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裁判官がもし異世界に転生したら  作者: のりまき
帝都編
19/31

帝都登城

設定が無理やりでも、話が通るのがラノベのいいところ。

サブタイトルについては、言葉遊び(ダジャレとも言う。)が好きなんです。

帝都に向かう途中で、思わず俺はごちる。


「まさか異世界に来て1週間足らずで村長になってしまうとは。」


「流石、私が見込んだ投資商品(ひと)は違うわ。」


「さっきから、「ひと」のイントネーションが不穏なんだけど。」


「あら、 私は人を公平に判断しているだけよ。私に利益を運んでくれるかどうかでね。」


確かに、基準が明確な分、公平だ。ただ、それならジャンは、彼女にとって「良い人」なはずだが、露骨に嫌がっていた。彼女は偽悪的な態度をとっているんだろう。何がそうさせているかはわからないが。


「ところで、まさは異世界のサイバンカンと言っていたけど、どういう職業なの?」


日本だとそこそこ有名な仕事のはずたが、レイアにとっては初耳らしい。法律がないなら当然か。


「法律に従って、争いを裁いて解決する役人だ。法律のないこの世界なら無職になってしまうがな。」


「こちらでは基本的に腕力で物事を解決するからね。」


そういう意味では、村長に就職できたのは良かったのかもしれない。収入はほとんどモンスター討伐分だが。


そんな感じで、日本の紹介をしながら雑談していると、帝都が見えてくる。あの村と帝都は日帰りできる距離のようだ。そんな近距離で、村が寂れていたように見えたのはやはりモンスターの封印が大きかったんだろう。その脅威がなくなった以上、あとはライの手腕次第で、大きく成長させることができるはずだ。がんばれ、ちびっこ。


帝都は石造りの3メートルほどの壁で囲まれており、堀にかけられた橋の正面に木造の門が設けられていた。この年代で、しかもモンスターが出るとなれば、当然の防衛措置だろう。ただ、修理がなされていないのか、壁にひびが入っている部分もある。


レイアが、門番に通行手形を手渡して二言、三言交わすと、門番はその手形を一目見て、それを返してくる。

俺のことも、レイアが優秀な稀人で、ロウ様にご紹介したいと言うだけで、俺自身は何も聞かれることなく、門は素通りだ。


「稀人の方でしたか、それでは城までご案内します。」


そう言うと、門番が他の同僚に言伝して、馬車を先導する。その前を伝令らしき人物が街の中心部に向かって走っていくが、俺(稀人)を保護したことを中枢部に伝えるためだろう。


ただ、先ほど馬車の中身が調べられていないのもそうだが、異世界から来て、バックグラウンドも全く不明な者がノーチェックで門を通されることに違和感を覚えたので、レイアに尋ねる。


「チェックが緩くないか?」


「旦那様が第一級商人なのは説明したと思うけど、第一級商人名義の通行手形は、信用が高くて、 荷物の検閲もないの。通行手形もコントラクティアと同等の魔法が使われているから、偽造は不可能よ。稀人も信用が高いのは同じよ。」


「稀人というだけで通らせてもらえるなら、みんなそう騙るんじゃないか。」


「ふふ。そんなバカなことする人はいないわ。理由はすぐわかると思うけど。」


何回か理由を聞いたが、レイアは笑いながらはぐらかすだけで、明確には答えてくれない。


馬車は門番の先導に従って、城に向かっているようだ。レイアの主人のところに寄ると思っていたが、レイアの話によると、稀人を保護した者は、まずは帝都の城まで連れていく決まりとなっているらしい。


城まで続いている道は馬車が行き交えるほど広く、石畳の立派な道だ。ただ、年期が古いのか、馬車がガタガタ揺れている。


「うわっと。舌嚙みそうだな。」


「ええ、ロウ様の治世になってから、石畳が更新されてないから、ボロいのは否めないわ。外壁もね。ただ、以前は修理のために、石工たちが強制召集されていたから、今の方が喜ばれてるわね。」


「どっちもどっちに思えるんだが。公共財なんだから、皆で金を出し合えばいいだろ。」


「音頭をとる人がいないのがネックね。一番発言権のあるロウ様がそういうところに疎い方だから。」


「疎いというか、トップなら必要な素養だと思うが。」


「ロウ様は素晴らしい方だわ。今の世の中にはその力が必要よ。以前に比べたら、自由もある。」


「自由ね。自由には責任がつきもんだと思うけどね。」


「まさも、以前の王朝時代の評判を知ればわかるようになるわ。ちょっと暗い話になっちゃったわね。あれがお城よ。」


おそらく今のレイアの価値観を作り上げているだろうその話は、本人が言っているとおり、暗くなりがちなようだ。


お城が見えて来たあたりで、その話を多少強引に切り上げる。


お城は、 四方が尖塔に囲まれている西洋風だ。一見立派だが、城壁も石畳と同じく、漆喰が剥がれているところがあって、ボロボロだ。俺はなんとはなしに城壁を眺めていると、ドゴーンという物がぶつかる音とともに、城壁が揺れ、漆喰がさらに剥がれ落ちる。


「何の音だ?」


俺がびっくりしていると…


「ふふ、すぐにわかるわ。 」


何でもないようにレイアが答える。城門をくぐり、しばらく廊下を歩いていると、扉の前に行列ができていた。


「何の行列だ?」


俺が更に疑問の声を上げると、今度はレイアが応えてくれる。


「陳情の列ね。」


まあ、確かに城は政治の中枢だから、陳情者がいること自体はおかしくないんだが、困っているというより歴戦の猛者が気合漲る顔をしているのが気に掛かる。


また、ドゴーンという音がすると、扉の向こうから声が聞こえる。


「ランクCだな。次!」


すると、行列の先頭に立っていた男が、勇んで扉を潜る。


レイアは、それに続いて、扉の向こうへ進んでいく。


「行列を無視していいのか?」


「稀人は優先権が与えられるのよ。流石に陳情中には割り込めないけどね。さっきの人が終わったら、ロウ様にご挨拶しましょう。多分すぐ終わると思うから。」


さて、この国のトップとご対面か。

世紀末覇者が、どういう面しているか拝んでやろうじゃないか。



金貨で顔を拝んでますが、現物は初ということで。

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