第12話 紅の司
「最初からエバーが飛べる事が分かってたなら、行きも早く着いたよね…」
エバーを置くならドラゴンがいた洞窟がいいのでは、という話しになり一旦古巣へと戻る一行
1年程かかり漸く辿り着いた天国であったが、帰りはエバーに乗って飛んでいたので、あっという間である
途中、ハリネズミの村にも立ち寄って一晩を過ごしたりしたが、そろそろ古巣に到着しようとした時、空中に佇む人影があった
それは、黒の上下にハエの様な黒く丸い羽を生やしていた、何処かで見た様な…
「ちょっ、司!」
エバーの中から、クーが叫んだ
「俺を司って呼び捨てにするのは、あかりか?ヒカリか?」
「あかり(クー)だよ、こんな所で何やってんの?」
ベルゼブブである司がこんな所にいた…ドラゴンの時といい、放浪癖でもあるのだろうか…
地上に降りて、クーがエバーのコックピットから顔をだした
「何やってるも何も、お前こそ巨人に乗って何やってんだよ」
司もクーの隣に降りたった。
「俺は、巨人を従え世界を救う救世主が現れた、なんて噂があったから確かめに来たんだが、あかりがそうなのか?」
「私が救世主?無い無いw」
「そうだよな、お前みたいなドンクサイのが救世主な訳ないよなw」
「私は、ドンクサクなんかないよ!」
「全く避ける素振りすらなく、バイクに跳ねられて死んじゃったヤツが良く言うよ!」
「う…」
クー(あかり)は返す言葉が見当たらないらしい
「因みに、おまえを跳ねたヤツは始末しておいたから安心して俺の側にいな」
そう言うなり、司はクーに抱きついた
「ぎゃ〜」
もがくクーであったが、逃れられそうもない
「ちょっと、クーが嫌がってんでしょ、離れなさいよ」
と、ナツキがエバーの口から出て来て、間に入った
「こいつは誰だ?」
「私のご主人様だよ!」
「ご主人様だ〜あ゛!?」
ナツキを睨む司
「ご主人様ってのは、言葉の綾で…」
と説明するも
「あかりを賭けて決闘しろ!」
もの凄い剣幕で、捲し立てられた
まあ、最悪負けてもクー(あかり)ちゃんなら逃げて来れるだろう…
「あかり、そこで俺の勇姿を見てな」
司は空に飛び立ち、呪文を唱え始めると、司の前に魔法陣が展開されていく。
「カイザード アルザード…」
どうやら霊界ではイメージとそれに見合う魔力さえあれば、現世のアニメの必殺技も再現出来るらしい
「あ、あの呪文はハーロ○ーン?!」
目をキラキラさせながら、クーが呟く、何の呪文だか知らないが、背筋に冷や汗が走る
「させない!」
ナツキはクリ棒を投擲するも、難無く避けられる
「開け地獄の門、『ハーロ…」
「ベル様、後ろ!」
突然、羽のあるナーガの女性が現れ、叫んだ
「ぐ‼︎」
投擲したクリ棒が空中で旋回して背後から襲ったが、司は回避して脇腹を掠めるのみに止まった
だが、展開していた魔法陣は消え去った。
「ああ〜、ハーロ○ーン見たかったのに〜」
と、残念がるクー
「あなたはどっちの味方な・の・か・な?」
クーの両頬をつねりながら問うムツキ
「痛い痛い、も、勿論ご主人様だよ〜」
と涙目のクー
同じ魔法というのも味気ないな、と、司は別の呪文を唱えだした
「ブー・レイ・ブー・レイ…」
「あれはエグゾー○ス?!」
空では絶えず飛んで来るクリ棒の斬撃を躱し続けている
「それなら!」
ナツキが左右の手から、それぞれファイヤーボールを作り、同時に投げる
しかし、それすら易々とかわしながら、司が詠唱し魔法のが展開されていく
「全てを焼き付くせ! 『エグ・ゾー○ス!!』」
司は数千度の炎に包まれ、高速で落下して来た。
だが、あさっての方向に落下し、木々を消滅させ地面に突っ込んだ
「ギィヤァァァァァ…」
そして、全身火ダルマのまま転げ回った…
完全に自爆した司は、黒焦げになりながらも、ヨロヨロと立ち上がり
「ゲホッ、ゴホッ、今回は引き分けにしておいてやろう!」
満身創痍の様子だが、上から目線でそう言い放ったのである
「ベル様!」
と、先程叫んだナーガの女性が飛び出し、司をヒールしている
「まだ決闘の途中…」
と、クーが言いかけるが
「ア゛?!」
女性がもの凄い表情で睨めつけ、クーはあまりの迫力に引き下がった
「ねえクー、司っていつもあんな感じなの?」
とムツキ
「う〜ん、普段はカッコイイんだけど、厨二病が出ると、あんなんかな〜」
「厨二病って?」
「厨二病ってのは病気じゃないんだけど…呪いみたいなものかな…」
「呪いか〜、怖いわ〜」
地形が変わる程の決闘ではあったが、とりあえず決闘は引き分けで終わったのであった。