表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

第6話「まさかの仮説と躍進」

挿絵(By みてみん)


『そう。でも元気そうで良かった』



 数年ぶりに聴く彼女の声に懐かしさを感じた。それはきっと向こうも同じだ。俺は悟と数年ぶりに先日話した事を興奮のままに話したが、気がつけば赤裸々に長谷川さんの事、それを悟に打ち明けた事なんかまで彼女に話していた。彼女もまた自身のいまを話す。



 玲さんこと高木玲は俺と悟と彼女の3人で、アマチュアのタレント活動を共にする仲のチームメイトであった。俺と悟は漫才コンビを組んだが、彼女は歌手としての活動をインディーズでやっていた。お互いにマネジメントを提携し合い、Youtubeでの活動も共にしていた。



 彼女は数年前に北海道まで引っ越して、今もそこで生活しているらしい。元々塾講師であった彼女は今や中学校の教員。海外からの人材との競争にすら勝って手にした彼女の道だ。夫と子供は今も広島にいて、彼女が単身赴任でいるらしい。



「北海道と広島じゃあ、ご家族ともなかなか会えないものですね」

『それも覚悟のうえよ。それより気になった事があるのだけど、いい?』

「はい?」

『さっき、伊達君が話していた伊達君が気になっているコンビニの店員さんって長谷川さんって言っていたわよね?』

「はい、そうですが、それが何か?」

『いや、私の友達で長谷川さんっていう人がいてね。確か今も広島でコンビニの仕事をしているっていう話を彼女と丁度したところで』

「え?」



 妙な胸騒ぎがした。ドクドクと脈打つ心臓の鼓動を感じる。



『長谷川美佳さんっていうひと?』

「えっと……確か……」

『連絡先交換したのでしょ?』

「いや、それがさっき話したようにブロックされて」

『ああ、そうか……』

「でも玲さん、玲さんの知る長谷川さんってどういう人?」

『私のひとつ上のお姉さんよ。広島にいた時に音楽活動で絡むことがあったの。元々保育士さんをしていたけども、酷いパワハラを受けて、やむを得ず退職してコンビニ店員になったのよ』

「悲しいですね……」

『でも彼女がしんどかったのはそれが全てじゃないわ。高校時代から付き合っていた彼氏さんがいてね、その人が病気で亡くなったの。婚約もしたばっかりっていうタイミングでね』

「やれないですね……」

『もう大変だったのよ? 1回自殺未遂をしたことがあってさ。私がその現場で止めたのだけど、私がいなかったら彼女は高層ビルから飛び降りていたわ』

「そんなことが……」

『でも何とか奮い立った。そこは私がどうこうしたからってワケじゃなくてさ、彼女自身が歯を食いしばって頑張ったからなのだろうけど。島根から彼氏さんと一緒に来た新天地、そこで彼女は今も彼から貰った指輪をつけて生きているわ』

「何だか凄すぎてグウの音も出ない。俺じゃ敵いそうになさそう」

『何に?』

「えっ?」

『いや、敵いそうにないって言っていたけど?』

「あぁ~仮にね? 仮に俺が気になっている長谷川さんが玲さんの話した長谷川さんだったら、その彼氏さんの存在って大きいじゃないですか? それを崩す事なんて俺にできるのかなって……」

『君は何だか臆病だね』

「はい?」

『ううん、もしかしたら人違いかもしれないからいいのだけどさ、彼女とさっき話したの。さっきも言ったようにね。その彼女がもしかしたらまた彼氏ができたかもしれないって話していて……』

「…………まさか」

『そのまさかよね? コンビニで仕事していたら声をかけられたって言っていて。ずっと死んだ彼の事を大事にしてきた彼女が彼の事を忘れそうになったってね』

「いや、まさかそんな事が……」

『戸惑う気持ちはわかるわ。でももし私の言う彼女と君の言う彼女が同一人物であったならば……君にはまだチャンスがある。私が君と彼女の背中を何とかして押してあげる事ができるかもしれない』



 俺は奇妙なる運命に戸惑った。玲さんが話す長谷川さんと俺が普段会っている長谷川さんが同じ人物だとするたら、あまりにも色んな事の辻褄が合う。



「玲さん」

『何よ?』

「もしかしての可能性があるかもしれない。でもそのもしかしてとかあるならば、お願いしたいことがある」

『うん?』

「彼女の新しい恋を後押しして欲しい。彼女が職場で出会った男に少しでも何か可能性があるならば、彼女にとっても彼にとっても得るものは大きいと思うのさ。まぁ…………悪い男じゃないといいのだけど」

『ふふ、何か変な感じね』 

「うん、俺もそう感じる」

『以前もこんな感じで話したことあるかしらね?』

「ないと思うけど……あるようなのが不思議です」



 こうして俺と玲さんの謎の協定が結ばれた。



 そのままに今度は悟と連絡を取り合う。彼が俺のことをネタにした記事は頗る様々な中国人の間で盛り上がり、俺に対して『加油!』とエールを贈るコメントが山のように送られているのを紹介してくれた。



 喋るのも書くのも英語が流暢な玲さんは悟の真似をして英語でブログや動画にして俺の事を紹介した。するとコレにも多くのアメリカ人やイギリス人が反応。動画で俺に対してエールを送る人達が続出した。



 俺はと言えば、ネット回線がしっかりと繋がる今を利用し、エッセイの更新に励んだ。



『今日もあなたに会いにこのコンビニに来ました!』



 これは数日後、日間ランキングの上位に入ると、瞬く間に総合ランクの1位を掻っ攫う事にまでなった――



∀・)はい、本作のターニングポイントにきました。ちょっと長いのは御愛嬌で許して下さい(笑)でもコレ「1999」から読んでいる人にはかなりテンションあがるところじゃないでしょうか。少なくとも作者はテンションあがってます(笑)このままゆきます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ついにターニングポイント! いったいどうなるのか楽しみです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