第20話 襲来
「舞空◯だ〜」
はしゃいで飛ぶクー、本人は悟◯の様にカッコ良く飛んでいるつもりなのだろうが、下半身は蜘蛛で地上を走っている時の癖なのだろうか、忙しなく脚が動いていて非常にシュールである
(私はもっと華麗に飛んでいるよね)
かくいうナツキも下半身の尻尾がウネウネと動いているし、ムツキも四足歩行で空を走っている感じなので、似たり寄ったりであるが、飛ぶ練習を試行錯誤する事2週間、なんとか変身して飛べる様になった3人であった
「本当に来るのかな〜?」
「レビィみないなのが来たらやだなぁ〜」
なんて言いながら見張っていたが、結局現れず、次の日も現れ無かった…
「見上げるの飽きた〜」
「もう見張って無くていいんじゃない?」
なんて言ってた矢先、それは現れた
禍々しい妖気を纏い、対照的に神々しい巨大な盾を持ち、黒いドレスを纏い、長い黒髪で赤眼の女性が…
「ナツキちゃん、物凄いの来たよ…」
「ちょっと、あれダメなやつじゃ…」
「レビィと、どっこいかも…」
着物の女性は村の中央の上空で停止すると
「折角この私が忠告して上げたのに、無視するとはいい度胸ね、消炭になりなさい!」
女性が片手の扇子を掲げると、3つの火の槍が現れ、民家に落としたのであった
「ナツキちゃん、このままじゃ村が消滅しちゃうよ!」
「任せて、私のクリ棒が火を噴くわ!」
『エクス・カリ・バー!!』
クリ棒から放たれた光が、ドレスの女性を襲った…が、盾で防がれ光が消滅した
「へ?」
間の抜けた言葉がナツキから漏れ出る
それもそのはず、不意打ちであったし、そもそも盾なんかで防げる攻撃ではないと確信していたからである
「あら、雑魚ばかりだと思ってましたが、少しは生きの良いのが混じってるみたいね、我が名はヘラ、冥土の土産に覚えておくといいわ!」
扇子を振ると、3本の炎の槍が飛んで来た
ナツキ達は空に飛んで槍を避けた
空飛ぶ半トラ、空飛ぶ半ヘビ、空飛ぶ半クモ…化け物を見たかの様に若干引きつるヘラ
『ファイヤーボール!』
『エクス・カリ・バー!』
クーからバレーボール程の火の玉と、ナツキから光の剣撃がヘラを襲う…が、盾で防いで何のダメージも無い様に見える
その間にムツキは包まれた布を取り外した
布で包まれていた物は何処かで見た事があった…ルシファーが投げ捨てた剣である
ムツキがその剣に魔力を込めると、剣にドス黒いオーラがほとばしる
ヘラはマズイと感じたのか、扇子を振り3本の炎の槍がムツキを襲うが、ムツキは3本の炎の槍を叩き切ってかき消し、そのままヘラへと斬りかかった
ヘラは盾を掲げて防ぐが、吹き飛ばされ地面に叩きつけられ、片膝をついた
「そ、それはルシファーの剣!?」
「エヘヘヘヘ、いいでしょ〜ルシファーが捨てたのを拾ったのよ」
ルシファーが大天使5人と退治した時に、エデンの剣を使う為に捨てた…と言っていいのか分からないが、ルシファーが光の粒子になっていってる最中、ムツキは落ちた場所へと走り、必死に剣を探したのである……
後に天使と悪魔が必死に捜索したが、見つからない訳である
「この盗っ人が!」
ヘラの上に火の鳥が現れ、ムツキを襲う。ムツキは剣で叩き斬るが、火の鳥が爆発して黒焦げとなりながら転がる
「死になさい!」
ヘラが周囲に5羽の火の鳥を作り出している隙に
「クー、行くよ!」
ナツキはクリ棒を投擲し、クーは両手にバレーボール程の火の玉を作り出し
『ファイヤーボール!』
ファイヤーボールは盾で防がれたが、クリ棒は5つの火の鳥を貫通し、火の鳥が大爆発を起こした
「く、覚えておきなさい!」
3人共吹き飛ばされて転げ回ったのであるが、爆心地で一番ダメージを受けたヘラは、よろめきながら立ち上がり北東の方へと飛び去ったのであった
((で〜、何とか追っ払ったんだよ〜))
これまでの経緯をヒカリに伝えたクーであったが、ムツキがルシファーの剣を使った事を話すと、あきれ果てた様に返還する気があるかどうかムツキに尋ねる
((ルシファーが捨てたから拾っただけ!捨てられた物は拾った人の物なの!))
