二限目 現実
「はーい! 次僕回しまーす!」
取手に手をかけたそのとき、ストップがかかる。
「ちょっと君! ガラポン券は!? 1000円分買い物してこないと回せないんだよ!」
「え、そうなの?」
「いや当たり前だろ。なんで無料で引けると思ってんだよ」
渋々財布を開けてみると中に札らしきものは入っていない。
——入っているのは50円硬貨三枚と100円硬貨一枚のみ。そして謎のしわくちゃレシート。いわゆるスカスカな状態だった。
「えぇ⋯⋯」
「ほら、さっさと帰って勉強をしろ。社会勉強した方がいいぞ。まじで」
「でも、本当は君と一緒に遊びに行きたかった⋯⋯。ごめんね、どこにも連れて行ってあげられなくて。」
「ぴえん」の如くうるうるとした瞳を彼に向けてみる。これが今JKにはウケるらしい。知らないけれど。
「別に行きたいとは言っていないんだが」
「いつも話してくれるからお礼に旅行でもって思ったんだけど、ダメだったみたい。ははっ⋯⋯ダメだなぁ。僕は」
渾身の「ぴえん」を完全スルーされた上旅行には行きたくないと言われて少し凹む⋯⋯。ふりをした。
「⋯⋯俺も言いすぎたよすまん。そう気を落とすなって。海にでも行けばいいだろ?バス代くらいなら払えるだろ」
「じゃあ海で決定!」
「いや一人で行けよ」
そもそもの話出かけさえすればどこでもいいのだからわざわざガラポンを引かずとも海に行けばよかったのだ。
「じゃ、明後日海ね! バーイ!」
「ちょっと待てって! ⋯⋯もういねえし」
(少し無理やりだが)海に行く約束を取り付けることができた。明後日が待ち遠しい。