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神という名の  作者: クリアノート
1章 天国と地獄
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第15話 創世記:神と呼ばれし者

〜 創世記 〜

これは天国や地獄すら無く、殆どの人々は集落をつくり猛獣や恐竜の脅威に怯えながら暮らしていた遥昔のお話


「又、貴方ですか…」


エデンはルーシェとかいう頭のオカシイ男に付き纏われ、いい加減ウンザリしていた


エデンは背中に白い羽を生やし、背中まであるストレートの金髪と碧眼で、見る者を虜にする程の美貌を兼ね備えた少女で、一方ルーシェは黒のボサボサの短髪と黒い瞳、背中に6枚の銀の羽を持った少し目つきのキツイ青年であった


ルーシェはエデンに出会うまでは負け知らずで、自分が最強だと信じて疑わなかったのだが、エデンに戦いを挑み、かすり傷1つ付けられず見逃され、プライドをズタズタにされた


エデンからしてみたら、力や魔力はそこそこだが、ろくにコントロール出来ておらず、適当にあしらっただけだったのだが…


エデンは、自分は半分優しさで出来ている!と自負していたが、ルーシェが余りにもしつこいので、最近は半殺しにしていた


〜 数分後 〜


「いい加減にしませんか?」


「俺はお前に勝つまで、何度でも挑戦する!」


と、今回も半殺しされたルーシェであったが、止める気はサラサラないらしい…


「はぁ…」


と、そこで何か思い付いたのか、ルーシェに提案した


「これから貴方を仮死状態にして、現世に送り込みます


死んだ後の世界に天国という空に浮かぶ楽園がありそれを広める事を、潜在意識植え付けるので、現世で広めて来て貰います」


「は、誰がそんな事するかよ!」


ズタボロで身動きすら出来ないのに、イキがるルーシェ


「ん〜、それなら氷漬けにして、雪山で永遠に放置するのと、どっちいい?」


「現世…」


エデンなら本当に永遠に氷漬けもやりかねない、と思ったルーシェは小さな声でボソっと言った


「き・こ・え・な〜い!、やっぱり氷漬け?」


「現世で!」


こうしてルーシェは、仮死状態にされ現世送りにされる事が決まり、現世で人間として生を受け、潜在意識に従い天国の噂を広めたのである


戻って来たルーシェは、又エデンに挑んで敗れ、現世に行き天国の噂を広げ、を幾度か繰り返した


すると、霊界にも変化が起きた、北の最果ての地に巨大な木が生え、そしてその木を中心とした広大な土地の境に亀裂が入り、次第に空に浮かび上がっていった


エデンはそこを天国と名付け、白い翼を印象付けながら人々を天国へと運んだ。


又、天国に来た魔物を掃討し、簡素な家を作り匿ったりもした


天国に避難して救われた人々は、エデンを神と呼び、敬い、尊敬した


ルーシェはというと、現世での口コミが必要なくなったからなのか、それともエデンがルーシェをこき使った自責の念に囚われたからなのか判らないが、半殺しにされる事が無くくなり、次第に決闘というよりは稽古をつけて貰う様なり、エデンにずっと付き纏った


長き年月が経ち、天国は巨大な都市の様相を呈していく


ルーシェは何の心境の変化か、それとも気紛れか、エデンと共に天国へと人々を移送していった


ルーシェは人々に神に最も近しき従者として認識される様になったのであるが、エデン以外からルーシェと呼ばれる事を嫌い、他の者にはルシファーと呼ばせる様になったのである


