第7話 お宝
〜 13年前 〜
「ほら〜やっぱりお宝あったじゃない、ドラゴン倒せばお宝が手に入るって常識でしょ!」
「ほ、本当にあった…まさかムツキちゃんの言っている事が当たるなんて…」
ドラゴンを討伐した後、ふと当初の目的を思い出したナツキとムツキは、ドラゴンの洞窟の奥へと向かった
その奥には、岩に刺さった光り輝く剣があったのである
信じられない光景を目にしたかの様に、愕然としたナツキ
ー 岩に刺さった剣視点 ー
(吾輩はエクスカリバー、言わずと知れた伝説の剣である
我は救世主だけが抜けると言う伝承からか、どうやら主人をえり好み出来る意思を得たようだ
どうせなら白い羽を広げた聖女に抜いて欲しいと待ち続けたが、来たのはむさ苦しいオッサンやら豚やら蜥蜴やらである、果てはドラゴンが住み着き、誰も来なくなった…
そんなある日、2人の女の子が洞窟に入って来て、ドラゴンを倒したという
しかも可愛い女の子…だが、直ぐに抜けては威厳に関わる…仕方ない、少し焦らして抜けてあげるとするか)
そして、ムツキが力任せに引っ張った、が、びくともしなかった
「ムリムリ、これ絶対抜けないから放置されてるんだよ」
「力の強いムツキちゃんが無理なら、どうしようもないね」
そう言って、早々に出て行ってしまった
〜 そして13年 〜
(もう、誰でもいいから…抜いて…)
誰も訪れなくなった洞窟の奥で、切に願うエクスカリバーであった
そんなある日、会話をしながら洞窟に入って来た者達がいた
「クーちゃんが居なくなってから少し後に、この洞窟で剣を見つけたのはいいけど、全く抜ける気がしなかったから、放って置いたんだよ、まだあるかな〜」
以前に少しだけ引っ張って諦めた女の子2人が、もう1人女の子を連れて戻って来た
(よ、よし、今度はサックリ抜けて、一緒に連れて行って貰うぞ!)
エクスカリバーは心に決めた
「金属はね〜熱を持つと膨張するから、熱して冷やせば簡単に抜けるんじゃない?」
新しく来た女の子がそう言った
「確かにそうかも!でも、クーちゃんに言われるなんて…」
と、3人が剣を取り囲んだ
『『『ファイヤーボール!!!』』』
3つの火の玉が剣に当たり、火柱が上がる。すると、ガタガタガタガタガタガタと剣が振動し始めた
「お、いい感じかも、もう一回」
と言ったナツキに向かって剣が飛んで来た。
ゲフッ!
ナツキの鳩尾にクリーンヒットした
「オマエら、なんて事すねん!」
剣が突然喋り出し、呆然とした3人
「え〜と…剣に擬態したモンスター?」
ムツキが怪しげに尋ねると
「ちゃうちゃう、ワテは伝説の剣、エクスカリバーやねん、聞いた事位あるやろ!?」
3人のジト目が痛い
「ま、まあええは、これからはワテがついていったるから安心せい!」
3人は、何も見なかった事にして、立ち去って行く
「ちょっ、お前ら、ワテを置いて行くんか?」
3人はスタスタと出口に向かって歩いて行く
「ま、まって〜や、そこの美しいお嬢さん方!」
ピタッと、足が止まった
「今何て?」
「美しいお嬢さん方、連れて行って下さい!」
「し、仕方ないな〜」
と、少しニヤけた顔で、ナツキは剣を拾ったのである
「エクスカリバーって名前がカッコ良過ぎだよね?」
「なら、カリバーだからカリ棒?」
「なんか言い難いから、クリ棒?」
「カッコ良いならいいやないか!、わては断固としてエクスカリバーやで!」
だが、ナツキ達がクリ棒クリ棒言うので、クリ棒で定着してしまったのであった
〜 出発して1ヶ月 〜
「俺は剣なんだから、投げるんじゃない!」
とクリ棒は怒ってはいるが、投げた方が手っ取り早い
勝手に追尾して命中してくれるし、外れても空中でUターンして戻って来てくれる。
思いの外、拾い物である。
道中、巨大ワニに襲われたり、空飛ぶ恐竜にクーが拐われたりしたが、今3人とも無事なのだから、気にしたら負けだ。
この煉獄には、たまに集落がある。
リザードマンの集落、ハーピーの集落等々、だけど排他的な所ばかりで、出会ったら大抵攻撃される。
そんな煉獄でも、気の合う仲間と一緒なら楽しかったりする。
毎回クーちゃんが指から糸を出して、木の上にハンモック状の寝床を作り、ムっちゃんが猪やらウサギやら獲物を捕まえ、ファイヤーボールで焚き木しながらバーベキュー
土の魔法で硬い土壁を作り、中に魔法で水を張り、小さなファイヤーボールでお湯にして、お風呂を嗜む
むしろ快適なんじゃないか、とか言われそうだが、そんな事は無い、過酷な旅なのである!
〜 出発して4ヶ月 〜
「うう〜、気持ち悪い〜」
歩いていたら、巨大な食人植物の蔦に絡まれて食われそうになり、切り倒したはいいが緑色のベトベトの樹液を大量に浴びた。
洗い落とそうと魔法で水を被ってみたが、全然落ちなかったのである。
グサッ
弓矢が足元に突き刺さった、3人は一斉に木陰に隠れ、矢の放った者に一応問い掛けた
「私達は、3人で旅している旅人です。危害を加えるつもりはありません」
この煉獄で旅なんてしている方がおかしいので、信用なんてされる訳もなく、向こう側の気配が多くなったのを感じた。
そんな中、黄金色のハリネズミらしき獣人が現れた
「我こそは、煉獄で一番の勇者ハリガネ!お前ら如き、蹴散らしてくれる!」
そう叫び、丸まって、針を出したまま転がって来た。
金色の棘の生えた球体が高速で迫ってくるが、ナツキ達は安易と躱していく。
すると、ハリネズミはどんどんと小さくなっていった。
ナツキが避ける度に、クリ棒でトゲを斬り落としていったのである。
「俺の負けだ.」
棘を全て切り落とされて、既に金○状態のハリガネは降参し、それに伴い、他者達も武装を解いていった、そんな中、群のリーダーらしきハリネズミが出てきて、カッと目を見開き
「おお、み、見えるぞ、金色の野に降りたつ青き御使が!」
一瞬呆然としたナツキ達、下には黄金色のトゲが散乱して、ナツキは樹液で緑色…
「おお、御使様じゃ」
とハリネズミ一同は頭を地に伏し土下座した
ランランララランランラン♪って音楽まで聞こえて来そうである。
流石に無理があるだろ…と3人が戸惑っていると「まあまあまあ」とハリネズミに連れられて集落に連れて行かれたのである。
集落では、盛大にもてなされ、ナツキ、クー、ムツキも満更でもなく、盛大に食いまくった。
「御使様、巨人の討伐には、いつ向われますか?」
リーダーらしきハリネズミからそう言われた
「巨人?」
クーが聞き返すと
「お付きの人はご存知なかったかもしれないが、ここから北に少し行った所に巨人がおりまして、今まで何人も討伐に向かい、我が友も返り討ちにあいました…」
と、涙目で語り、それを聞いた周りの者達もこぞって「敵討ちを!」と泣きながら頭を下げたその時
「ご主人様に任せておけば大丈夫!」
クーが立ち上がり、そう断言し、ナツキとムツキは、ああ〜と頭を抱えたのであった。