勇気をくれる承諾
書き足していたらなぜか更新されていなくて、ショック…
レイアは、俺が真剣だと悟ると頷いてくれた。
「わかったわ。」
「じゃあ、俺は、レイアと契約し、誓う。俺がレイアを守ると。」
「私も、武神様の名の下に、まさに誓う。私はまさの守護に報い、私のありったけの知識を与えると。」
それは、契約というのもおこがましい、稚拙な約束。
それでも、それはこの世界での俺の人生の第一歩であり、未来を確信させるに十分なものだった。俺はこの契約があれば、この世界で頑張っていけると。
できれば裁判官としてやっていきたいけど、法律がないんじゃなあ…
しばし、湧き上がる感激と若干の淋しさに身をゆだねる。
そうだ、そうだ、契約したら、忘れちゃいけない。余韻に浸ってた俺は、再起動し、レイアに話しかける。
「可能であれば、これを書面にしたいんだけど」
日本では口頭でも契約は有効だけど、書面化していないばっかりに裁判に負けたり、はたまた、裁判にさえ行き着けない事例はごまんとある。
レイアが契約を一方的に破棄するとは信じられないけど、気持ちの問題で、このちっちゃいけど愛おしいものを形に残しておきたい。
でも、契約書のタイトルをしれっと婚姻届にしたら、 結婚詐欺師としてレイアに嫌わわれるんだろうな…
「コントラクティアの魔法があればいいんだけど。第一級商人しか使えないから、見習い商人の私には使えないわ。後で、旦那様の元で作りましょ う。」
コントラクティア?興味はあるが、いずれ見れるのであれば、急ぐ必要はないか。
「わかった。ところで、さっきの武神の名の下に誓っていたけど、こちらの宗教はどうなってるの?」
「ロウ様の治世以前は、創世神で、秩序を司さどる神様を崇めるルーレ教が国教だったけど、ロウ様の治世以降は廃れてしまったわ。 今は、武神様を崇めるパワード教が主流ね。私が誓ったのも武神様よ。まさの世界は違うの?」
俺は緩い神道だけど、パワード教って、いかにも脳筋そうだし、創世神なのに、自身の宗教を廃れさせてしまった神様の顔を拝んでみたいぜ。
「国によって様々だけど。俺の国では、八百万の神様がいるぜ。」
「八百万!? そんなにいて、 全部覚えられるの?」
「俺は、一人の神様が宿る物によって、形を変えているだけだと解釈しているけど、神道という名の俺の国の宗教は、万物に神様が宿るというアニミズムに近い宗教観だな。 だから、全部覚えるまでもなく、全てに感謝を捧げるんだ。」
「じゃあ、まさの国にも武神様はいると考えられるのね。」
「そうだな。普段は意識しないけど、武道と言って、武術と神道は関係していると考えられるし、武術を司る神様もいるはずだよ。」
「素敵ね。さて、帝都までの中間の村が見えてきたわ。私の元々の目的地よ。その途中でモンスターに襲われてしまったというわけ。」
「ヘー。なんの用事だったの?」
「旦那様のお使いよ。封印石を仕入れて、この村に卸しているの。これがさっき言ったコントラクティアで作った、この取引の契約書よ。」
そう言って、契約書を目の前で見せてもらうが、知らない言語で書かれていて、内容が読めない。興味はあるが、取引自体は俺に関係ないし、今は村に封印石が必要な理由の方が気になる。
「封印石? 何か、その村に封印されているわけ?」
「今から30年ほど前に、あるモンスターが封印されたと聞いているわ。高価な素材が取れる上に、村の懸賞金がかけられて、冒険者が殺到したらしいけど、誰も倒せなくて、封印するしかなかったみたい。」
「ロウって奴はめちゃくちゃ強いんだろ。そいつが討伐すればよかったんじゃないか?」
「ロウ様はモンスターが封印された後にこの世界にいらしたのだけれど、モンスターには興味がないらしくて、わざわざ封印を解いてまで討伐するつもりはないとおっしゃってそのままよ。」
「ふーん。」
非情だと思われるかもしれないが、藪蛇になるかもしれないから、ありえない選択肢ではない。ただ、理由が興味ないからって、お子様みたいな野郎だな。俺は、子供は好きだが、子供みたいな大人は嫌いだ。
ん?そういえば、モンスターが封印されたんであれば、新しい封印石はもう必要ないのでは?
「じゃあ、村に封印石はもうあるんだろ。なんで新しく卸す必要があるんだ?」
「封印石の効力は長く続かなくて、毎年更新する必要があるの。30年前からだから、古くからのお得意様と言っていいわね。まあ、村の人にとっては痛い出費でしょうけど。」
確かに賃貸借契約の更新料が毎年かかったら結構な額になるな。そういえば、一度、親が更新料支払い忘れてて、家を追い出されそうになったことがあった。
さすがに封印石の更新が忘れられたりすることはないだろう。毎年代金を支払うのは大変だろうが、命がかかってそうだし。
「それで、その封印石はいくらするんだ?そもそもこちらの物価もよくわからないが。」
「およそ200ルクでパン1個買えるわ。 封印石は100万ルクで、馬1頭分くらいね。これが1万ルク金貨よ。」
そう言って、レイアはおそらく金貨が100枚以上入っているであろう袋から1枚取り出し、俺に見せてくれる。その金貨には、ロウのものと思われる肖像が描かれていた。山賊みたいで強そうだが、知性と治世の方はどうなっているんだろうね。
物価は、1ルクが1円くらいか。人口規模や経済状態も様々だろうが、村というからにはそれほど大きくないだろうし、村人全員で1年に1回払えばいいとしても、100万円は少なくない金額だ。
そうこう言っているうちに村は目の前だ。
村は、大きな高校くらいの広さに、藁葺きの家屋がいくつかあり、その周りが柵で覆われている。1箇所だけ柵が途切れている場所があるが、そこが村の入り口だろう。
さて、第一村人との遭遇だ。何が待っているのやら。
この後、ようやく登場人物が増えます。
ついでに次回は主人公とパロディの元ネタ紹介をくっつけたいと思います。




