第17話 ルシファー
「どうです?流石の貴方でも5対1では勝ち目は無いのでは?」
「このままであれば、そうかもしれないな…出来れば使いたく無かったが、まだ死ぬ訳にはいかぬのだよ」
と言い放ち、今まで使っていた剣を捨てた。
「お!」
「へ?」
「え?」
ナツキとムツキが見つめ合う
ムツキが何か言ったっぽいが、よく分からないので、ナツキは聞かなかった事にした
ルシファーは腰にかけていた、もう一振りの純白の柄の剣を引き抜いた
ミカエルは遥か昔、その剣を見た記憶があった
「そ、それは、エデン様の剣!」
「そう、これはエデンが愛用していた剣だ、そして我が力の大半を封印しておいた剣でもある」
ルシファーが剣を天に掲げると、剣から発せられた光がルシファーに吸い込まれ、ルシファーの羽が、黒からグレーに、更に光輝く銀色へと変化し、2枚であった羽が6枚へと増えた
「これなら5対1でもやれそうだと思うのだが、どうかな?」
大天使達は愕然とした、余りにも隔絶した力に、勝負にすらならないと感じたからである
ミカエル(ヒカリ)もその内の一人であった為、自身が即座に殺されて戦争の早期決着を図る事を決意し、クー(あかり)に意識を飛ばす
((ごめんあかり、あれはムリ、又一緒にご飯食べたかったな…))
((何か倒す方法無いの?元◯玉とか))
((残っている天使達から力を集めてる間に、全滅しちゃうよ))
「ナツキ、ミツキ、エバー、クリ棒、ヒカリへ魔力を送りたいの、協力して!」
「「「了解!」」」
((ヒカリ、今からありったけの力を送るから、それを私のイメージする通りに具現化させて!))
((え?))
クーから魂のパス経由でイメージと膨大な魔力がヒカリに入って来た
クーはエバーの炎の槍のイメージをしたのであるが、ヒカリの右手に魔力が集約して出来のは、黄金の輝きを放つ槍であった
それを見たルシファーは感嘆の声をあげた
「ほう、エデン以外で私を倒せる可能性がある者がいたとはな」
ベルゼブブ(司)はヒカリが作り出した黄金の槍を見て、ナツキが投げたクリ棒が旋回して自身の脇腹を切り裂いた事が頭をよぎった
「ルシファー、その槍は追尾式だ!」
と叫んだ
ヒカリは一瞬躊躇した
もしかしたら出来ないか、と考えた為だが無理だと諦め、全ての魔力を込めて放つ
「いっけ〜!!!」
槍は、黄金の流星の様な輝きを放ちながら、ルシファーを襲う
ルシファーは避ける事は出来たが、ヒカリの一瞬の躊躇が、追尾式がバレたからだと勘違いした為、エデンの剣に魔力を込めて槍を迎撃した
黄金の槍と、銀のオーラを纏った剣がぶつかり、辺り一面を眩い光が放たれ、敵も味方もそのあまりに幻想的な光景に一瞬見入ってしまった
槍と剣は完全に拮抗した
大天使5人は、これが最後チャンスとばかりに上下左右から同時に斬りかかる
すると、ルシファーは大天使5人に意識を取られたのか、剣からほんの僅かではあるが、魔力が薄まり
ピシッ…パッキィィィィィン!
エデンの剣が砕け、黄金の槍がルシファーの体の中央を貫きいた、と、同時に槍の直線上にいたウリエルとカマエルは巻き添いを食くらい体半分が吹き飛んだ
「ウリエル、カマエル!」
落ちていくウリエルとカマエルの体は崩れていき、消滅した
「ま…まだだ…我はエデンから託されたのだ…終われない!」
ルシファーからドス黒いオーラが立ち上り始めた
だが、折れた剣が光の粒子となり女性の形を作っていき、ルシファーの頬を優しく撫でると、ルシファーは指先から光の粒へと変化していくと、ルシファーの険しい顔が安らぎに満ちていく
「そう…か……お前と同じ所に行けるのだな……やっ…と……」
ルシファーは光の粒子となって消え去った
絶対的支柱であるルシファーを失った地獄軍は戦意を失い降伏し、これにより天使軍が勝利したのである
天使軍の損害:一般兵4割死亡、大天使2名死亡、5名重傷
悪魔軍の損害:一般兵8割死亡、魔王2名死亡、5名重傷
〜 エバーの口の中 〜
「ヒカリ(ミカエル)も司も無事で良かった〜」
「ただ、両陣営ともかなりの死者がでたけどね…」
ナツキはムツキに同意を求め様としたのだが、ムツキはいつのまにやら居なかった
「あれ?ムツキちゃんは?」
「いないね…」
それから少し経って
「ちょっと野暮用で〜」
と、ニコニコしながらムツキは戻って来たのであった
〜 とある玉座 〜
「まさか、あのルシファーが破れるとはな、数千年の間に平和ボケしたか?」
「陛下、ルシファーが居なくなった今、ルシファーと結んだ条約は無効になったのでは?」
「そうだな、我々も動く時がきたようだ」
〜 高い木の上で佇ずむ少女 〜
仮面を付けた少女が呟く
「折角私が苦労して画策したのに、ルシファーも案外情け無かったな……今度はもう少し楽しませてくれないと」
2大勢力が潰しあい、更にルシファーという巨星が落ちた為、霊界は混沌の時代へ落ちていくのである。