第7話「俺の覚悟と決意」
リアルの日常はそんなに何も変わらない。変わらないように俺はした。
だけど俺が投稿している作品が総合1位に輝いている間に色んなメディアから取材の申し込みがあった。今俺が体感しているかもしれない事実は色んな国々のネット記事で話題になっている事だ。そりゃあ格好のネタになるだろう。
でも俺は断った。何かが壊れてしまいそうな気がして。
「悟、もう俺の事を取り上げてくれるのを止めてくれないか?」
『えっ? 何で? ノリノリで絶好調じゃないか?』
「ああ、お陰様で。でも俺は何か間違っている気がしてさ」
『何を間違っている? 彼女のことが好きな自分を貫けばいいだろう?』
「お前さ、玲さんとも連携をとっていると言っていたな?」
『ああ、そうだ。でも、それはお前も承知している事だろう?』
「だからこそ、お願いしたい事がある」
俺は改めて俺の応援企画の停止をお願いした。それはその後の玲さんとの通話でも。悟も玲さんもあまり納得してくれないようだったが、俺がこう告げる事で納得するしかなかった。
「もう一度、彼女と向き合って彼女に想いを告げる。それで終わりにしたい」
俺は何か間違っている気がしたのだ。勿論、応援してくれることは嬉しいこと。それも数え切れないほどの人たちに。自分の投稿する作品が夢のように読まれることだって嬉しくないワケじゃない。でも、それは俺だけの為にあるものだ。
俺は俺の想いのままに『今日もあなたに会いにこのコンビニに来ました!』も削除した。小説投稿サイト「小説家になろう」の界隈は騒然としたらしいけど、俺は清々しい気持ちになれた。
だって俺が手にした成功で彼女が何を手に入れるっていう?
玲さんが玲さんの言う長谷川美佳さんの写真をみせてくれた。
そこで俺はわかったのだ。俺が惚れてしまった長谷川さんと玲さんの親友なる長谷川さんが同じ人物であることを。そして長谷川さんが俺の連絡先をブロックした背景にあるものを。
「どうすりゃいい。俺はどうすりゃいい」
俺は職場で思わず苦悩を漏らしていた。
「ねぇ」
「はい」
「ねぇってば!」
「聞いています!」
「ご飯まだなの?」
「ご飯はもう少しでできますよ! 一緒に待ちましょう!」
「ねぇ」
「え?」
「あなた、やっぱりまた夢をみているのね?」
「夢をみている?」
俺がそう返事をするやいなや大城戸さんは「ご飯はまだなの?」とまた同じ事を聞いてきた。
俺は夢をみている?
俺は夢に溺れている?
俺は夢に酔っている?
俺の心はワケの分からないまだら模様の紋々に浸食された。
でも、俺がだすべき答えは1つなのだ。いつまでも現実を避けて生きていく事なんて誰にも出来ない。誰にも。
何年ぶりだろう。俺は三脚に立てたカメラに向かって少し喋った。
「好きな人にもう1度告白します。これが最後です。これで駄目だったら悔いはありません! 僕を応援してくれたみんなに心から感謝! 謝謝! サンキューベリマッチ! エブリワン!」
この動画を悟と玲さんに送った。そして回線の開放期間が残り数日と迫った。俺は来たる明日に備えることにした――
∀・)この話は僕自身の活動で打ち出している方針を乗せたところがありました。「リアルを巻き込まない」っていう精神っていうんですかね。ちょっと説明するのは難しいです(笑)さて、いよいよ次回が最終回???