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神という名の  作者: クリアノート
3章 生と死
27/42

第27話 中居

〜 翌日 〜


「う〜頭痛い〜」


と、唸るナツキ


「も〜叫ばないでよ、頭に響くじゃない」


とムツキ


半目を開け口からヨダレを垂らして、死んでるんじゃないかと思う様に未だ寝てるクー


そこに、金髪でどことなくムツキに似た着物姿の女性と、ラグナロク前に地獄で出会った黒髪の袴姿の男性がやってきた


「よう、よく眠れたか?」


「う…確か…ルシファー様ですよね?」


頭痛で頭を抱えながらナツキが答える


「久しぶりだなお前達、元気か?あっちの世界で死んでこっちに来たんだから、元気、というのもおかしなもんか…


俺は此方の世界では、旦那と呼ばれるいるからそう呼んでくれ、あの後どうなったんだ?」


ナツキとムツキはあの後の顛末を話した


「そうか、おまえ達も苦労したんだな…」


と、シミジミ言われた


話しの途中で、着物の女性が旦那の袖を少し引っ張った


「ああ、悪い悪い話し込んでしまって紹介が遅れたな、彼女はこの宿屋の主人だ、お前等にはエデンと紹介した方が分かり易いかな?」


「エ、エデンって遥か昔に天国作った神様の事じゃ…」


「そう、そのエデンだ」


「やあねえ遥か昔だなんて、それじゃ〜まるで私がおばさんみたいじゃないの」


冗談めかして言っているが、少し本気も混じっており、旦那の背筋に寒気が走った


「こっちの世界では、遊亭の女将って呼ばれているので宜しくな」


旦那はサラッとスルーした


「てか、あんた達お金は持ってるのかい?」


と、女将さんに言われた


「まあまあ、いいじゃないか、ここは同郷のよしみで」


と、旦那がとりなすが


「考えてご覧、こんな弱そうな世間知らずの嬢ちゃん達が、無一文でこの世界渡っていけると思うのかい?」


押し黙る旦那、ふとナツキはここに来る途中の事を思い出した


「そういえば、この街に来る途中に青い髪のツノのある青年と、触手と目玉が沢山ある化け物に殺されかけたんだけど…ここの世界はあんなのばかりなの?」


「お前達良く生きてたな、運が良いのか悪いのか…そのツノのある青髪はローグ、触手と目玉のはヨグソトホートといって、この世界でも有数の化け物だぞ、見かけたら真っ先に逃げ」


と、そこに女将が割って入った


「これからヨグソトホート位は退治出来る位に鍛えてあげるからね、キッチリ働くんだよ!」


どうやら女将さんの中では、ナツキ達を鍛錬する事が既に決定しているらしい


「「「え〜」」」


と三人


「え〜じゃない!、返事はイエスマム!、いいね!」


目で旦那に助けを求めたが、顔を逸らされた…どうやら逆らえないらしい


「「「イ、イエスマム!」」」


こうして遊亭での、3人の仲居生活が始まったのである


〜 1ヶ月後 〜


「し…死ぬ…」


ナツキ達3人は料理を両手で持ちながら、高速で飛び回り配膳している最中である


少しでも休憩しようものなら、女将さんから激が飛ぶ


「そこ、止まってるんじゃないよ、サッサと動く!」


「イエスマム!」


昼間は休む間もなく働き、夜は夜で旦那から訓練を受けていた


「ムッちゃん、クーちゃん、同時に行くよ!」


3方向から旦那に向けて同時に斬りかかるが、旦那はムツキに突進して下に潜り、ムツキの溝尾に剣の柄をめり込ませた


「ゲフッ!」


そして尚も斬りかかって来たナツキの側面に瞬時に移動して腹を蹴り上げ、アワアワしているクーの首に手刀が走った


「もー、私達は旦那みたいな化け物じゃないんだから、もう少し手加減してよ〜」


「お前達な〜試しに女将とやってみろよ、半殺しにされるから、化け物っていうのはああいうのを言うんだよ」


「へ〜」


旦那の後ろから不吉な声が聞こえ、旦那が恐る恐る振り向くと


「グハッ!!」


まるで見えない飛行機にぶつかった様に、錐揉み状に吹き飛んでいく旦那


「こんな可憐な女性を捕まえて、化け物は無いわよね〜」


女将は3人に同意を求め、3人は高速で首を縦に振った


その後、ヘトヘトになって寝室に戻り布団にダイブした3人は


「私達何してるんだろう…」


「さ、3ヶ月の辛抱だよ」


「とりあえず3ヶ月働いて貰うからねって言っていたしね」


とりあえず、の意味は良く考えない様にしていたのであった


〜 2ヶ月後 〜


「この3ヶ月の間、私の暇つぶ…いや良く働いてくれた、これで君達は何処に行っても、立派な仲居としてやっていけるだろう!」


「「「イエスマム!」」」


一糸乱れぬ敬礼と返事に、女将は満足げである


他の仲居は


「あの3人よく逃げたさなかったわね、変態じゃないかしら」


とヒソヒソ話をしていた。


(何度も逃げ出したよ!連れ戻されたの!!)


