第十一話「あわあわ、あわやの大げんか!?」「いやいや、妖魔がやってくる!」
チヤの生家。
ユキたちの住む舞白市から、いくつもの県を隔てた地方にあるこの家の外壁が、突如爆散した。
いまだ痛々しい焦げ跡の残る一階の壁が、地獄の炎をまとった轟音とともに弾け散る。
コンクリート片や鉄筋をいくつも宙に吹き上がらせる爆風。その中から、巨大な黒い影が空へ飛び上がった。
金属の板でも切り裂くような、甲高い怪鳥の鳴き声を尾のように引きながら、黒い影はみるみるうちに小さくなっていく。
やがて、宙に吹き上がった建材の破片が、すべて地面に落ちる頃になって、あたりはもとの静寂を取り戻した。
「いたたたた……」
黒い影がチヤの生家に穿った大穴の、その一番奥で、前戸レイヤは頭をさすっていた。彼の周囲では、人骨を巻き込んだ鮮血の渦が、彼を守るようにして回っている。
「血盆穢渦」の術――「大慈獄卒秘授巧経写本」の外典の章に記された、血の池地獄を招来する術をとっさに放つことで、レイヤはからくも命を拾っていた。
(血の池の渦であの炎をさえぎっていなければ、あの妖魔にしてやられるところでした)
鼻元から落ちかかっていたフレームレスの眼鏡を、元の位置に戻しながら、レイヤは今の状態を再確認する。
チヤの生家に封印されていたあの妖魔は逃がした。しかし、先ほど確認した資料の大半は、まだ無事に残っている。これを回収さえすれば、滅魔師連盟の連盟長より命じられた使命は、完了できるだろう。
あの巨大な妖魔が、地下室を吹き飛ばしながら地上に出たために、今や地下室まで直接日の光が差し込むに至っているが、今はそれも幸い。太陽の光で妖気が抑えられ、スマートフォンがもう一度使えるようになっている。
(この状況、まず僕が連絡するべき先は……)
チヤを預かっている退魔師連盟側か。はたまた、任務を命じた滅魔師連盟側か。
レイヤは一瞬だけ逡巡し、後者の選択肢をとる。これほどにまで状況が動いたなら、一度滅魔師連盟の連盟長に報告せざるを得まい、と考えて。
スマートフォンに電話番号を打ち込んだなら、すかさずレイヤは耳を当てる。
(それにしても、先ほどのあの妖魔の影……一瞬しか見えませんでしたが……)
スマートフォンのコール音を聞きながら、レイヤはあの妖魔の姿を思い出していた。
もし、あの姿に見間違えがないのであれば――とそこまで思い浮かべたところで、スマートフォンが繋がる。
「――こちら大獄正の前戸レイヤです。ザンエ連盟長をお願いします」
滅魔師連盟の連盟長の名前を口にするレイヤの目の中では、一抹の不吉な予感が揺れていた。
□□
「~~~~♪」
とってもいい天気に恵まれた舞白市の商店街の中を、わたしは鼻歌交じりに歩いていた。
(ニンニクラーメン♪ ニンニクラーメン♪)
これからわたしが食べに行こうとしている大好物の名前を、心の中でも歌いながら歩道をスキップ。肩出しのニットと桜色のプリーツスカート、それとサンダルを身に着け、いつものお気に入りの格好をしているわたしの体は、どこまでも軽い。
この町の商店街にあるラーメン屋さん「肉肉軒」のラーメンは、わたしの大のお気に入り。このお店で出してくれる、ニンニク一株が丸ごと入ったニンニクラーメンが、わたしにとっての一番の大好物!
