第11話 和解と新たな危機
「ねえ、さっきのってどうやるの???」
さっきのって?何の話だ急に??
「あの強い須増先生を一発で倒すなんて。しかも魔装なしで!!あれ教えて!!私の先生なんでしょう?ねえ!!」
ああ、あれか........
なんと彩夏は俺が教師の魔術師を倒してしまって怯えているというよりはむしろどうやって魔術師を倒したのか。そっちの方が気になっているらしい。
この娘本当に素質があるのでは?そう思わざるを得なかった。
だがこれはチャンスだ。
理由はどうあれ俺への警戒心より好奇心の方が勝っている。
これを利用しない手は無い。
「今のは、魔術師を倒すための秘策の技だ」
「秘策の......技......!?」
何の疑いもなくいうことを信じる彩夏は純粋の塊だった。
まあ、ただのあて身だったとはいえ、それなりの鍛錬をしないと使えないということは事実ではあるが......
「なにそれすごい!!」
まるで小学生並みの感想でキラキラと目を輝かせている。
眩しい。
それに畳みかけるように続けてこう言った。
「俺が彩夏を強くできる根拠はこれだよ」
「根拠?」
「先に言っておく。俺は魔術師ではない。ランクで言えば彩夏よりもランクの低いランク0だ」
「え.......ランク0!?」
さらに驚いた表情を見せる。
無理もない。これを言うと大抵の者は驚くからな。
「だが、今見ただろう。俺はランク5の魔術師を倒した。これが結果だ」
―———うんうん
と彼女は首を縦に揺らす。
「だが俺は魔術師に勝つ方法を知っている。勝ちか負けか。それが何かというのは人それぞれだが、ただ勝つ。魔術師を地に伏せ、それを見下ろす...というだけなら別に魔力なんか無くたって達成することはできる。それを補えるための別の力があればの話だがな」
「別の力って......?」
「俺が教えるのはそれだよ。もし俺の言うとおりに彩夏が修行を積めば強くなる。立派な魔術師とやらにはなれない.....かもしれない......だが、純粋に強くすることはできる。この学院で彩夏は魔術師としては最弱かもしれないが、その彩夏より格上の魔術師に勝つことはできる。.......言ってる意味がわかるかな?」
「本当に私、強くなれるの?」
彩夏は真剣な表情で俺を見る。
そんな彼女に俺も誠意をもってこう答える。
「ああ、なれるよ。俺は一度も嘘をついたことが無いんだ」
それを聞いた彩夏は少し顔を赤らめてなんともいえない表情をする。
「わ、わかったわ。そこまで言うなら今回だけ特別にあなたの言うことを信用することにするわ」
「そうか、それはよか..」
「私ね。次の1カ月後の模擬戦は絶対に勝ちたいの....そうじゃないと.......この学院退学になっちゃうんだ........」
.......ん?1カ月???
「私あなたの言うとおりにする。これから頑張るわ。だから私を勝たせて。1ヵ月後の模擬戦をクリアしたいの。お願いね.........その.......師匠...........!!」
彩夏は恥ずかしそうにそう言い残しその場を去っていった。
辺りもだいぶ暗くなってきた。
シャララと俺と気絶した魔術教師だけがその場に取り残される。
「これでいいか?シャララ」
「ま~彩夏ちゃんの機嫌もよくなってたし~大丈夫ってことで~梅には報告しとくよ~」
「そうか、それは良かった.......が、」
「ん~?」
「彩夏がさっき言ってたのは本当か?その、1ヵ月後の模擬戦で勝たないと退学とかそういうこと言ってたんだが」
「ほんとだよ~」
「聞いてないよ!!!」
「そりゃだって~言ったら引き受けないかも~って梅は思ったんじゃな~い。ただでさえ骸くん最初は乗り気じゃなかったし~」
「........じゃあもし1ヵ月後にあいつが退学になったりしたら?」
シャララは無機質に何食わぬ顔でこう返した。
「条件はDクラス全員を卒業させることだからね~ま、死んじゃうんじゃな~い?」
ふざけるな!!
たった今命の危機が去ったばかりだというのに。
俺の余命が1カ月延びただけじゃないか!!
どうして俺がこういうのかというと、1年ならともかく1カ月では期限が短すぎる。
当たり前だが1カ月程度で強くなれるんだったら誰も苦労などしない。
強くなるにもそれなりに時間が必要なのだ。
頭を悩ませている俺にシャララはこう言った。
「ま~詳しいことはまた梅に聞いてよ~。え~い」
小さい手をくるっと回すシャララ。
すると俺の目の前に小さい光の玉が現れた。
「梅にはもう報告しといたよ~ほんで梅が呼んでるから~この光をたどっていけば梅の部屋まで案内してくれるからね~いってらっしゃ~い」
なるほど、まあこの件についてはこれから梅と交渉するとするか........
「ところでこの女はどうする?」
そこに転がっている魔術師を一瞥し、そう言った。
「ま~彼女は僕に任せてよ~早くいかないと~須増先生が起きた時にまた面倒なことになるからさ~」
それもそうだな。
こうして俺はその場を後にし、シャララの出した道しるべを頼りに梅の元へ向かった。