と、心でツッコミを入れた


「ここで、君達の成果を見せてもらおう、もし、もしもだ、万が一、無いとは思うが、不合格者だった場合は、もう3ヶ月働いて貰うから、心してかかってくれ!」


「「「イ、イエスマム!」」」


不安が増加していく3人


「試験は、そうだね…3人でかかって来て、私から1本とる事」


3人の顔は血の気が引き蒼白となり、目で旦那に助けを求めた


「そ、それはあまりに酷じゃないか?」


「そう?、それじゃあ私に木刀が少しでも掠ったらにしましょうか」


(変わらないよ、地獄に逆戻り?絶対嫌、私達はここから出るんだ!)


声に出さずとも3人は同じ決意であり、頷いた


そして女将さんを3方から取り囲む


「このコインが落ちたらスタートだよ」


と、女将はコインをトスした


落ちた、と思い突っ込む3人であったが


落ちる寸前で、コインが地面に落ちずに、中空で回り続けている


しまった、と前のめりで静止する3人であったが、その直後コインが落ちた


バランスを崩した所に、女将さんは易々と各個撃破していったのである


そして、女将さんはニッコリと微笑みながら


「まだまだ甘いわね、又3ヶ月宜しくね」


「「「イ、イエスマム!」」」


涙を流しながら、答える3人であった


〜 1年後 〜


「旦那、今まで4回の対戦を見て、女将を攻略出来ると思う?」


明日、かれこれ5回目の挑戦である


そして挑戦する毎に変化した事がある、観客が増えていった事だ


女将は遊亭の評判を落とさない為か、1回目の様な反則とも取られかねない行為や、周囲に被害が出る様な魔法も使えないでいる


又、観客に楽しんで貰える様にする為だろうか、私達の目で追えない様な速度で動く事も無くなったので、もの凄いハンデを貰っている…はず…なの…だが…


「正直に言うと、絶望的だな…」


「そ、そんなに私達ダメなの?」


「お前等がダメだと言う訳じゃない、女将が強すぎるんだ…簡単に言うとだな、野生のトラにヒヨコが3匹立ち向かう様なもんだ」


「「「…」」」


「だが、相手の土俵で戦う必要は無い、裏を突けば万に1つ位なんとかなるかもしれない」


そう言って作戦を練ったのであった


〜翌日〜


「今日こそ1本取らせて貰うわよ!」


「ふふん、こんないいオモ…仲居を簡単に手放すとは思わない事ね」


周りには観客で埋め尽くされており、凄い声援である


ムツキは女将の上空に待機し、ナツキは旦那の観戦する方向で待機し、クーはナツキの後ろで待機している


女将は例の如く、開始を始めるコイントスをした、と同時に上空からの猛烈な風により、コインが地面に叩きつけられた


「なっ!」


と、女将が意表を突かれ、3人が同時に女将襲いかかる、と同時に旦那からも巨大な魔力が放出された


この瞬間、いくら旦那が巨大な魔力を放出したとしても、女将の目には全ての魔力の流れが見えており、状況を瞬時に判断した


・上空からはムツキが木刀に魔力を込めて襲いかかって来る


・クーはナツキの横から片手を出して魔力の籠った網を投擲して、足止めを行う


・旦那は魔力を放出しているが、魔力を分かりにくくする為のただの目眩し


・ナツキは旦那の目眩しに紛れて魔力を込めた木刀で斬りかかって来る


・実は上記の全てが陽動で、ナツキの後ろのクーが魔力の籠った木刀で襲いかかって来る


因みに、木刀に魔力を込めるのは、込めて無いと簡単に切断されてしまうからである


女将はクーの網を木刀に魔力を込めて切り裂いた


上空からのムツキの斬撃をムツキ毎木刀で吹き飛ばした瞬間、シュッとムツキの後ろから飛んで来た木刀が肩を掠めた


実はムツキ背中にクーの木刀を簡単に切れる糸で繋いでおき、クーは糸を木刀の形に固めた物に魔力を込めてカモフラージュしていたのである


女将としてみれば魔力も込められていない木刀など、当たったとしても全くダメージの無い攻撃である


女将が魔力が込められた木刀に、注意を向け過ぎていた為、完全に不意を突かれた形となった


「クッ、まさか私が不覚を取るなんて…それもこれも」


キッ、と旦那を睨む女将、旦那が魔力を放出していなければ、女将は魔力に注意を向け過ぎる事もなく、ただの木刀も躱す事が出来たであろう


「「「や、やっと…長かった…」」」


と、泣いて喜ぶ3人


「ま、まあ仕方ないわね、約束は約束よ貴方達良く頑張ったわね」


こうして、遊亭という名の地獄から3人は抜け出せる事になったのであった。

ナツキ:「ジャジャン!」


ムツキ:「ん?」


ナツキ:「あ、いや…某CMで登場シーンの効果音の練習してたから、私もやってみようかと…」


クー:「トゥットゥル〜♪、これじゃない?」


ムツキ:「いやいやいやこれでしょ、シャビデ・バビデ・ブゥ♪」


ナツキ・クー:「「シャビデ・バビデ・ブゥ♪」」

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