第29話 借金
「因みに、利子は10日で1割ですのでお忘れない様にお願いします。もし返済が滞り1000万ゴールドを超えますと、遊亭に借用書が周りますので、お忘れなきよう」
「え?10日で1割?何そのボッタクリ!」
「貸し出す時に借用書はお見せしましたよ」
借用書を確認すると確かに書いてあった…
現在の借金金額は200万ゴールドあり、利息は10日で1割なので、最低でも10日毎に20万ゴールド払わないと雪だるま式に増えていく
利子さえ確認せずに、借りる方も借りる方であるのだが…
「請求書が女将さんの元に渡ったりしたら…」
3人は連れ戻されて、永遠とこき使われる姿を想像して、真っ青になった
「なんとかして、10日で20万以上稼ぐよ!」
カラ元気で気合をいれたものの、トボトボと足取り重く遊楽を後にした
とりあえず、稼がないといけないので、ギルドに向かった。流石大都市のギルドというべきか、建物自体が巨大で、人も賑わっていた
「きっと返済出来る、よね…」
期待、というか淡い希望に縋り付く様に、3人は登録窓口に向かった
「お嬢さん達、ギルドは初めてかしら?」
どうやらキョロキョロしていたのを見られていたらしく、スーツを着たいかにも仕事が出来そうな受付嬢から声をかけられた
「手っ取り早く、お金を稼ぎたくて」
「何があったの?」
カジノでの出来事を話すと
「貴方達もその口か…あそこは結構あくどい商売してるからね…なまじっか借用書なんて用意してるから帝国も手出し出来ないみたいでさ」
どうやら、自分達以外にも被害者はいるらしい…
「10日で20万は相当ハードだけど、私も出来るだけサポートするから頑張って!因みに私はアリスロット、アリスと呼んでね」
手を差し出されたので
「宜しくお願いします!」
と、握手をした
「因みに、登録に1人1万ゴールドかかるけど…」
3人の顔色が蒼白へと変わった
「そ、そうよね、特別に登録料も貸しにしておくわ」
実はこの登録料、1000ゴールドはカード代金、残りはギルド窓口嬢に手間賃として入るお金だったので、受付嬢は手間+3000ゴールド損する事になるのだが、夢も希望を持ってこの町に来たにも関わらず、いきなり地獄に落とされた3人が不憫でならなかった
3人の顔色が少し明るくなり
「「「ありがとうございます!」」」
「とりあえず、これに名前書いてくれるかな」
アリスは、書いて貰った名前をギルドの紋様が描かれたカードの中央に刻印し、3人に渡した
「3人とも、受け取ったカードに少し魔力を込めてみて」
3人は魔力を込めると、カードが青く光った
「このカードは、一度込めた魔力と同じ人の魔力にしか反応しないから、依頼を受ける時はカードに少し魔力を込めて見せてね」
「後、ギルドの依頼はそこの掲示板をみるといいわ、大半の依頼は食料用の魔獣討伐かな」
早速3人は掲示板を見に行った
掲示板は3つあり、それぞれ随時募集と書かれた掲示板、臨時募集と書かれた掲示板、特別掲示板があった
随時と臨時は似た様な内容だが、随時の方が高額なものが多く、内容としては殆ど食材としての魔獣討伐で、報酬は2千〜10万ゴールド程
因みに遊亭で酔っ払った飲み物は、マンゴラという魔樹から取れる樹液で報酬は3万ゴールドとそれなりの値段だったりした
特別掲示板には超高額な依頼が並んでいた、ローグ討伐1億、ログソトホート討伐1千万、ディアブロ討伐2千万等々である
「あのローグって青年、とんでもない値段ついてるわね…」
「貴方達、ローグを知ってるの?」
後ろから受付嬢が話しかけて来て、3人はバッと振り返った
(全く気配を感じ無かった、アリスって只者じゃないわね)
「ローグは10年程前に、貴方達と同じ様にカジノで嵌められてね〜踏み倒して逃走して賞金が掛けられたんだけど、誰も討伐出来ないからどんどん上がっていって、その金額なのよ」
ナツキ達は、同じ様に型に嵌められたローグに親近感すら覚えた
「まあ、誰も達成出来てないから特別掲示板なんだからさ、地道に随時募集か臨時募集から選ぶ事をお勧めするよ」
「魔獣とか倒したら、その度に運ばなきゃならないから、大きいのだと1日1体しか狩れないんじゃ…」
疑問に思った事を聞くと、アリスはニヤニヤしながら何か言いたそうだ
「トゥットゥルー、回収カード〜♪」
おもむろに服のポケットからカードを取り戻した
「討伐した魔獣にこの回収カードを差し込んで、ギルドカードで触れながら魔力を込めると、回収班に魔獣の種類、位置、討伐した人の情報が伝達されるので、勝手に回収班が持って行ってくれます、但し、討伐金額から2割差し引かれるので注意してね」
