42、幸せな夢の先へ(終)
私の前で歯を見せて笑うグロリア。
感極まって泣き出した私を見て慌てるグロリア……。
駆け出して抱き着けば受け止めて抱きしめ返してくれる。
「グロリア! グロリア、成功したって……ううっ、本当に?」
「本当だぞ。術士殿にも確認してもらった。わたくしは、今度こそ本当に帰ってきたのだぞ!」
「よかった、ううっ、グロリアおかえりなさい!」
「あぁ、ただいまアマリア」
抱きしめあって二人で泣いていると、私達二人を包んでくれる温かさに姉がそっと私達を抱き寄せてくれた事に気づいた。目に浮かぶ涙もそのままに三人でそのまま泣いていた。
「よかった……おかえり、私の妹グロリア」
「はい。ただいま戻りましたユリアナお姉様」
静かに喜びが部屋の中に広がっていく。この嬉し涙はここから広がって天に届く。晴れているなか降っている光を含んだ雨が幻想的で、雨が止めば空には虹が架かる。あの時の悲しみを含んだ雨とは違い、優しさが降り注ぐように光り輝いていた。
ようやく取り戻した日々も忙しさであっという間に過ぎていく。あれから二年、爽やかな夏の風が吹くフェルンの地はあちこちで祝福の声が上がっている。
「アマリア! 綺麗だぞ!」
「もう、グロリアったら。ふふっ、ありがとう」
今日、私はエドヴァルド様と結婚する。真っ白なウエディングドレスに身を包み静かに控室で座って待っていたら、グロリアが部屋に飛び込んで来た。母や姉、ヒルダ様に囲まれたそこにグロリアも加わった。
「宣言通り、わたくしはアマリアの結婚式に参加するのだ!」
「有言実行ね、グロリア」
あの長い十四年という歳月を取り返すようにグロリアは積極的に活動していた。まだ監視は取れないが最低限になっており、ヴォワザン王国での日々が綴られた手紙がよく私に届けられていた。
「アマリア様、お時間です」
メーリが呼びに来てくれて、一緒に来ていた父の腕に手をあてる。父は娘の結婚式は二回目だが、すでに目を潤ませていた。
「お父様、私は幸せ者です」
「私も幸せ者だよ。こんなにかわいい娘がいるのだから。でも、これからは彼に幸せにしてもらいなさい。そして、おまえも彼を幸せにしてあげなさい」
「はい」
扉が開いた先で待つ最愛の人。式典用の白い騎士服に身を包んだ彼の手に私の手が渡される。
厳かに式が進んでいくこの空間にすすり泣く声が響いてベールの中でこっそり笑ってしまった。
「あのジジイも義姉殿も相変わらずだ」
「でも、お二人らしいでしょう?」
呆れているエドヴァルド様にそう言えば、それもそうかと笑っている。
ベールが上げられ、彼の大きな手が私の頬に触れてそっと撫でる。くすぐったさと少しの恥ずかしさに照れてしまって目を合わせられない。
「こっちを見て」
「はい」
「神にも誓ったが、あの時アマリアに誓ったあの言葉を違えるつもりはない。愛しているよ」
「エドヴァルド様……私も愛しています」
誓いの口づけは優しく、離れた後も彼が見つめるその瞳には幸せでいっぱいの私が映っている。
この青紫に惹かれたのが始まりだった。
あの日を思い出しながら歓声と拍手の中、外に出れば眩しいくらい晴れ渡った空に色とりどりの花が舞い上がっていた。私の手にある花嫁のブーケを飛ばせば、そこには空と私の大好きな青紫が重なって天高く舞っていった。
数年後、フェルンの大地を訪れるひとつの家族の姿があった。
手を振って少女のように快活な笑顔を浮かべて駆け出す女性。
それを軽く手を振って嬉しそうに迎える女性。
夢を叶えた彼女達はそれぞれ違う道を歩みながらも、いつだって繋がり合っていた。
そして幸せな夢は大きくふくらんでいき、仲の良い双子の姉妹は今もこれからも追いかけていく。
これはかつての公爵令嬢が追いかけた幸せな夢の物語。
そしてこの物語はずっと先まできっと――。




