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幸せが集まってくる  作者: 神居 真
9/11

不幸要因

 いろいろと挨拶廻りをして、夕実を見たら、ちゃんと来夢が相手をしていてくれていた。一人っ子の来夢には、義理でも姉ができるのは嬉しいのかもしれない。

 ただ、未だ独身なのが唯一の気がかり。私や未季や夕実に刺激をもらい、アメリカ人でも構わないので、誰かと結婚して欲しい。

 それにしても、昴は本当にダメ人間。私の家族を、紹介しておいてと頼んだのに、知り合いのいない夕実を独りきりにして、昔の同僚との話に、夢中になっている。

 家に帰ったら、こっぴどく苛めてやる。

「夕実さん、ちょっと未季のお父さんを紹介するから、ついてきて」

 仕方なく、私が、私の弟裕樹と、その嫁と、未季の弟とを紹介することにした。

 

 披露宴では、親族は末席だけど、新郎側は、昴と夕実の二人なので、武生の同期らしい若い男の子らと一緒の席。流石に夕実と話をするだろうと思っていたのに、そうしていたのは最初だけ。直ぐに、その卓の若者と勝手に盛り上がり始めた。

 夕実は、その輪に入れず、完全に孤立している。

 昴は、独りにされる孤独感を、全く理解していない。

 そもそも、私が何度も、夕実に電話しろと言っても、「あいつなら全く心配ない」と、無責任に言い放ち、一向に電話しない。里帰りもせずに出産し、遊びにも行かないで、家に居て、悪戯盛りの三歳児に加え、乳飲み子の赤ちゃんまでいる。育児ストレスは相当のはずなのに、そのはけ口がない。そして、漸くこんな宴席に出て来たのに、独りぼっち。

 めでたい席であっても、向こうまで行って、昴を怒鳴って、叱りたい気分になる。

 

 そんな不満を抱いていると、司会者が、未季の紹介で、「退職して、武生さんのお義父さんの所で、暫くは働く予定になっています」と告げた。それを聞いて、昴は突然慌てだし、こっちに「聞いてないぞ。どういうこと?」と口ぱくしてきた。

 未季の人件費までは、稼ぎ出せないと、急に不安に思ったらしい。

 未季を雇うと決めたのは私なので、当面は私のパケットマネーで、未季の給与は支払うつもりでいるけど、昴には人件費分も稼げと、苛めてやることに決めた。


 披露宴は、無事終り、昴は武生の隣に立ち、来場者を送りだす。

 それを待つ間、夕実とゆっくりと話をするつもりだったのに、彼女は終わると直ぐ「子供たちを主人に任せているので、御免なさい」と帰ってしまった。

 仕方なく来夢の結婚を煽って、時間を潰したけど、夕実の事が気になって、私はまた寂しい気持ちを抱き、気分が沈み始めていた。


『幸せは、心を許せる量の積分値』 これは昴の持論。

 自分がどれだけ大きく心を開けるか、そんな心を許せる明るい人物が、自分の周りに、どれだけいるか。幸せは、その積分で決まる。

 それは、私も、真実だと思う。

 徹真と暮らしていた時は、夫の徹真と、娘の来夢だけでなく、私と仲の良い徹真の会社の人も、よく家に遊びに来てくれていた。皆、幸せそうで、私の心は、幸せに満ち溢れていた。

 でも、徹真が亡くなり、来夢も悲しそうにしていると、不幸に押しつぶされそうになった。

 来夢に彼氏ができ、未季も遣って来て、三人で生活していた時は、まだ多額な借金の返済で大変だったけど、毎日が幸せに変わった。

 そして、今は大好きな昴と一緒に居ても、以前程、幸せを感じない。

 理由は、周りに心を許せる幸せな人が少ないから。積分値では、あの時に遠く及ばない。

 だから、再び、未季を引き入れる事にしたのに、心配な負の感情を持つ人が現れた。マイナスを積分すれば、マイナスにしかならない。

 心を閉ざせば、良いのだろ気けど、娘になる子に、心を閉ざすなんて、絶対に出来ない。だから、来夢や夕実には、幸せになって欲しい。

 娘と話しながら、そんなことを、考えていた。



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