決着
お酒イイよね。あんまり詳しくないけど。
この戦いの勝者はあいつ。読者の皆様の予想は当たっていましたか?
がっ!と鈍い音がする。
「惜しかったな。今のはひやっとしたぞ。」
顔面を腕でがっちりガードしたロウの顔面に杖は届かず、丸太のような太い腕に受け止められている。直撃した腕からは血が流れ、骨が折れているようだが、それも時間が経つうちに元通りだろう。
「これでも届かないのか…」
力を限界まで引き出した俺は、膝立ちの状態でもう立ち上がれない。
「終わりだな。」
ロウがそう呟いてゆっくり近づいてくる。腕も、もう持ち上がるくらいには回復しているようだ。
「まさ、無茶しないで!ロウ様もやめて!もう終わりにしましょう!」
レイアが悲痛な叫びを上げている。
そう、終わりだろう。俺の力では届かなかったんだ。
…だったら、他力本願しかない。
裁判だって、代理人の力でひっくり返ることはあるんだ。
今の状況、あいつの力、逆転の目はある!
俺が諦めていないことを悟ったのか、近づいてきていたロウが立ち止まる。
レイアの方は顔面蒼白で今にも倒れそうだったので、そちらに声をかけておく。
「レイア、安心しろ。俺を信じてくれ。」
ただ、これだけは使いたくなかったんだがな。自分で戦った気がしないだろうし。
だが、そうも言っていられない状況だ。
大事な人を虚仮にされて、そのままにしておけるか。そのために、使えるものは何でも使う。
人事を尽くして天命を待つ…いや、天命を引き寄せるんだ!
「力を貸しやがれ、電波野郎。カミカゼ!」
突風が吹き荒れ、砂嵐が巻き起こる。神がここに降臨する。
「やれやれ。私闘に神を顕現させるなんて、無茶苦茶な奴だ。人選、間違ったかな。」
外観は、九法正義だが、雰囲気も口調も変わっている。
「誰だてめえ。さっきの奴じゃねえな。」
ロウが、その変貌ぶりにそう尋ねる。
「やあ、久しぶり。と言っても、まともに会話するのは初めてかな。前回は殴りかかられただけだし。ここの世界の神様をやっているものだよ。」
「面白え。前、戦った勝ち逃げ野郎か。再戦は諦めていたが、ここで決着をつけてやる。」
ロウはそう言うと、好戦的にニヤッと笑う。
「喧嘩っ早いのは同じだが、話が通じる分、まさの方が若干マシというところか。裁判に引き分けはないが、痛み分けはある。今回はボクに免じて、ここで取り下げてもらおう。君は寝ててくれたまえ。」
と言うと、九法正義の体を借りた神が杖を振るう。
すると、触れもせずにロウは壁まで吹っ飛んでいく。
「がはっ」
ロウが、そのまま気絶する。魔法の効かないロウを吹っ飛ばし、あれだけタフな奴を一発で気絶させるなど、やはり腐っても神というところか。
「じゃあ、あとは頼んだよ。」
レイアとケモ耳の娘に声をかけると、九法正義の身体から神が離脱する。すると、そのままゆっくりと地面に倒れた。
「まさ。あなたは本当に強い、今はゆっくり休んで。」
レイアは、寝たままのまさよしにそう呟くと、てきぱきと療養の準備を進めていくのであった。
外周一触が、サブタイトル候補だったんですが、字面がカッコよくないのでボツになりました。
お話はそろそろ終盤に差し掛かるところです。




