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一限目 旅行に行きたい

「陽キャになりたい!」


 いつもは机に突っ伏して眠る昼休み。隣のやつも例に漏れずぐっすり寝ている。

 けれどこんな日々とも今日でお別れ! 明日からは晴れて夏休み! 自由!

⋯⋯つまり、この現代文の時間を乗り越えた先の終業式さえ終えればしばらく羽を伸ばせるというわけなのだ。今回は赤点回避に成功した上追試も無いので夏休みを謳歌したい。


「ねえ、もうすぐ夏休みじゃん。どっか旅行行こうよ」


 隣の席の彼の肩をつつくと鬱陶しそうに手で叩かれる。それはまるで蚊の羽音に対する態度と同等であった。


「夏休み! どうせ暇でしょ!」


「うるせぇな、俺はお前と違って忙しいんだよ馬鹿」


 鋭い視線で睨まれる。頭の上にある耳がピコッとたまに動くのが面白い。息を吹きかけたらかなりの力で頬をつねられた。


「他の奴と行けよ。面倒くせぇ」


 つねられたままだと意外にも喋れないことが分かったので手を離してもらう。ここら辺は聞き分けがいい。


「大丈夫だって! たしかに男二人でむさ苦しいけどそこは我慢するから」


「行かないって言ってるんだけど」


 彼は(おそらく)休日の昼も寝ているだけなのでこれは有意義な時間を過ごさせることができるだろう


「じゃあ、明日どこ行くか調べてきてね! おやすみ!」


 昼休みはこれから来たる現代文に備えて眠るべし。

⋯⋯決して陰キャだから、話す人がいないからでは無い。

 現に最近この戦法によって眠ることなく授業を受けることができている。




「——起きなさい! いつまで寝てるんですか!」


 大声に心臓が飛び跳ねる。あたりを見渡すと皆立ち上がってこちらを見つめている。


「え、皆何してんの」


 数秒のフリーズの後、手汗が多量に分泌されたのはいうまでもない。



 ジリジリと夏の太陽がアスファルトを焦がす。日陰を通るために僕たちは商店街から帰ることにした。


「⋯⋯本当に馬鹿だなぁお前。そんなんだと夏休み旅行行く暇なんてねえだろ。勉強しろ勉強」


 一学期の最後の最後でやらかしてしまったのは正直なところ残念ではあるがそんなことは微々たる問題だ。夏休みの旅行に心が躍るので痛くも痒くも無い。


「いやいや、昨日夜勉強頑張った疲れが出ただけだから! 旅行先はどうする?」


 商店街はいつもと違って子供達で活気が溢れている。アイスを片手に駆けていく少年少女がちらほらと見かけられることから小学校の夏休みは一足先に始まっていたのだろう。

 時折煌びやかな鐘の音が響く。音がした方を見ると「夏休みキャンペーン」の旗を掲げている。どうやらガラポンをやっているようだ。


「まだ一言も行くとは言ってないが?」


「まあまあそう堅いこと言わずにさ? せっかくの長期休暇だよ? なにかしないともったいないよ!」


 あわよくば可愛らしい子に会って遠距離でも良いから恋愛がしたい⋯⋯ということは心のうちに秘めておこう。


「行くとしてもだ、金は持ってんのか? 俺、旅行に行くほどの金は持ち合わせてねぇぞ」


「まあ任せなさいって! あのガラポンで当ててくる!」


 そう、旅というのはハプニングがあってこそ面白いのだ。ここは一つ奇跡を起こして見せよう!

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