たかだか2割引かれるだけで、運搬の手間が省けるのならと、3人は回収カードを受け取った
「後、各魔獣の生息地と特徴はそこの図鑑で見てね」
「何狩りに行く?」
「それなりの金額な、マンゴラにしてみない?」
「賛成〜」
簡単に倒せるなら打ち上げで飲めるかも、という期待もあって提案してみたが、同じ事を考えていたのか賛成された
図鑑によると、帝国北西の森にいるらしく早速行ってみる事になった
「あれじゃない?」
目的地に行って早々にマンゴラを見つけた。
見た目はウツボカズラを巨大にした様なものだった
「ヒィィ!」
マンゴラから、おびただしい数の触手が襲い掛かってきた
『エクス・カリ・バー!』
ナツキが放った光の斬撃が触手諸共マンゴラを真っ二つにしたのだが、中央にある樹液袋までぶち撒けてしまった
「あちゃー、これじゃあ買い取って貰えないよね…」
「次は触手から切り落としていかないとね」
それから半日探してやっと二匹目を見つけた
「や、やっと見つけた、今度こそ!」
と言うやいなや、案の定大量の触手が襲い掛かって来た
ナツキはクリ棒で、クーはエバーで、ムツキはルシファーの剣で触手を片っ端から切って落としていったのだが…
「あ、ありぇ?、マンゴラが、ぶんりぇつしてる〜」
3人は腰から砕けてヘタリ込み、触手が3人を捉えた。どうやら切った触手から出た分泌液には強烈な陶酔効果があるらしい
「や、やぁだ〜」
触手が3人の口に入ろうとした瞬間
「ワイの目の黒い内はやらせんで‼︎」
クリ棒が自らマンゴラへと飛んでいき、マンゴラの中央を貫き、マンゴラは絶命した
その後半日、3人はその場所で幻覚を見ながら悶え苦しむ事になったのである…
後日、図鑑の詳細欄を見た所、触手を切断した時の液体には気を付ける事と、一気に氷漬けにすると楽であるらしい
最悪は穴という穴から触手が入り込み、内側から食い破って絶命させるのだとか…3人はもう2度とマンゴラ狩りはしないと誓ったのであった
〜 10日後 〜
3人は、5000ゴールド程度の比較的値段の安い魔獣を狩りまくった、中には姿形が良く似ていて値段の付かない魔獣もいた
「後1匹倒せば20万ゴールドよ」
そして3人は必死に魔獣狩をして20万を稼ぎ出したのであった
「20万ゴールド確かに、又10日後お願いします」
何とか、利子は返したものの、これでは延々とタダ働きである
「どうにかしないと…」
特別掲示板をみると、1番安い欄は20万ゴールドのジーという魔獣の討伐であった
「や、やめようよ、きっとロクなのじゃないよ…」
「でもほら、1番安いのだし、このままだとずっとタダ働きだよ?クーちゃんはどう思う?」
「図鑑みてみたら良いんじゃない?」
図鑑によると、黒く平べったく、2足で歩き、それ程強くはないが、素早く大量の手下を引き連れているらしい
「マンゴラみたいな特に気を付ける記載も無いからいいんじゃないかな?」
何で20万ゴールドなのか少し引っかかったが、ジーを狩りに帝国南東の洞窟へと向かった
山の麓に辿りつくと早速洞窟が見つかり、3人は恐る恐る入っていった
「なんかジメジメして気持ち悪いね…」
あちこち苔が生えていて滑る中、奥へと進んでいくと、奥からカサカサと音がした
「何かいるわね、いくよ!」
逃げられても嫌なので、3人は駆け足で進んでいった
「やあやあ、餌の皆さんいらっしゃい」
洞窟の奥の岩に、黒く平べったく、手足があり、昆虫擬きが腰掛けていた…
「では、ごきげんよう」
ジーがそう言うやいなや、壁が一斉に蠢き襲って来た…それは全てゴキブリであった
「いやぁぁ〜、来ないでぇぇ〜」
3人はクリ棒やエバーでも触りたくないのか、ひたすらファイヤーボールを打ちまくった
ゴゴゴゴゴ…
すると、天井から嫌な音が…
「崩れる、逃げて!」
3人は一目散に来た道を戻り、見渡すとムツキもクーも無事の様だ
「倒したのかな?」
「確かめようがないね…」
結局丸1日精神を削られただけで、骨折り損のくたびれ儲けになったのであった。
ナツキ:「曖昧3cm、そりゃプニッて事かい、ちょ♪」
ムツキ:「それ何の歌?」
ナツキ:「もってけ!セーラー服って、らきすたのオープニングなんだけど、妙に頭に残っちゃって…」
クー:「あの歌そんな歌詞なんだ、甘〜い三振!だと思ってた」
ムツキ:「歌詞見ないと分からない歌あるよね、呪術廻戦の廻廻奇譚なんて、最初の方は念仏唱えてるのかと思ったし」
ナツキ:「念仏は酷いなw」