でも、それを食べに行こうとしているわたしに対して、「ワタシ」はいつもの通り、げんなりしていた。
(つくづくあんたも飽きないわねえ……あんなニンニクの丸ごと入ったゲテモノを、好きこのんで食べに行くなんて)
それも当たり前と言えば当たり前かもしれない。なにせ、「ワタシ」はヴァンパイア……ニンニクが苦手なことで有名な妖魔だもんね。
(いい? ニンニクラーメンを食べたらちゃんと……)
(……ちゃんと口臭ケアをして、歯を磨いてから「ワタシ」に替わること、でしょ? 大丈夫だよ、もう何度も言われてるし覚えてるもん)
(その言葉、忘れるんじゃないわよ。ったく、昨日絡新婦を逃がして怒られたからって、気分転換にかこつけてラーメンを食べに行くって発想はふつう思い浮かばないでしょうに)
そう。昨日わたしと「ワタシ」は、あの絡新婦の子グモたちを、あえて逃がした。
わたしたちの家……こと、退魔師連盟本部に帰ったあと、わたしはさすがに黙っているわけにはいかず、退魔師連盟の連盟長であるパパにだけは、そのことを伝えた。
本来ならば祓うべきである絡新婦をそのまま逃がしたことを知ったパパは、怒り半分あきれ半分といった様子だった。
パパは最初、わたしが任務に背いたことを責めはした。けれど、最後には「お前にこの仕事を依頼した私にも、この件の責任がある」と言い、追ってこの件のわたしの処遇を決める、ということで、話は収まりかけたのだけれど――。
「――あ! 肉肉軒だ!」
「ワタシ」の、「いや待ってまだ話は続いてるでしょ!」という内なる声を無視して、わたしはいつもの見覚えのある看板に目が釘付けになった。
毛筆で書かれたようなペンタッチの「肉肉軒」という文字を見た途端、わたしの口の中には生唾がドバっと湧いてくる。
さあ、パパに叱られたあとの気分転換に、あの天国のような香りのニンニクラーメンを口いっぱいに頬張り――
(……頬張りに行けるのかしらね? この状態で)
「う……うそでしょー!?」
――に行く空想をしながら、絶望のあまりわたしはその場で膝を折った。
「本日、近所の断水工事につき、臨時休業とします」とかかれた張り紙が、無情にも肉肉軒の入り口にくっついていたから。つまり、わたしは今日、大好物のニンニクラーメンを食べられないことが、このとき決まった。
(やだー! あの弾けるニンニクフレーバーを楽しめないなんてやだー!)
わたしはわたしの胸の内で、涙を滝のように流していた。でも、その様子を「ワタシ」は面白そうにニヤニヤと見ているだけ。
(あら、臨時休業ならしょうがないわねぇ。それじゃあ、今日はニンニクラーメンの代わりにトマトジュースで乾杯と行こうかし……)
(そんなのもっとやだー!!!)
トマトジュースなんて、わたしの一番嫌いな飲み物じゃない! そんなので乾杯なんてしたら楽しいのは「ワタシ」だけでしょ!
わたしは心にそう声を響かせるけど、でも「ワタシ」はどこ吹く風だ。
(そういえば、今日はやけに商店街の人通りが少ないと思ったら、断水工事があったのね。よく見回してみると、今日はシャッターが下りてる店が多いわ)
かろうじて涙で潤んでいる程度で押しとどまっているわたしの目に映る光景は、「ワタシ」も見ることができる。その視界の端の光景を、「ワタシ」は指しているらしい。
わたしも涙を袖でぬぐって、その場で立ち上がって辺りを見回す。
確かに、今わたしがいる肉肉軒の周りに出ているお店は、ほとんど臨時休業だ。隣のレストランも、和菓子屋さんも。
それからこの肉肉軒の向かい側にあるケーキ屋さんの「フルール・シュクレ」も……
(げえっ!?)
