第34話 ダンジョン都市
「やっと辿り着いた〜!」
クーがはしゃぐのも無理はない、ムツキが急かすのでかなりのハイペースで飛んで来たのである
「さあ、探索に行くわよ‼︎」
「待って、まずは情報収集でしょ?マンゴラの件を忘れたの?」
トラウマが走馬灯の様によぎる
「そ、そうね、今日は疲れたし情報収集だけして探索するのは、明日にしよっか」
ナツキ達は宿屋を探す事にした
町の中は活気に満ちており、屋台も彼方此方にあり、良い匂いが漂ってくるが、同時にお酒の匂いも漂ってくる
昼間から酔っ払って潰れている人もチラホラいて、絡まれるのは嫌なのでソソクサと看板を頼りに宿屋へと向かう
宿屋は町の中央にあるダンジョンの傍に酒場兼宿屋という型であり、1階が酒場、2階が宿屋になっていて、昼間は食事のみという人もいる様だったので、宿を1週間契約した後酔っ払っていない人に聞いて回った
帝国のギルドで半年もいたお陰で荒くれ者の扱いは慣れたもので、得られた情報は以下の通り
・ダンジョンは現在8層まで踏破されている
・ダンジョン内部の魔獣を倒しても又湧く
・ダンジョン内には宝箱が固定されていて、中にお金、宝石、武器防具等が入っている事がある
・ダンジョン内で厄介なのが、30㎝程度で6本足、強靭な口がある、むさぼるモノと呼ばれるアリである
・アリは大軍で行動し、一度に数千とも数万とも言われる数で襲われ、全滅した者が多数くいるらしい
助かった者は、逃げ足に自信があった者だけであり、このダンジョンが未だ踏破されていない所以でもある
又、ダンジョンとは関係無いが、最近ヨグソトホートが彼方此方に出没し、町を壊滅させており、傍には人影があったという情報もあった
ローグが手なづけたのだろうか…やりかねないから怖い…
〜 翌日 〜
「さあ、お宝ゲットしに行くわよ!」
ムツキが右手を握りしめたまま、ナツキとクーを見渡す
「こういう場合は、握り拳上げてオーでしょ、オー!」
「「オ、オー!」」
ダンジョンは地下へと続く石畳の迷路となっており、幅、高さ共に5m程あり、石の間からは苔が生えて独特の雰囲気があった
6階入り口までは街でマップが3万で売られていたので、悩んだ末に購入したお陰で、スンナリと…と言っても魔物を倒しつつなので、まる1日かけてたどり着いた
「さあ、ここからが本番だね」
まあ、なんと言うか、いきなり強い魔物も出る事無く、マッピングしながら行ったお陰もあるだろうか、スンナリと7階への階段を見つけ、降りて行った
「これなら、あっという間に踏破出来るんじゃない?」
この言葉がフラグだったのか、現在後悔している…
6階に降りた直ぐの部屋に入った時、壁、床、天井に群がるアリ、アリ、アリ
「ギャー」
と、叫んで6階へ逃げて来たのだが、数万とも思える大軍がまるで津波の様に押し寄せ、追われている
『ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール』
虫なら火が弱いはず、と思い、逃げながら放ってみるも、1匹すら倒せていないばかりか、避けるそぶりすらない…
「クーちゃん、この先に長い通路があったはずだから、通路の先までたどり着いたら、かますわよ」
「りょ!」
長い通路をひたすら全速力で走り抜け、先にたどり着くと
『エクスカリバー! 』
『ロンギヌス!』
通路の壁が溶け、アリも全滅した、かに見えたが、奥から湧いて来たアリが溶けた壁をもろともせずに迫って来る、エバーは壁に深く突き刺さり戻れない
「ここは一旦引くよ、エバーは後で回収するから」
「エ、エバー!」
とクーを抱えて逃げていくが、流石に全力で走るのも限界が来ている
「というか、飛んだ方が早くない?」
二人ともキョトンとし、一瞬間が空いた
「「なんで早く言わないのよ〜!!」」
途中、すれ違う人達に会ったが
「むさぼるモノが出た〜」
と叫びながら通り過ぎた
きっと被害は出ていないはず…だよね…
飛んで地上まで無事に戻れた3人であった
「あれは流石に無理じゃない?エバーだけ回収したら、諦めない?」
地上に戻った3人は、反省会という名の昼食をしていた
「そりゃあ、ナツキちゃんやクーちゃんは自分の武器持ってるから…いいよね……」
ムツキが又イジケ始めたので、慌てて
「そ、そうだよね、一回や二回の失敗で諦めたら、駄目だよね」
「う、うん、どうにか踏破しよう!」
と、奮起?する
「多分アリは空飛ばないから通路の真ん中を、飛んで突破するのは?」
「上から降って来て、アリに囲まれちゃわない?」
想像するだけでゾッとした
「殺虫剤とかあればな〜、あったとしても効かないか…」
「他のダンジョン攻略組と、共同戦線ってのは?」
「あれは数いても、どうしようもないでしょ、被害者増やすだけだよ、旦那とか居たら別だけど、女将さんにべったりだし…」
「例えば、旦那だったらどうすると思う?」
「あの人は魔力が無尽蔵にあるから、長い通路でハーロイ◯ンを2、30発放ちながら進むとか?比較にならないよ…」
「そ、それなら、女将さんなら?」
「女将さんなら面倒くさがって、迷宮ごと消滅させかねないかな…」
「流石にそれは…でもありそうで怖いよね…」
と沈黙する3人
規格外を参考にするのも馬鹿馬鹿しいので、出来る範囲で話し合いをしたのであった。
ナツキ「走れメロスって知ってる?」
ムツキ「身代わりになった親友の為、3日走った話だよね?」
ナツキ「そそ、でもね実は走って無かったんだよ」
クー「へ?」
ナツキ「とある小学生が、小説の描写から地点を割り出して移動速度を計算した所、最初はトボトボと歩いてて、最後だけ少し早足で歩いてたそうな」
クー「メロスは親友助ける気無かったのかな…間に合っちゃったから仕方ないか…みたいな」
ナツキ「あれじゃない?人がいる時だけ頑張ってる振りして、碌に仕事してない人会社にいるでしょ」
ムツキ「そうか〜そんな大人にだけはなっちゃいけないって話だったんだw」