表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裁判官がもし異世界に転生したら  作者: のりまき
ヴィレッジ編
13/31

そこは絶対に外せない

イメージ的にはゲームに出てくるやつ。持ってる物はアレンジしてますが、一からデザインする人って凄いよね。

仕込みを終えた俺は、ライに封印石の設置場所まで案内させる。

レイアも一緒だ。


封印石は、森奥深くの台座の上に設置されていた。

封印されたモンスターを少しでも遠ざけたいという心理だろう。


ただ、肝心かなめの封印石にヒビが入り、今にも割れそうだ。

監視もおかずに、このまま封印が解けたらどうするつもりだったのだろう。


リスクはなるべく考えないようにする、人間心理の悪い癖だ。裁判に来る案件は、他人から見れば、普通そんなリスク考えて行動するでしょう、というものも多いが、当事者視線からするとこんなものなのだろう。封印石が割れても、対処のしようもないしな。


「新しい封印石も壊れちゃったのに、どうするの?」


ライが不安そうにオレに問いかける。


「こうするんだよ。」


俺は手に持った杖をヒビの入った封印石に叩きつけると、封印石はパリンと小気味良い音を立てて割れた。


「何してるんだよ。そんなことしたら!?」


「借金返済期限まで時間ないし、ちんたら待ってらんないよ。」


封印石の割れた箇所から煙のようなものが吹き出してきて、1箇所に集まって形を成していく。


封印石の中に封じられていたモンスターだろう。


「レイア、確認だ、封じられていたモンスターはなんだ。あと、素材と討伐証明の部位だけ教えてくれ。」


「サイクロプスという一つ目の巨人鬼よ。顔の一つ目が素材、持ってる木槌が討伐証明部位、肉は食べられないわ。」


「顔と木槌以外は粉微塵にしてもいいってことか。」


「ええ、できるなら、といったところかしら。」


煙が段々と具現化していく。大きさは、ざっと5メートルといったところか。確かに、これを粉々は無理そうだ。


「なんでそんな軽口叩くだけの余裕があるのさ。逃げようよ。」


ライが、今にも倒れそうな面持ちで声をかけてくる。


「どこへだ。それに新しい封印石を割ったのは、お前だ。責任からは逃れられないぞ。」


「古い封印石割って、実際に封印を解いたのはあんたでしょ。」


「ああ、だから責任取るのに付き合ってやる。」


「だめだ、完全にイカれてる。お姉さん、あんたならなんとかできるでしょ。なんの手立てもなしに封印石を売りに来ないでしょ。」


「確かにそうね。使い捨ての道具だけど、ここから緊急脱出することはできるわ。でも、無駄遣いは趣味じゃないの。」


「あいつは頼りにならないし、お姉さんだけが頼りなんだ。」


「そう?私、投資商品ひとを見る目はあるのよ。」


後ろから不穏な言葉が聞こえる。助けてくれなんて言えない。むしろレイアには付き合ってもらって感謝したいぐらいだ。


商人見習いとはいえ、プロを名乗る以上、プライドを持たないといけない。情けをかけて損を被ったら、それは商人として失格だ。


ただ、目の前で窮地に陥った人間を、プライドにかこつけて見捨てる奴は人として失格だ。


そして、俺は今、窮地になど陥っていない。


だから彼女の選択は正解なはずだ。いや、オレが正解にしてみせる。


目の前の煙は、既に一つ目の顔を形成し、分厚い緑色の胸板と、3メートルはあろうかという木槌が徐々に現れてくる。


杖での殴り合いは、リーチの差で負けそうだ。そうなると飛び道具で勝負するしかない。


「おい、ライ、俺に応援の一つでもよこしてくれないのか。」


「こんな時にそんなことできないよ。」


「こんな時だからこそだ。」


「じゃあ、勝ってよ、まさ。」


「おう、任せろ。」


覚悟完了。ショタコンの気持ちがわかる気がするな。


俺は、杖を奴の胸板に向けて、想起する。イメージは大砲だ。もう、奴は膝まで具現化し、一つ目はこちらを睨んで今にも動き出しそうだ。


「レイア、風を飛ばす魔法はあるか。」


「風を飛ばす魔法?そんなのでいいの?普通は、ウサギに飛ばして、気絶させるくらいにしか使えないわよ。」


「それで十分だ。そいつの呪文は。」


「エアブラストよ。」


「わかった。」


ついに、足の先まで具現化し、サイクロプスは右手の木槌を振り上げる。あれに当たったら、死にはしないだろうが、痛そうだ。


だが、遅い。


「エアブラスト!!」


オレは、照準を定め、力ある言葉を放つ。


「な!」


ライが驚きで目を見開く。奴の胸板には、直径1メートルを優に超える風穴が開いていた。そして、そのまま真後ろに倒れる。


ズン!!


心臓が頭とかにでもない限り、即死だろう。モンスターが、動物と同じ構造しているかは知らんが。


「ほら、言ったろ。任せろって。」


「そんなの信じられるわけないじゃない!?でも、本当にやっちゃった。まさは一体何者なの。」


「異世界の裁判官さ。」


「異世界の裁判官って、強いんだね。」


こうして俺は、日本の裁判官の誤解を生みつつ、一仕事を終えたのだった。


さて、ここから仕上げといきますかね。


数少ない戦闘シーン。自分に緊迫した殴り合いの描写とか無理っす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