第23話 合流
〜 極楽から逃避中のナツキ達 〜
((そっちはどんな状況?))
司達は地獄から問題無く逃げ出しているので、ヒカリ(ミカエル)はあかり(クー)に聞いてみた
((まだ移動中だよ、あ、何か光が見えて来た、やっと外かも!))
ナツキ達は仏様達と極楽の地下通路をかれこれ半日は歩いていた、飛んでいけたなら1時間とかからない距離ではあったが、仏様の半数が飛べないので、護衛しながら一緒にトボトボと歩いていたのである
クーが走って光の射す方に走って行くと、そこは何の変哲もないただの密林であった
「ここが終点?」
「いや、もう少し進んだ所に集落があって、非常時に互いの所に避難出来る様に密約を結んでいる」
インドラが護衛隊の責任者に指名され、先頭を歩いて案内してくれている
更に密林を進んで行くと、大きな木をそのまま住居にした集落らしき場所に辿り着き、中から耳の長い人間が数名現れた、エルフである
なんというか、想像に違わぬ美男美女ばかりだ…
「仏様方、ご無事でしたか!」
慌てて駆けつけた所をみると、どうやら戦争の事は知っている様であった
集落の中に通された一行は、要職の仏様と護衛隊長のインドラ、そしてナツキ達も集落の長の家に呼ばれた
中には豪勢な食事が用意されており、直ぐにでも齧り付きたい様子のクーであったが、ヒカリから邪魔が入った
((そろそろ到着したんじゃない?))
((やっと着いたよ〜))
((今いる場所は、見つかり難い場所なの?))
((密林の中で木の中に住居を作っている様な場所だから、上空からは見つけられないんじゃないかな))
((それなら良かった、実は、地獄が魔界軍に占領されちゃったのよ。
司達は無事逃げ出して、天国に向かって貰ってるのだけど、どうやらオリンポス・冥界・魔界が結託して霊界を統一しようとしてるから、目ぼしい場所は片っ端から潰されかねないわ))
話を聞いたクーは、オークの村が襲われたかもしれないと、血の気が引いた
クーはナツキとムツキ、インドラに事情を話して、料理を片手にエルフの村を飛び出し、オークの村に飛んでいったのであった
オークの村へと飛ぶ事10日、やっと見えて来た…かつてオークの村があった場所が
そこはクレーターが出来ていて、更地と化していた…
クーはその光景を眺めると、絶望感に打ちひしがれてへたり込んだ
ひっとしたら…と、ナツキはクーを引き摺ってドラゴンの洞窟に向かい、叫んだ
「エバ〜〜〜‼ ジル〜〜〜‼」
すると、中からエバーとジル達が出て来たのである
「み、皆んな! 大丈夫だったんだね!」
「ああ、お前さん達が出かけてから、中央広場からドラゴンの洞窟まで地下の避難通路を作成する例の計画を進めていて良かったよ」
「ただ、咄嗟に村人全員逃げ込んだのはいいが、作成途中だったから暫くモグラみたいに地下を掘り進める羽目になったけどな」
「村は壊滅したが、又立て直せるさ!」
と、再開を喜んだのであった
「これからだけど、村を再建する?」
「オリンポス、冥界、魔界が支配しちゃったら、オークの村再建しても又直ぐに壊滅しちゃうよ…」
「次は逃げられないかも…」
「天国落ちたら、もう逃げ場なくなっちゃわない?」
暫く沈黙が続き
「仕方ないか」
「仕方ないよ」
「そうだね、天国でヒカリ達と合流するか」
と、天国での決戦に参戦する意思を固め、ナツキ、ムツキ、クー、エバーで天国へ向かう事を決めた
この事をジル達に話した所、豚ジル戦隊も一緒に行くと聞かないので、豚ジル戦隊も加わる事となった
コックピットにクー、口にナツキとムツキ、手のひらにトンジル戦隊を乗せたエバー
全力で飛んで貰ったお陰で、天国までは6日程で到着し、予めヒカリに連絡してあったので大歓迎で天国に迎えられた
