第1話 目覚め
20年近く生きていて首と胴体が切り離される経験は初めてだった。
これまで100..? 500...? 1000....?数は覚えていないがそんな死骸は腐るほど見てきた。
それなのにいざ自分がそうなったらどんな気分なのか考えたことも無かったな。
一瞬で首が燃えるように熱くなり脳に焼き切れるような強い電流が走る。
瞬時に視点が切り替わる
「はは。。なんも見えないな...」
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「.........」
(おかしい...なぜか意識がある..ような気がする...)
(目は見えないが...いや、これは目を閉じているから...指先は...動..く?足の指も...)
(それになんか声が声が聞こえる...ような...)
俺はゆっくり瞼を開いた。
「ねえ~また失敗?ウメ~。もう諦めなよ、魔力の無駄使いだって~」
「何言ってんの、まだ4回目じゃない。魔術の実験に失敗にはつきものなのよ」
「その失敗1回でいくらあと予算使っているか分かってるの~?」
「うぐっ....」
「あと2回失敗したら今年の予算使い切っちゃうよ~上になんて報告するのさ~」
「まだあと2回は実験できるってことでしょう?余裕じゃない」
「いや、すでに予算の3分の2使っている時点でヤバイんだけど...」
「次こそうまくいくわよ今度はこの聖遺物よなんとこれは2000年以上かけて地中の魔力が結晶化した高純度の....」
(......)
そこには20台前半くらいの容姿銀色の長い髪に魔術師特有の黒い三角帽子の美少女が
隣には小さいピエロのようなマスコットがふわふわと浮いている。
話に夢中で俺が起きたことに気づいていないみたいだった。
今の状況を軽く整理してみる。
俺はさっきまで処刑場にいた。そして刑は執行された...多分。
で、死んだと思ったがなぜかこの個室にいてベッドに寝かされている。
両足の指は動くが四肢は動かせない。
両手首と両足首、腹部が拘束具で固定されているからだ。
服は着ていない。
代わりに首より下に大きな布が一枚かけられている。
目の前には同世代ぐらいの女の子とその隣には使い魔のようなものがいる。
この子が俺を助けてくれたのか..?
とりあえず起きてみるか.....
(ふんっ)
メキメキメキ....バキィ....
と木やプラスチックが破壊されるような音を出して右腕をはずす。
さすがに手首についている輪っかは金属製だったようでそれをくっつけたまま強引に左腕、右足、左足と外し、自由になった両腕で腹部の拘束具をねじ切って外し、起き上がった。
この破壊音でさすがに彼女らも俺が起きたことには気が付いたようで、俺が起きる様子を口を開けて眺めていた。
「な...本当に起きた...」
彼女はびっくりしたように目をまん丸に開いて、嬉しさと驚きが混ざり合ったようなそんな表情だった。
俺は無言四肢についた金属輪を外し始める。
「ねえ、君、意識はある...?前の記憶は...ちゃんと覚えているの?」
そこで俺は初めて彼女に口を開いた。
「よくわからない...俺も状況がよくわからないけど意識はあると思う。記憶も多分失っていない...と思う」
「そう...それはよかったわ」
「マジか~まさか本当に成功するとはね~」
「ほらみてみなさい。私に不可能な魔術はないのよ」
と彼女は使い魔に自慢げな顔をしていた。
「...ところで、今日は何日だ?」
ふと気になって、一体俺がどれだけ眠っていたのかを彼女に聞いてみた。
目は覚めたがなんとなく長い間眠っていたような気がするのだ。
「今日は○○○○年の10月4日よ」
「......!!!」
それを聞いて俺は自分の耳を疑った。
なぜならその日付は俺の首がはねられた記憶から2年以上経っていたからだ。