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平和の終わり

 彼女を駅まで送り、家に帰ってきた。


「ただいまー」


「あーっ!おかえり、おにーちゃん!!」


 この小動物みたいに可愛い妹は二つ下の中学二年生で、学校ではもてる方らしい。


「茜はいつも通りテンション高いな」


「お兄ちゃん、そんなテンション低いと彼女できないぞーっ!」


「できた」


「そうだよねそうだよね、って...ん?」


「だからできた」


「はーーーーーーーーーーーっ!?」


「じゃあ」


「ちょっ...えっ?!どんな人?どんな人!?」


「結城凛華ってわかる?」


「えっーーーーーーーー!?その人私でも名前聞くよ?!うちの学校でも超かわいいって言われてる人だよ!」


「あーそうだね。かわいいよ」


「そーいうことスラっと言うんだね~。そっかそっかー、お兄ちゃんにも春が来たんだねー」


「ん、じゃあ」


 そう言って自室に入った。

 しばらく今日あったことを考える。

 

 明日からいろいろやらなきゃいけないことが増えたな。

 それに今日の帰りの打ち合わせでは、できるだけ問題を未然に防ぐことに決まった。

 

 明日から学校生活がとても変わりそうなので頑張らないとな。


「よし。やるか」


 パソコンの前に座り、作業を始めた。

 

 しばらくして作業も終わり、晩御飯を妹と食べ、今日は寝た。




 翌朝、いつもより30分早く起きた。


「おにいちゃん、今日は早いね!綾瀬さんと学校行くの?」


「そう、駅に迎えに行く」


「そっかそっかー、頑張ってねー!はい、朝ごはん!」


「ありがと」


 いつも通り朝ごはんを妹が用意してくれた。

 

「いただきます。...んっ。美味しい」


「...っ!ありがと。やっぱお兄ちゃんは笑ってた方が良いね!」


 若干顔が赤らんでいるな。俺の笑顔なんかの何がいいんだろうか。

 茜の満面の笑みに破壊力あるのは納得できるが。

 まあいいか。


「じゃあいってくるな」


「はーい、いってらっしゃい!」




 駅についてしばらくすると凛華が出てきた。

 周りの人はちらちらと凛華を見ているのが分かる。


「凛華、おはよ」


「宏樹君、おはよう」


「今日も可愛いね」


 少し笑ってみた。


「ふふっ。ありがと。笑った方が良いね」


「そうかな、凛華の前では笑うようにするよ」


「そうしてっ!じゃあ行こっか」

 

 駅の前でいちゃついてみた。

 学校の最寄り駅ということもあり同じ学校の生徒もよく見ている。

 凛華はこの可愛らしい表情を学校では見せないため、俺と仲がいいことが示せただろう。

 付き合っていると勘違いしてくれる人もいそうでありがたい。


 二人で学校まで歩き始めた。


「見せつけるとは言ったけど可愛いなんて言ってくるんだね」


「バカップルっぽくていいだろ」


「その割に照れてはいなかったね」


「いいだろ。照れてる演技はしたくなくてさ。そのための凛華の前だけでの笑顔だからね」


「そーゆー感じね。今日からの学校生活楽しみだね」


「なんだそれは嫌味か」


「いえいえ。今日から宏樹君が人気者になっていき、私にアプローチしてくる人が減る。とても楽しくなりそうじゃないですか」


「そーか、じゃあ嫉妬に狂ってそうな女子を焚き付けるとしよう」


「あら、じゃあ私は男子を焚き付けるね」


「体術は使えないからな。殴り掛かられたりすると面倒だな」


「じゃあこの話はなしね。学校に着いたね。じゃあ昨日の通りによろしく」


「ああ」


 昨日の打ち合わせでは、俺との間ではいかなる時も敬語を使わないこと。

 これはいつ聞き耳をたてられていてもいいようにと、ぼろが出ないように慣らすためだ。

 

 そして名前呼びをすること。

 これは心の中でもだ。


 あと馴れ初めはナンパから救ったというありがちなもので、遊園地デートの最後に観覧車で俺が告白したという筋書きだ。

 ナンパされたとき同じ学校の人はいなかったため、ナンパされたのは一か月前ということにしてある。さすがに一週間で付き合うということをよく思わない人もいるからだ。


「結城さん今日も可愛いな」

「あの隣の誰だ?」

「なんだあの陰キャは」

「駅の前でいちゃついてたらしいぞ」

「まじっ?付き合ってんの?」


 学校に入ると視線を感じるというか俺らが噂されているっぽい。

 予想通りだな。駅前で長めにいちゃついた甲斐があった。

 俺らを横目に見ながら先に学校に行ったやつがいるはずだからな。

 この様子だと教室に入れば...


((((((じーーーーーーーーーーーーーーー))))))


 思った以上に視線感じるな。

 そりゃ朝から学校一の人気者である凛華が、男といちゃついていたという噂が流れ、その二人が教室に一緒に入ってきたのである。

 これは説明の手間が省ける。


 この沈黙を破るやつが一人近づいてきた。


「おいおい宏樹!これは面白いことになってそうだな!!」


 俺の学校で数少ない友達の一ノ瀬悟が話しかけてきた。

 こいつはこの状況を楽しんでやがる。

 まあいいが。


「実は一か月前くらいに学校外で会うことがあって。そこから二人で遊ぶようになって。いろいろあって付き合うことになったんだ」


「おー!やるなぁ!!嫉妬でいじめられそうだな!」


 わざとちょいちょい伏せながらクラスの前で宣言した。

 女子の反応は祝福している人が大半で、他は安堵しているかのようだった。

 男が凛華に寄り付かなくなるのが喜ばしいのだろう。


 反対に男子はほとんどが嫉妬しているようだった。

 だが、その他には俺に対して怒っている人や祝福している人もいた。


 悟もバカそうな振舞いをしているがすぐにいじめの牽制をしてくれている。

 ほんと頭が上がらんな。


 そうこうしているうちに担任の先生が教室に来たため席に着いた。


 こっからが本番だな。気合い入れるか...

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