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優音


 私の両親は仕事で忙しく、私は結構小さい頃から放っておかれていた。


 そんな私が寂しくなかったのは、どう考えたって、幼馴染の、彼がいたからだ。


 彼はあまり外で元気に遊ぶ方ではなかった。


 けど、私が一人で寂しくならないよう、新しいボードゲームを作ったりして、たくさん遊びを考えてくれた。


 そんな彼も私も、もう高校生だ。


 私が部活で忙しかったりしてお弁当を作らずコンビニでお昼を買ってるのを見てるからか、彼はお母さんから預かった多めのお弁当を、いつも分けてくれる。


 コンビニの濃い味ではなくて、なんだか温かい味だった。


 たまにまずいと思ったら、それは彼が作ったものだったりする。


 だから結局、不味くなくて美味しいのだ。


 そんな私は、彼が熱心に書いている小説を読みたいと思っていた。


 だから私は小説執筆部の部誌をもらって読んでみた。


 彼のペンネームは、名前をひらがなにしただけだった。


 小説の内容は、児童文学だった。


 どこか彼と私の小さな頃を思い出させるような、そんな丁寧な作風。


 中高生に向けて配っている部誌に載せるには、少し幼稚だからか、彼の児童文学は、その後の部誌には載ることはなかった。


 そんなある日、私は、小説家になろうと言うサイトを知った。


 知ったきっかけは、小説を読みたいと思ったからだ。


 図書館に行くのはなんだか気が向かなかったし、本を買うのはお金がかかるからいやだった。


 うちはそんなに裕福じゃないから、私のお小遣いも少ない。


 部活もがんばりたいからバイトは避けたいし、でもおしゃれにはお金をかけたかったから、そんな本を買うなんて……という感じだったのだ。


 だから、小説家になろうというサイトは、無料で小説が読めるから、とても良さそうだと思ったのだ。


 しかし、予想以上に、人気作品のジャンルや傾向に偏りがあって、驚いた。


 面白かったけど、私が読みたいのとは、少し違うと思った。


 思わず私は、彼のペンネームで検索をかけていた。


 そうしたら、一件だけ見つかった。


 タイトルとあらすじから見るに、児童文学のようだった。


 間違いなく、彼の小説だった。


 だから私は、すごい勢いで一気読みした。


 彼の小説は、そのすごい勢いで読むのを優しく受け止めて、速度を落とすのを促すような、そんな穏やかな話だった。


 私はせっかくだし、感想を残しておこうと思った。


 毎日会っている彼に、こんなところで感想を伝えるというのは、なんだか不思議に思えたけど、それでも彼がここに小説を残してくれたんだから、私もここにちゃんと残そうと思った。


 次の日には、彼から感想の返信が来た。


 私だと気づいてるのかな?


 いや気づいてないだろうな。


 だって「ゆうね」というユーザーネームは珍しくもなさそうだし、そもそもユーザーネームなんてそんなに見ないのではないかと思うし。


 だから私はこれで満足した。


 ⭐︎    ⭐︎     ⭐︎


 そんな私は、今日も彼と登校する。


 ふと、隣で少し嬉しそうに歩いている彼が言った。


「感想、くれたの、優音だったんだな」


 私は瞬間的に恥ずかしくなって、だから、


「それは、どうだろうねー?」


 と、明るい声で返した。


お読みいただきありがとうございます。かなり好き勝手に書いてしまって申し訳ございません。

もしよろしければ、評価をしていただけると嬉しいです。


 この小説は思いつきで書いたものなのですが、個人的には、特定のジャンルが盛り上がっていてすごい勢いで作品が生み出されて読まれているのも、あまり目につかないテーマで書いていてもきっと世界のどこかの誰かが読んでくれるというのも、どちらも素晴らしいことだと思います。それらに優劣はないと思っていて、小説家になろうの発展を作者のはしくれとして願うばかりです。

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