後ろに振り向いたわたしの目に映る光景に、「ワタシ」は女の子が上げてはいけないようなたぐいのうめき声を上げた。
それもそのはず。だってこのケーキ屋さん「フルール・シュクレ」の前には、何とチヤちゃんが立っていたのだから。
「舞白市観光ガイド」と書かれたパンフレットを右手に持ったチヤちゃんは、まさに最悪の気分といった様子で顔をしかめた。
「……今日このお店のモンブランを食べに来ようと思って来たら、臨時閉店の上にまたあんたらと鉢合わせするなんてね。今日は厄日だわ」
チヤちゃんは、手の中のパンフレットをぐしゃりと握り潰して、吐き捨てるように言った。それもそのはず。わたしたちとチヤちゃんは、昨日のことで大ゲンカをしたばっかりなのだから。
話は昨日のパパからのお説教に戻る。わたしたちが絡新婦をわざと見逃したことについて、処遇は追って決めるとパパから言われ、話が収まろうとしたその時に、チヤちゃんは帰ってきた。
間が悪いことに、チヤちゃんはわたしたちの話を途中から聞いていたようで、わたしとパパの話がひと段落したところで、ふすまを開けてわたしたちの話している場に入って来るや否や、いきなりわたしの胸倉をつかみ上げてきたんだ。
(あんたは甘っちょろいだけじゃなく、私の足まで引っ張るつもりなのかしら?)
南極の氷のように冷たい目線で、わたしを刺してきたチヤちゃんは、すぐさまパパが割って入らなければ、その場でわたしに向けてリンフォンの「熊」の「爪」を振るっていたかもしれない。それほどまでに、チヤちゃんは激怒していた。
チヤちゃんは何とか、パパがわたしに対してしかるべき処遇を行うことを約束し、その場は何とか押さえてはくれた。でも、その日の夕飯の席では、チヤちゃんは「いただきます」と「ごちそうさま」の二言以外は何もしゃべらなかったし、今日の朝だって、私と並ぶことなく小学校にだって行ってしまった。
放課後の今になるまで、チヤちゃんはわたしたちと一言も口を利いてくれていない。そんな状態だからこそ、「ワタシ」は「げえっ!?」なんて言い出すわけで……。
わたしも、あまりの気まずさにわたわたとなりそうになって、だけれど何とか何か言おうとする。
「『フルール・シュクレ』のモンブランって、このあたりじゃおいしいって評判だからねー……ええっとそれから、チヤちゃんってもしかして栗のお菓子が好きなの? 最初に出会ったときも栗まんじゅうをおいしそうに……」
がん! という乱暴な音を立てて、チヤちゃんは近くにあったゴミ箱に、くしゃくしゃになった観光ガイドのパンフレットを突っ込んだ。
「黙ってなさい。あんたみたいな腑抜けの声を聞いてると虫唾が走るのよ。塵芥ほどの価値すらない慈悲心を、妖魔ごときにかけてやるなんて」
「で、でも聞いてよチヤちゃん。やっぱり生まれたばっかりの絡新婦なら、人を食べないって約束もちゃんとしてくれてね……」
「黙れって言ってるのが聞こえないのかしら? それとも、『黙れ』っていう日本語の意味が理解できないほど、あんたは頭が悪いわけ? そのザマじゃあ、国語の授業の成績はさぞ惨憺たるありさまでしょうね」
「…………」
取り付く島もない、とはまさにこのこと。わたしは必死に作った笑顔の口元を、ただぴくぴくさせるほか、ない。
チヤちゃんは、そんなわたしにかかずらうことなく、心底不愉快そうにきびすを返した。
建物と建物の隙間の、裏路地の前まで歩みを進めたとき、吐き捨てるようにして、こう言い残していく。
「退魔師のくせに、体の中に妖魔を一匹飼ってるから、妖魔に肩入れしたくなるんでしょうね。まともな退魔師になりたいんなら、その薄汚い半身をさっさと切り捨てたらどうかしら?」
ぷつん。
わたしの奥底で、「何か」が切れる音が響いた。
□■
「いい加減にしろ――」
真昼の太陽に背中が焼かれるのも気に留めず、ワタシはその場で地面を蹴りつけた。
「――この根暗女ァッ!!!」
反吐の出るような寝言をほざく目の前の女――チヤの首根っこをワタシの右手でつかみ上げて、そのまま建物の隙間の路地裏になだれ込むために。
