第39話 王者決定戦 その3
「レッディ〜ス、アンド、ジェントルマ〜ン、これより皆様、お・ま・ち・か・ね・の決勝戦が始まるよ〜、ご声援、よ・ろ・し・く・ね♪」
そこには、赤色ビキニにウサミミを付けて、ウインクしながら投げキッスをしているナツキがいた
昨日とは違い、割れんばかりの歓声が起きた
「ナツキちゃんが壊れた…」
「昨日ずっと女将の酒に付き合わされていたからな…酒がまだ残っていてハイになってるのかも…」
「ひっとしたら、女将さんに薬でも盛られたとか?…」
「………」
ムツキ、クー、旦那はナツキと目があったが、居た堪れなくなりサッと目を背けた
実は、司会を旦那に代わって欲しいと直訴したのだが、それならカードで勝負して決めよう、という事になり…ナツキが負けて服装が変えられたのである
ヤケになったナツキは、しこたま酒を呑んで今に至った
又、フロッグがヒカリであった件は、女将さんに話してはいたが、黙っていれば他の人には分からないから問題無いと言っていた
いざとなったら女将さんと旦那で対処するらしい
このまま終わると収益が落ちるから、放置したのでは…と思ったのだが、怖くて言えなかった
そして決勝戦が始まった
【決勝トーナメント決勝戦】
女将vsフロッグ(ヒカリ)
「久しいわね、ミカエル、少しは出来る様になったのかしら?」
「無論です、お手合わせをお願いします」
そう言ってヒカリは黄金のオーラを纏い、女将は雷を纏い剣撃を繰り広げた、探り合いをしている様に見えたが、徐々に女将が優勢になっていき、ヒカリが上空に蹴り飛ばされたが
『カ〜メ〜○〜メ、波〜!』
巨大なカメ○メ波が女将を襲う、が、女将は片手から同じ大きさでカメ○メ波を出して、相殺した
「なら、エデン様が見た事ない、この技ならどうです?」
ヒカリは魔力を集中し
『ビックバン・ノヴァ!』
ヒカリを中心に大爆発が起きた
が、咄嗟に女将がヒカリを中心にした球状のバリアを貼り、技の威力が全てヒカリへと跳ね返った
「ねえ、女将さんが相手の技をコピー出来るのってインチキじゃない?」
「太古の昔に生まれ、誰よりも長き時を研鑽し、魔力の流れ・性質を瞬時に読み解き、模倣出来るまでに至ったんだ、誰も勝てんよ」
押し黙るムツキとクー
「ゲフッ!」
ヒカリはモケの町を消滅させた程の範囲攻撃をその身で全て食らった
「エデン様、力の底見えないのですが、本気の力を見せて貰えませんか?」
「そうねえ…これならどう?」
女将さんが上空に上がり彼方を指差した
『ゼロ!』
次の瞬間指先が少しだけ煌めいたかと思ったら、遥か彼方の島が轟音をたてて吹き飛んだ
「…旦那、女将さん何したの?」
「指先に物凄い光を収束させて、放ったんだ、放った方向以外には光が殆ど漏れてないから、此方からは指先か少し煌めいただけに見えるがね、これがどれ程難しい事なのかわかるか?」
ゾッとするムツキとクー
「どう?」
女将さんが問うと
「参りました」
ヒカリは両手を上げて降参した
ナツキが女将さんの勝利を宣言すると、会場は鳴り止まない声援が飛んだ、そんな中
「何故この様な形でお会いしたかについては、体感して頂くのが一番なので、手を握って頂けますか?」
女将さんがヒカリの手を握ると、女将さんが黒色に染まっていった…
「ちょ、あれ!」
クーが呟いた直後、旦那が空に駆け上り、女将を引き離したが
「…」
次の瞬間、旦那は弾き飛ばされた
「皆の者、良く聞きなさい、今大会優勝者の女将が告げる、これより1年の猶予を与える‼︎」
会場がどよめく
「1年後までに私を殺せなければ、この世界がこうなります」
『ゼロ!』
女将の指先が煌めいた、次の瞬間、遊亭諸共始まりの町が消し飛んだのである
会場は阿鼻叫喚に包まれた
「私は果ての山脈にある城にいますので、いつでも来てください」
そう言い残し、ヒカリと共に飛んで行ったのである
〜 数日後、帝国 〜
「さて、何か案は無いか?」
大会に出場した選手達が帝国の城に集められ、話し合いが行われていた
闘技場の大混乱は衛兵達の協力もあってどうにか収集し、始まりの町の住人はひとます帝国で引き受ける事、までは決まっていた
問題は、女将さんに対してこれからどうするかである
ナツキ達は、フロッグがモケの町を消滅させたのは同郷のヒカリである事、元は白い肌であった事から、女将さん同様黒く染まったのではないかと説明した
だが、元に戻す手段についてはナツキ達はもとより誰もが皆目見当もつかない、と口を揃え、沈み切った雰囲気に包まれていた
それもそのはずである、圧倒的な女将の力を目の当たりにして、誰もが勝てる見込み等ありはしなかったからである
中でも旦那は、女将さんが黒く染められる可能性を考えなかった事を激しく後悔していた
「女将はやろうと思えば、あの場で全てを消し去る事は出来たはず
でもしなかった、女将は止めて欲しかったんじゃないかな、旦那に」
女将さんと一番付き合いの長い旦那に訴えた
「そ…そうだな…俺が…なんとかしないと」
その後、何ら妙案は出なかったものの当面の方針は一応決定した
1.大会出場者を鍛え直す
2.来たるべき時に、この世界の戦力を集約する準備を進める
3.黒に染まった人を元に戻す方法が無いか、広く情報を集める
〜 数日後 〜
旦那とローグは力を開放しても、制御出来る様に特訓し、他の者はディアブロの黒いオーラを纏える様に訓練していた
ナツキ達はというと、ダンジョン都市の地下でハクとお茶をしていた
「あのご主人様が洗脳ねえ…にわかには信じられないけど、ご主人様が住んでた所が消滅したのは確認してますから、信じるしかないのかしら…」
「で、もし女将さんの洗脳を解除できなければ、1年後に女将さんがこの世界を消滅させると宣言したのだけど、その時は一緒に戦ってくれない?」
「あの女将さん相手に数いても意味あるの?」
「女将さんの相手は旦那に任せて、他の2人の相手をして欲しいの」
「…どの道消されるのなら、最後まであがくとしますか」
こうしてハク達の参戦も決定したのである。