〜 天国が出来てから数十年後 〜


天国では、白き翼を広げるエデンに憧れを持ち、一部の人々からも白き翼を出してエデンを助ける者が出始めた


彼らも天国の使いという意味で、天使と呼ばれて尊敬されていった


天使達も効率的に動く為、統括して指示する者、戦闘が得意で魔獣狩りを指揮する者等、組織化してゆき、必然的に役職なども生まれていく


だが、天使への崇拝が強くなるにつれ、天使になれない者から妬み、やっかみが生まれ、人々の間に亀裂が入っていく事となる


特に、半人半獣の者達は、力が有るにも関わらず天使とは異なり尊敬される事が無く、度々衝突して関係が悪化していった


そして遂に、半身半獣の者が誤って天国の住民を殺害してしまい、半身半獣の者を天国を追放するべきだ、という意見が生まれて多数の者達が賛同した


これとは反対に、天使の中にも半身半獣の者達に同情し、犯罪を犯した者だけを処罰するべきだとする意見に賛同する者達もおり、天国での意見が真っ二つに別れたのである


もしこの時、エデンが大衆の前に現れ、演説したのであれば、大衆はエデンの言う事であれば、と納得したのかもしれない


だが、この時エデンは衰弱して床に伏し、ろくに話しすら出来ないでいた


本来、この霊界では病なんてものは存在しないはずなのだが、人々を救おうとして作った天国での諍いに心を痛め、それが体まで影響が出たからなのか、それとも別の理由があったからなのか、誰にも分からなかったのである


ルシファーは衰弱していくエデンの傍らから、一時も離れようとはしなかった


その間に対立は激化し、ついに戦争へと発展した、これが後の世で言われる聖魔大戦である


この大戦では両陣営とも甚大な死者を出したが、半身半獣追放派が勝利を納め、半身半獣であった者は1か月の猶予期間中に天国から出て行かなくてはならなくなった


エデンは事態の顛末を聞くと、深く嘆き悲しんだ


数日後、エデンは重い口を開いた


「ルーシェ…最後にお願いを…」


「縁起でもない事言うんじゃねぇよ!」


と、エデンの手を握りしめるも、エデンは首を振った


「私はこの世界では異端の存在です…現世に転生する事もありません…天国から追放される人々をお願いします」


そう言うやいなや、エデンは光の泡となって消えたのであった


「俺は…1度だって…お前に…」


項垂れたルシファーは、この気持ちを何処にどうしていいのか分からなかった


だが、エデンの最後の願いだけは叶えてやりたかった、そして追放される人々を連れてこの天国を後にしたのである


エデン、ルシファーがいなくなり、更に聖魔大戦で戦える者が多数死んだ為、天国の防衛は不安に思った為、ルシファーは天国を出る時に、エデンが愛用していた剣を天国の象徴である巨木の中に剣を刺した


すると、天国を守る様に巨大な雲が出来たのであるが、天国の者は、これをエデンの加護だと信じたのである


ルシファーは天国と決別した証としてか羽を黒くして、追放された人々を連れて果てどない旅に出た


ルシファーと追放された者達は、一度は集落を作り暮らしていたのだが、人が多過ぎて集落が広大になり、少なからず被害が出てしまっていたのである


そこでルシファーは、天国を作った時と同じ手法を用い、部下達を仮死状態にして安住の地を作る事にした


但し、天国で学んだ事であるが、人は飴だけあげていると、つけ上がる弱い生き物である


鞭として、恐怖の対象として、地中に恐ろしい地獄という国があり、現世で悪業を働いて者のみが酷い目に合うという噂を広めた結果、天国とは正反対の場所に巨大な洞窟が出来上がる


天国とも時をかけて話し合った結果、現世から戻った者を識別して、悪業を働いた者は地獄に、善良な行いをした者は天国に、定期的に人を交換していく事になった


最初地獄では、悪事を働いた者を直ぐに殺して、現世に戻していたが、現世で又悪事を働き戻ってくる為、死ぬ手前で治してを繰り返して苦しみを魂に刻む事で、戻って来る確率を大幅に減らす事に成功した


又、恐怖を刻む事で、悪魔が信仰に近い力を得られたのは、棚から牡丹餅でもある


その後、新たに天国で頭角を現したミカエルと統治の仕方の意見が違う者達が、天国から離脱して極楽とオリンポスを作り、地獄からもルシファーと意見の違いからか、離脱した者達が、魔界と冥界を作った


この6つの勢力が俗に言う六道であり、霊界で殆どの人々が暮らす事になる場所なのである。

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