ワタシのこのヴァンパイアの体は、直射日光に晒されればたちまち焼かれてしまう。けれども、昼下がりのこの時間帯なら、路地裏にまでは直射日光は届かない。つまりここなら、たとえ昼でもワタシが表に出てこられるということだ。
ワタシとチヤは、そのまま路地裏に転がり込んだ。
「――その汚らわしい手で私に触れるな、妖魔風情が」
ワタシの右手は間違いなくチヤの首根っこを狙っていた。だが、昨日も見た漆黒の手甲が、それよりも早く割って入っていた。ワタシの右手と、チヤのリンフォンに覆われた右手は、互いにスクラムを組む形となっている。
ワタシは、ヴァンパイアの肉体に秘められた怪力を右手に込めながら、口元から犬歯を覗かせ、チヤにすごむ。
チヤの深くよどんだ目は、それでも小揺るぎもしていなかった。
「どうせあんたも、人間の方の人格をいつか乗っ取って、その体を一人占めして悪さをするつもりでしょう。だったら今私が、この場であんたを滅してやるわ」
チヤのリンフォンとスクラムを組み、お互いの顔を見合うほどの近距離になると、不気味なうめき声がかすかに聞こえる。
リンフォンから伝わるこの不気味なうめきを無視して、ワタシは笑みを浮かべた。
憫笑――つまり、憐れみの念を浮かべた笑みを。
「あんた……それ、『わたし』の事を言ってるつもり? だとしたら、二つ間違ってるわ。――フルクフーデ!」
ワタシは、血の盟約を結んだ大コウモリに呼びかけた。太陽に一瞬焼かれて、その後再生を始めているワタシの背中から、コウモリの群れが吹き上がった。
それが、一体の大コウモリになり、チヤの背後で実体化する。
「御意」
重みのある低い声で言った大コウモリは、チヤの背中から襲いかかる。
チヤは一つ舌打ちをしながら、リンフォンを装備した左手を向けてフルクフーデの迎撃を試みる。
そこでワタシは、すかさず両手でチヤの右手をつかみ上げた。そのまま、チヤを真上に放り投げる。たとえリンフォンで腕力が増幅されていても、片腕だけではヴァンパイアの腕力にかなうはずもない!
戻ってきたフルクフーデを肩に乗せ、真上に投げ出されたチヤを見ながら言う。
「一つ目の間違い。ワタシと『わたし』は二人で一人。生まれたときから一緒の『わたし』を、ワタシが追い出したり乗っ取ったりすることなんてないわ。ワタシと『わたし』は、今までもこれからも、共に鵠野ユキなんだから――!」
チヤは、怒りを爆発させながらリンフォンの「熊」の「爪」を建物の側面に突き立て、落下の速度を殺そうとする。けれども、そこはいまだ空中――ワタシの主戦場だ!
肩に乗った大コウモリのフルクフーデが、ワタシの肩から背中へと吸い込まれた。そこに残るのは、フルクフーデの翼のみ。
今やワタシの背に生える翼と化したフルクフーデを羽ばたかせて、ワタシはその場を跳んだ。
空中で拳を固めながら、ワタシは落ち行くチヤに言う。
「そしてもう一つの間違い。それは『わたし』が――」
自分が見下しているはずの妖魔風情に手玉に取られた悔しさと怒りの余りか、悪鬼のような形相を作るチヤ。彼女とワタシの影が交錯する、その瞬間。
「!!!!!!」
金属を切り裂くような、怪鳥じみた雄叫びが、商店街の表通りから轟いた。
それと同時に、何か巨大なものが地面に衝突する音と地響きが、辺り一帯を支配する。
思わず毒気を抜かれたワタシは、チヤを殴るはずだった拳をほぐして、そのまま地面に着地した。
チヤも一拍遅れて、リンフォンで建物の壁を引っかきながら着地する。
「……これもあんたの仕業かしら? ユキ」
あくまで当てこすりをやめないチヤの態度に呆れながらも、ワタシはそれを否定した。
「そんなわけがないでしょ。何でもかんでも人のせいにするなって、あんたの大好きな学校のお勉強で教わらなかったのかしら?」
ちくりと皮肉を向け返すワタシ。その奥底で、「わたし」の声も聞こえる。
(ねえ、「ワタシ」。これは間違いなく妖魔の放つ妖気だよ!)