「久しぶり!」
と、ヒカリがクーに抱きついて来た
かなり久しぶりではあったが、なんだかんだ通話していたのでそんな感じはしないクーである
「あれ?あなたは…」
極楽でナツキ達を案内したルドラがいた
「お前たち、仏様達を無事エルフの隠れ里まで届けてくれたそうだな、主に変わりお礼を言う」
「極楽はどうなりました?」
首を振るルドラ
ルドラは、極楽での戦闘の一部始終を天国に伝える使命を言い渡されており、弥勒菩薩がエクスプロージョンで自爆したのを見届けて、抜け穴を通りその後天国に報告に駆けつけた
その後、ヒカリと司が連絡を取り合い、地獄軍も参戦してくれる運びとなった
最初、司以外の魔王達は反対していたが、もし天国が落とされてた場合には、行く宛も無くなり全滅をさせられるか、奴隷の様な扱いを受ける可能性が高い事を説明すると渋々納得してくれた
これにより
・地獄軍が間に合えば天国・地獄の共同でオリンポス・冥界を迎撃する
・間に合わなければ遅滞戦闘を行い、地獄軍を待って挟撃する
・開戦直後に本隊へのカメハメ派を全力で打っ放しても効果は見込めないので、牽制程度にしておく
といった方針で決定したのである
〜 3日後 〜
「人がまるで羽虫の様だ…」
厳密に言うと人ではないし、勿論羽虫ですらないが…オリンポスと冥界の大群が天国から視認出来る程度の距離まで迫っていた
ルドラの報告によれば、極楽には正式に戦線布告をしたらしいので、今回もそうなると予想されるが、確定事項ではないのでいつ戦闘になってもよい様に天国では既に陣を展開し終えていた
頼りの綱である地獄軍は間に合いそうにも無い為、出来る限り開戦を遅らせて挟撃する算段である
「あ、これ美味しい〜」
クーはといえば、天国からくすねてきた果物を片手に、寝そべってくつろいでいたりする
まあエバーに乗り込んでイケーとか叫んでるだけだから、どうせ変わらない…
大群が近いて来ると、その全貌が露わになってきた、中央から左半分は西洋風の鎧に白い翼が殆どで、右半分は黒い鎧に黒い翼と、左右で対称的な異様とも思える光景であった
そしてその中央には、遠目からでも判るほど煌びやかな装備を纏い、強大なオーラを放つ者達がいた、軍の中枢であるゼウスやハーデス達であろう
「ん〜、今すぐロンギヌスをあそこにぶち込みたいんだけど、ダメかな、かな?」
「ぶち込みたい気持ちには激しく同意なんだけど、開戦してない内にやっちゃうと、敵からエバーを差し出す様に請求されて、ヒカリは断れないんじゃないかな…」
「マズイか…」
と、悔しげに睨みつけていた
一方、オリンポスでは
「ゼウス、私が見た巨人はあれですわ、きっとあの側にルシファーの剣を持った者がいるに違いないですわ」
「そうか、なら探す手間が省けたな、ヘラとアテナは巨人の討伐にあたってくれ、だが、2人1組で片方は防御に専念してくれ」
この様な作戦を立てたのは、弥勒菩薩との戦闘で自爆攻撃を喰らい、ゼウスとハーデスは深傷を負った為である。その治療に時間がかかり天国に来るのも遅れてしまった
もし、あれが他の者であったなら消滅していた可能性があり、2人1組で片方が常に防御しておく必要があると判断したからに他ならない
それから暫くの後、天国に一番近い地表上空を敵軍が埋め尽くし、その中からゼウスとハーデスが出て来て叫んだ
「既に我らは、極楽を制圧した、そして天国に対して戦線布告をする」
「30分後に一斉攻撃を仕掛ける、死にたくない者は逃げ出すがいい!」
極楽を制圧した事を知らなかった一般兵にざわめきが走った
30分というのは末端まで情報を開示していない場合、混乱が収まる前に攻撃したい意図があったのだが、少しでも時間稼ぎがしたい天国としては痛手であった。