚するんだ…

はフラグだが、せめて結婚休暇制度を創ってからだな、うんうん。


そんなことを考えて、マザーと自分をごまかしながら、城に戻った。


その後しばらく、恥ずかしくてレイアの顔をまともに見られずにいたら、彼女に悲しげな表情をさせてしまったので、慌ててご機嫌取りをした。


こんなことも、将来は笑い話になるのかもしれないな。

少子化などで法学部生も減っているらしいけど、法曹の未来は大丈夫だろうか…

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