神の存在証明
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そろそろ折り返しだから、もしかすると、もしかしたら…(どきどき)
戦闘描写が入ったのがいいのかな。後半にもまさよしの見せ場があるので、楽しみにしてもらえていたら嬉しいです。
なお、今回のお話は主人公の性格がよく出てますが、現実に使うと差別になりかねない言葉も含まれているので、ご注意を。
無事に封印されたモンスターを倒した俺は、
3メートルあろうかという木槌を肩に担ぎながら、村に戻る。
隣には一つ目鬼の生首をニコニコ顔で運ぶレイアが並んで歩いている。
帝都に着いたら売り渡すと約束したが、機嫌がいいのは、余裕で家の建つくらいの値段でそれが売れるためだ。通常は、素材に傷がついて値段が落ちるそうだが、俺が無傷で倒したからより高い値が付くらしい。
鬼の首を取ったら喜ばないといけないが、鬼の生首を見て笑顔でいられるのは日本では呼吸を使いこなす柱くらいなものだろう。こっちの世界でも例外だと思いたい。
村に着くと村長宅に赴くが、そこはライの自宅でもある。ライは村長の息子で、村長は世襲制だから、将来的にはライが村長の立場を継ぐそうだ。
ちなみに、日本には世襲議員という言葉はあるが、地位の相続は発生しない。憲法の平等原則や、 職業選択の自由などに反するためだ。例外は皇族だ。
村長宅に着くと、村長には鬼の生首と巨大な木槌にびっくりされたが、もう日が落ちているので話は後にして、そのまま泊めてもらう。小さい村に宿屋はなく、一番大きな村長宅の空き部屋を貸してもらうのだ。
当たり前だが、レイアと俺の部屋は別だ。
残念なんかじゃないんだからね。などと、ベッドでツンデレごっこをしていると、初日で疲れが来ていたのか、すぐに眠りに落ちた。
その夜、俺は夢を見た。
優男風でロン毛だが、ハゲかと思うくらい後光がさしている奴が話しかけてくる夢だ。
「やあ、こんにちは。神様だよ。」
「脳ミソに電波でも飛んでるのか!」
「第一声がそれってヒドくない!?」
いきなり、心神喪失糸のヤバいのが現れた。
精神病だと、誰でも無罪放免だと思われている節があるが、無罪になるのはほんの一握りで、仮に無罪になったとしても、医療観察制度の下で、完全責任能力者の刑罰よりも長く病院外に出られないこともある。
コイツ、病院から抜け出してきたんじゃないか。
「自分で神様と言う奴にはこれくらいで十分だ。ところで、その神様がなんの用だ?」
うさん臭さがにじみ出ている奴だが、そうは言いつつ俺は現状を受け入れた。異世界転生、魔法があるなら、神様がいたって不思議ではない。むしろ定番だ。宗教観の薄い日本人の俺でも、この展開は予想はしていた。
「話は聞いてくれるんだね。 いきなりこの世界に飛ばしたことのお詫びと現状の説明をと思ってね。」
「事前の説明義務違反と、合意なき契約の自力執行に訴えを提起する。損害賠償請求をするなら何処の管轄だ? 今の発言は自白だから、撤回は不可能で、オレの勝訴は間違いないからな。」
「話を聞いてくれると思ったら、喧嘩腰だね。説明を聞いてくれてからの判断でもいいんじゃない?あと、君の訴えた裁判の裁判長はボクになると思うよ。」
「お前が訴えられているのに、裁判長になれるわけないだろ。忌避だ、忌避。ただ、説明を聞いてから、追認する可能性はあるか。じゃあ、話を聞かせろ。」
「神様に向かって、態度デカくない?」
「後のない奴は一周回って、強いんだよ。金のない債務者が最強なようにな。俺は死んでるんだろ。正確には元の世界で。」
「そう、君は刺されて一回死んでる。ボクは君を生き返らせた命の恩人でもあるんだよ。」
「俺が生き返らせてくれと頼んだわけじゃない。そこに申込みと承諾は存在しない。」
「君は、君を産んでくれた親に感謝しないのかな?」
「そう言われると弱いな。世の中の全てが法律で割り切れるわけではない。」
「法律大好き人間の割に柔軟な思考をしているんだね。」
「むしろ逆だ。法律好きは融通が効かないと思われてるが、柔軟でなければ法律解釈なんぞ出来はしない。話が逸れたな。生き返らせてくれたことは感謝する。損害賠償請求も撤回しよう。それで、俺は何をすればいい。」
「理解が早くて助かるよ。」
「目的がなければ、神様といえど、異世界転生なぞというリスクの高い行動を取らないだろう。転生先の世界の理が壊れる可能性がある。」
「トラブルとは考えないんだね。」
「お前は、俺を生き返らせたと言った。故意があるってことだろ。」
「故意というのは若干気にかかるけど、そのとおり。ある目的があって、君をこの世界に生き返らせた。」
