朝チュンから始まる恋物語
──強くなるから。
湊くんに釣り合うくらい強くなって、可愛くなって、それですごく、すごい人になるから。
だから……だからね。次会うときは──
『ねぇ! 起きて! もしも〜し! 湊く〜ん!?』
「ん……むにゃむにゃ」
『寝言でむにゃむにゃ言う人なんて、アニメ界にしかいないよ!』
ちゅんちゅんとスズメの鳴く声に混じり、聞き覚えのある声が耳朶を刺激する。
「……さー、ちゃん?」
僕は霞む視界の先で、ニコニコと笑みを浮かべた幼馴染の姿を捉える。
『そうだよ〜、朝だよ〜、起きる時間だよ〜』
「……っ、嗚呼……夢かぁ」
さーちゃんこと、桃原桜は僕の幼馴染である。
しかし、彼女が僕を起こしに来るなんて絶対有り得ない。一人娘が妹を道連れに井戸に飛び込んで焼死するくらいありえない。
多分、これは昨日の件で傷心した僕が見た都合の良い夢だ。
『こーらー。早くしないと耳齧っちゃうよ?』
「はいはい。好きにしてくれ」
『ちゅーしちゃうよ?』
「はいはい。好きにしてくれ」
『美乳委員長調教黙示録捨てちゃうよ?』
「はいはい。好きにしてく──それはダメだ!!!」
ガバリと起き上がる僕。覚醒する脳。
傍若無人な幼馴染を必死に止めようとして──
しかし、次の瞬間には僕の動きは止まっていた。
何故なら、鮮明になった僕の視線の先にいたのが、半透明な幼馴染だったから。
夕方にもう1話投稿しますので、是非、読んでみてください。