クーの肩に触れて、全く返す気がないと答えるムツキ
((今一度確認したいのだけど、その人物はヘラと名乗り、ナツキの剣やルシファーの剣でもキズすら付かない大きな盾を持ち、南西に向かって行って2週間後に戻って来て村を襲い、北東に逃げて行ったと…間違いない?))
((間違いないよ、何あの盾、硬過ぎなんだけど))
((多分その盾はアテナの盾ね、アテナの盾をヘラが南西に向かって2週間戻ってこなかった…))
考え込むヒカリ
((元々ナツキ達が居なかったらルシファーに勝つ事が出来なかっただろから、戦利品としてムツキが剣を得る資格は無い…とはいえなくもない…
そこで、三つお願いを聞いてくれるなら、そのままムツキが所持して良いよ
何なら剣の鞘も持っているから、オマケしてあげるけど))
とヒカリに言われたムツキは正式に剣が手に入り、しかも鞘まで手に入ると、大喜びである
有無を言わせず、ナツキとクーの了承を得たのだが、ナツキとクーは又ヒカリのお願いか…と嫌な予感がしてならなかったのであった
「んじゃ、一つ目のお願いとして、極楽で阿弥陀如来に会いに行ってね」
「極楽って天国とは別だったっけ?」
「一緒だと思ってる人はいるけど、別だよ」
ヒカリ(ミカエル)によると、まず天国が出来、そして地獄が出来た、そして極楽、魔界、オリンポス、冥界と別れ、現在この霊界には、6つの勢力(六道)が存在する
天国(天道):ミカエル、ガブリエル、アリエル等が治める善人のみの世界
極楽(人道):阿弥陀如来、観世音菩薩、帝釈天等が治め、説法を説いて人々の考え方を変えてより良い世界にしていく、という考え方に共感した者が集まった世界
オリンポス(修羅道):ゼウス、アテナ、ポセイドン等が治め、修練し鍛錬する事で人々の心技体を鍛え、より良い世界にしていくという考えに共感した者が集まった世界
地獄(地獄道):今はなきルシファーが治めていた、人は苦痛を味わう事でしか改心出来ない、という考えの者が集まった世界
冥界(畜生道):ハーデス、ペルセポネ、タナトス、ヒュノプス等が治め、永遠と互いに殺させ合い、争う事の虚しさを自ら悟らせる事を目的とした世界
魔界(餓鬼道):サタン(第六天魔王信長)、リリス、アスタロト、バール等が治め、現世での罪の重さにより空腹にさせる呪いをかけ、人を喰らうと他人の罪まで己が背負って醜く姿を変えていく。その醜さを実感する事で改心させる事を目的とした世界
そして、天国が地獄と敵対していた様に、オリンポスと冥界、極楽と魔界がそれぞれ敵対している構図であるという
((私や大天使が行くと他の勢力に不信感を与えかねないし、クーちゃんが私と繋がってて触れるだけで直接話が出来るから、うってつけなのよ
天国よりは好戦的なのが多いけど、神側の勢力だから、巨神兵さえ連れて行かなければ、大丈夫の…はず…だよ?))
何で疑問形なのよ、という意見もサラッとスルーされ、極楽行きが決定したのであった