第2話「目まぐるしい毎日のなかで――」
人は砂漠のなかに入っていくといつしかオアシスをみてしまうものらしい。
そのオアシスとは希望か何かだろう。少なくともイギリスのあの有名なロックバンドの事ではない。「スタンド・バイ・ミー」は名曲で好きだけども。
俺はそのオアシスを「南の島国」に喩えて恋愛小説を書いていた。いわゆるファンタジー的な発想だが、俗にいうナーロッパとは訳が違う。
物語はみるみる進んでゆき、プロットで構成した物語のかなり先まで俺の筆は止まらずに進んだ。気がつけば自己最高の60万字を突破した大作になっていた。
ネットが繋がれば、この世界にこの物語を発信できるのに。かれこれ半月ほど繋がってない状況だ。
俺は背伸びをして横になった。
今日はここまででいいだろう。
コンビニまで夕飯を買いに行って、明日の早出出勤に備える事とした。
俺はかれこれ20年以上は介護の仕事を続けている。一人暮らしを始めてだと10年ぐらいになるか。歳をとったものだが、職場では数少ない日本人の一人だ。福祉関係の仕事も海外では需要があり、また稼げる利点もあるから語学習得してグローバルな介護士を目指す介護士は世に多く存在する。というか、そういう人たちがほとんどだ。俺の相方もそんな一人だ。
「ダテサン、オツカレサマデシタ!」
「お疲れ様でした!」
今日は特に何も問題もなく特に残業をする事もなく職場をあとにした。
電気スクーターに乗って家路を辿る。勿論あのコンビニに寄る。
コンビニには彼女がいた。店員の長谷川さん。今日もショートカットがとてもよく似合っている美人さん。
彼女は商品を持ってきた俺をみるなり、頬を赤らめていた。
これは? これまでにない展開じゃないか!?
これは? また俺にチャンスが訪れたのか!?
「どうかされましたか?」
俺、今日、何か特別な事をしたかな? とりあえず星座占いでは乙女座が1位だったワケだけも……! 俺はとびきりの笑顔を彼女に見せてあげた。
俺はドキドキするままに彼女と見つめ合った。目の前にオプション画面を開く。「セーブ」の選択肢をボタン連打するが「セーブできません」の表示が為されるばかり。
そうこうしているうちに彼女が俺にそっと耳打ちした。
「社会の窓、開いていますよ……」
ハイテンションの高揚から崖の下に急降下した。そしていつもの冷たい感じの彼女に戻る。俺は一体何を期待したというのだろうか。そもそも彼女は交換した俺の連絡先をブロックしているというのに……。
落胆する俺だったが、その夜、思いもよらない事が起きた。
ネットが繋がったのだ――