(ええ。今日は商店街の人通りが少ないわけ、どうやら断水工事だけが原因じゃなさそうね)
ワタシは、「わたし」と心の中で、同じタイミングでうなずいた。
妖魔がまとう妖気は、濃くなればそれにより機械や電子機器などを狂わせ、まともに動かなくさせてしまう作用もある。
それだけじゃなく、妖気は濃くなれば濃くなるほど、人間が「何となく近寄らなくなる」という力――人払いの暗示の力すらも秘めている。
おそらく、断水工事に加えて、この強大な妖気の接近があったからこそ、今日は舞白市の商店街に、ほとんど人が通らなかったのだろう。
(あの鳴き声が聞こえてきたのは、日の当たる方向ね。さすがに向こうだとワタシが出るのは無理だし、また「わたし」に出てもらえる?)
(うん。任せて!)
(やれやれ……チヤにもう少しお灸をすえてやろうとしたところでこれとは、興覚めね)
ワタシは、改めて「わたし」にこの体をゆだねた。
■□
「!」
先に路地裏から出たチヤちゃんを追って、わたしも商店街の表通りに出た。
そこでの光景に、わたしは言葉を失った。
「!!!!!!」
その妖魔は、思わず耳を塞ぎたくなるような甲高い鳴き声を上げていた。
妖魔の見た目は、鳥に近いように思えた。だけれど、鳥というにはあまりにも体が大きすぎる。見たところ、小さい頃パパに連れて行ってもらった動物園で見た、象と同じくらいの大きさがある。
その全身には、見つめていると目が痛くなりそうな、赤と紅と朱と緋色の羽が生えている。口から生えたくちばしは、まるで鋭い刃物のようなぎらぎらした光を放っている。
この巨鳥の妖魔は、地面に落ちてからあちこちでのたうち回っていた。道路のそこかしこに、今しがた作られたようなくぼみが出来上がっている。
けれども、そのうち巨鳥の妖魔は落ち着いたのか、人間の何倍もの大きさのある二本の脚で、地面に立った。
その目から放たれる、恐ろしい執念を秘めた光が、わたしとチヤちゃんを射抜いた。
(冗談キツいわね……まさか、白昼堂々現れる妖魔なんて!)
わたしの中の「ワタシ」が言うけれども、それはわたしも同感だった。
妖魔が昼間から現れると、わたしたち退魔師がそれを隠すの大変だっていうのもあるけれど、本当の問題はそこじゃない。
妖魔のまとう妖気は、太陽の光のもとだと程度の差はあれ、抑え込まれることになる。「ワタシ」の体が直射日光に触れると、たちまち自分の身を守る妖気を失い、それが火傷につながるのも、これが原因なんだ。
だから妖魔は、大抵の場合日の光を嫌うし、日の光の下では十分な力を出せない。ときには、日の光だけで命を失う妖魔だっている。
「……太陽の下に出てこれる妖魔、ね。歯ごたえがありそうじゃない」
そう。チヤちゃんが言う通り。
だからこそ、昼間のうちから活動できる妖魔は、太陽の光で妖気を抑えられても、それをものともしないということになる。ほぼ間違いなく、強大な力を持っていると見ていい。
「……で、あんたはこいつも見逃すつもり?」
わたしは、今度は首を横に振る。この妖魔は、あの生まれたての絡新婦たちなんて目じゃないくらい、危険な妖魔だから!
「だったらせいぜい、私の足手まといにはならないことね!」
チヤちゃんは、その言葉を置いて行って、巨鳥の妖魔めがけて駆け出して行った。




