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第10話  先に倒せば問題ない

「何をしているんだお前!!うちの生徒から手を放せ!!」


どうやら近くに人がいたらしいいたらしい。


スーツ姿の俺と同年代くらいの女性。


口ぶりからこの人もこの学院の教師といったところだろう。



「どこから校内に侵入してきたか分からんが危険な奴め!その手を放せ!!」


怒りの視線を向け、敵意丸出しだ。


今すぐにでも戦闘態勢に入ろうとしている。


今の状況は彼女から見てみるとこうだ。



当然知らない男が人影の少ない校舎の裏で、嫌がる女子中学生の腕を掴み、声が出ないように口を塞ぎ、身動きが取れないように拘束している。


そしてその少女は涙目になりながら助けを求めている..........



うん、これはヤバイ、本当にマズイ状況だ。


どう考えても不審者以外の何物でもない。


教師のこの女がこんな顔をするのも仕方のないことだ。


仕方がないと思うが........



ちょっと待ってくれよ。誤解なんだ!!


いや、完全に誤解とも言い切れないけれども.....





いや待て。


こんな時のために俺にはあの使い魔がいたはずだ。


今は俺の監視役だが、仮にもこの学院のトップが使役している使い魔。


信頼はそれなりにあるはず。


そいつが俺の誤解を解いてくれるはずだ。


どこにいるんだシャララ。


さっきまで俺の後ろにいただろう?どこ行った.........どこに........


後ろを見るとシャララは..........



寝てる!?


スヤスヤと気持ちの良い笑顔で、鼻には漫画でしか見たことのないおっきな風船まで作って!?



お前こんな大事な時に何やっているんだ。このクソピエロ!!


何のための監視役なんだよ寝てんじゃねえよ。




「何をしている。早くその手を放せ!あと3秒だけ時間をくれてやる。それまでに手を離さないというのなら、その薄汚い手が消し飛ぶことを覚悟しろ。3......」


さてどうするかこの状況。




「2.......」




俺が手を離すのは簡単だが、それでもこいつの攻撃は止まらないだろう。





「1.......」





奴との距離は10メートル前後ならやることはシンプルだ。






「0。.....覚悟しろ、悪党」







その瞬間、彼女の前身が青い光に包まれる。


背後から5つの崩珠が浮かび上がり、四肢から体幹に向かって魔装が施されていく。




それを見るや否や俺は彩夏から両手を放しランク5の魔術師に向かっていった。


そのスピードにやや驚いた表情を見せるが、それに反応して左手を突き出し魔術で応戦しようとする。



が、それでも俺の方が一手早かった。


死角から左腕を伸ばし、左手の甲を顎にたたきつける。


脳を揺らす感覚。手ごたえありだ。


気持ちの良い一撃をもらったその魔術師は膝から崩れるように落ちていきその場で気を失った。


戦いの基本やられる前に殺れ。


それを忠実に表した一撃だった。まあ、殺してはいないんだが........


彼女の魔装は解除され、これで俺への危機は回避できたというわけだ。



...........



...............しまった。


不可抗力とはいえ、ここの人間に手を出してしまった........


もしこれが梅に知られでもしたら.........



「骸く~ん、何やっているのさ~」



何、シャララ起きてたのか!!


見られた........ヤバイ...........



「見てた........?」



「ん~見てたよ~須増先生が突然魔装し始めるんだも~ん。気持ちよく寝てたのに~びっくりして起きちゃったよ~」



「言っとくがこれは誤解だからな。こいつが先に襲い掛かってきたんだぞ。正当防衛なんだからな」



「まあね~骸くんは怪しすぎるからね~」



「元はというとシャララがさっさと出てきて誤解といてくれたらこんなことにはならなかったんだぞ。勝手に寝やがってこの野郎!!」



「なに~責任転換やめてよ~」



「肝心な時に役に立たないんだからな」



「へえ~そんなこと言うんだ~ならこのこと梅にチクっちゃうよ~」



「..........すいません、それだけはマジで勘弁してください」



この野郎、使い魔もろとも最低だな。




「.......まあ、一応彼女も気絶しているだけだし~僕も寝てたっていう落ち度があるから~今回のことは大目に見てあげるよ~」



助かった。



「ところで骸く~ん。何か大切なこと忘れてない~」


忘れて........はっ、そうだ。


早く彩夏に謝罪して許してもらわないと.......


俺の首が外れてしまう。


彩夏は一体どこに.........


彼女を見つけるため辺りを振り返ると...............



いる。


普通にまだそこにいて目が合った。


てっきりこの混乱に乗じて逃げていると思ったが、彩夏は逃げずに今までの一部始終をすべて見ていたのだ。



「あー......えーっとこれは.........」



もはや謝罪だとかそういった次元のはなしではなく、まず俺が敵でないことの誤解を解かなければならない。


俺はせっかく救出に来てくれた教師を倒してしまった。


凶悪で危険極まりない男だ。


そんな俺は今の彼女の目にはどう映っているのだろうか?



くそっ.....なんて話しかけたらいいのかが分からない.......





彩夏は口を開けて驚いた表情をしていた。


頭が混乱しているのだろう。


また逃げられてしまう......これじゃあ、今日中に彩夏に心を開いてもらうことなんて到底無理な話だ。


そう思った。


だが、彩夏はそんな俺の予想に反する行動を取り始める。


なんと彼女は逆に俺の方へ向かってきたのだ。


俺の元まで歩いて近づき、なぜか警戒心も解けている?そんな気がした。


そしてその大きな瞳を向けて服の裾をつまんでこう言うのだった。





「ねえ!!今の、どうやるのか教えてください!!!」

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