「長い。法律家も話が長いが、5分でまとめろ。」
「感謝の割には、態度がデカいのは変わらないんだね。君には力が支配するこの世界を変えてもらいたいんだ。」
「それはお前の方が適任なのではないか。自称神様なんだし。」
「自称は余計だよ。確かに、ボクにはこの世界を変える力がある。だけど、強力過ぎて、それこそ、この世界の理を壊しかねないんだよ。」
「難儀なものだな。強大すぎると、独占禁止法に引っかかるようなものか。」
「だから、稀人を定期的にこの世界に取り込んでいるんだ。」
「なるほど、前任の、と言って良いかわからないが、稀人であるロウが、この世界を武力の支配する世界に変えた。さらにそれを修正するために俺を生き返らせたというわけか。」
「やはり君は理解が早い。前任のロウは、神よりも強いか試してみたいと言って、いきなり殴りかかってきて、文字通り、話にならなかったからね。」
「めちゃくちゃな奴だな。ところで、ロウが来るまではこの世界はどういう状態だったんだ?」
「規則に雁字搦めの身動きの取れない状態で、民衆に不満が溜まっていたんだ。そこにロウが現れ、彼らの支持を集め、政権を奪取した。正に武力革命だね。」
「ふむ、俺の世界でもあったことだな。ただ、そうすると民衆は今の体制を変えることを望んでいないんじゃないか。」
「確かにそうだね。大半の民衆は、現状に不満がない。ただそれは最善とイコールではない。」
「力がない者の処遇だな。」
「そのとおり。今の状態は、力の無い少数の者を犠牲にして、維持されているものに過ぎない。そして、彼らには声を上げる力もない。」
「それを汲み取れということか。」
「まあ、率直に言えば、そういうことになるね。」
「ただ、俺が持っているのは俺の世界の知識だけだ。俺の世界だって、少数者が完全に救われていたわけじゃない。」
「それでも構わない。さっき、最善と言ったけど、ベストなんて存在しないことは神様であるボクだからこそわかっている。いつでもベターしか存在しないし、だからこそ常に改善を図る必要があるんだよ。」
「流石、自称神様の言うことは違うな。」
「本物の神様を茶化さないでよ。」
「確かに法律の存在しない現状に、レゾンデートルを侵されかねない俺にもメリットのある話だ。その話、受けよう。チート能力付きの生き返りという対価も、先履行でもらってるしな。」
「じゃあ、頼んだよ。方法は任せる。」
「最後に一つ、聞かせろ。」
「ん、なんだい?」
「なんで生き返らせたのに傷を治さなかった?」
「魔法のチュートリアルとしてはちょうどいいだろ。」
こいつ、ヒントのないチュートリアルで、どれだけ今のちみっ子たちが脱落してるか、知らないのか!?俺がファミコン世代でなかったら、せっかく生き返ったのに、速攻で死んでたぞ。
「あと、もう一つ」
「ん?質問はさっきので、最後じゃなかったの?」
そうだった。俺は、最後の質問と言いながら、一問で尋問を切り上げない奴、嫌いなんだった。ただ、それでも聞くべき質問を聞かない奴はもっと嫌いだ。最後の証言が、補充しないといけない場合もあるしな。ただ、今からしようとする俺の質問は、どうでもいいっちゃどうでもいいことなんだが…
「次いつ会えるかわからんし、会いたくもないから、とにかく聞かせろ。今となっては、些細な問題だが、なぜ俺は法服を着て転生した?裁判官なりたての頃は、浮かれて着たまま外に出たこともあるが、刺された時はさすがに着てなかったはずだぞ。」
あの当時は他人の目線も気にならなかったが、俺の黒歴史だ。魔法使いのマントに見えなくもないから、コスプレだと思ってくれていたらいいが…
そんなことを考えてると、奴はこれ以上ないくらいの笑顔でこう抜かすのだった。
「そっちの方がコスプレっぽくて、雰囲気出るだろ?裁判官さん。」
そう言うと、 自称神様は目の前から消えた。
そこで、俺は目を覚ました。
あいつ、俺のトラウマえぐりやがって、一発殴らせろ!神様なんて人じゃないんだから、傷害罪も適用されないだろ。
それに、仕事を丸投げする出来の悪い上司みたいだったな。せめて押さえるべき最低限のポイントだけは示すべきだ。
ただ、最終目標の提示と、そこに至る過程に細かく口を出してこないことの保障があるだけでも、最悪ってわけではない。途中でごちゃごちゃと口出ししてくる、最悪な上司もいるからな。
さて、奴のためっていうのは癪に障るが、俺の自己満足な理想のためにも頑張ってみますかね。
自分が好きな、ラノベのテンプレ的展開。
ちなみに今回のサブタイトル、哲学用語なんですね。よくわからず使ってました(笑)




