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#12 ステータスが弄れるらしいです

 リーファは駆けながらもぶつぶつと呪文を唱える。するとリーファの背後に幾何学模様が現れ、そこから無数の結晶のようなルイスめがけて飛んでいく。


 どうやらリーファは何かしらの魔法を使ったようだ。


 それらの結晶は凄まじいスピードでルイスめがけて飛んでいくが、この程度の攻撃はルイスの方も読んでいたようで、ロッドを前方に向けると、ロッドの先を中心に巨大な膜のようなものが広がり、結晶を弾いていく。


 だが、それでもリーファは攻撃をやめずにルイスとの距離を詰めると、ロッドの先端をルイスに向けてまた何かを呟いた。


 ルイスとリーファ、それぞれのロッドの先端が触れ、眩い閃光が洞窟内を照らす。

 が、ルイスが少しロッドをリーファの方へと押し込むと力負けしたリーファが後方に飛ばされるが、直前にくるりと宙返りをしてうまく着地した。


 リーファは本気で戦うつもりらしい。


 が、当然ながらリーファ一人でなんとかなるような相手ではない。

 最初は調子よく攻めていたリーファだったが、一発、また一発と相手の攻撃がジャブのようにリーファを襲い、体力が削られていく。


 俺はそんなリーファを眺めていることしかできない。

 なんども立ち上がろうとするが、やっぱり、体が動かない。


 俺はポケットからインジケータを取り出すと手のひらに乗せた。


【登録名】

ルドルフ

【種族】

オーク

【装備】

ありふれた棍棒

【基本スキル】

レベル1+5

HP 5/50+15/300

MP 50/50+80/100

攻撃 20+150

防御 20+350

命中 30+150

回避 20+350

【特殊スキル】

金喰い


5000


 俺のHPは底をつきかけていた。

 どおりで身体が動かないわけだ。このままだと、もう一発ルイスから攻撃を食らったら魔法石になっちまう可能性が高い。

 そうなってでもリーファが守れるならば俺は喜んで戦うが、現状、それすら叶いそうにない。


 俺はなんとかならないものかと、じっとステータスを見やる。


 そして疑問に思う。


「…………」


 疑問に思ったこと。

 それは経験値の振り分けにムラがあることだ。


 お金を食べたことによって俺の各ステータスは大幅に増強している。

 が、例えば攻撃力と防御力を見ただけでも、攻撃が20+150であるのに対し防御が20+350と振り分けられた経験値にムラがあることがわかる。

 いったい何が基準で経験値が振り分けられているのかはわからないが、このままだとかなり不便だ。


 そう例えばこの防御に加算された350を攻撃に加算できたりすれば色々と便利なのだが。


 そう思いながら防御 20の隣に表示された+350の文字をタッチした。

 すると、


 え?


 俺はそこで異変に気付く。

 俺が+350の文字から指を放そうとしたとき、わずかに+350の文字が動いたように見えた。


 ちょっと待てよ。

 その奇妙な動きを見た俺は再び+350の文字にタッチして、そのまま指を攻撃 20+150の右隣に指を持っていき指を放してみた。

 すると、


「…………」


 さっきまで防御の隣にあったはずの+350の文字が防御 20+150の右隣に移動した。


「っ!!」


 俺は驚きのあまり息が止まりそうになった。

 この現象が意味すること……それは。


 加算された経験値は自由に振り分けることができる……。


 つまり俺は自分のさじ加減で攻撃特化型や防御特化型にステータスを編集することができるということだ。


 おいおい、そういうことは先に言えよっ!!


 俺は見えない誰かにそう悪態をつきつつ再びステータスを見やった。

 今度指を伸ばしたのは、MPだ。MPに加算された80/100に指を伸ばすとそれをHPの隣へと持っていく。すると、80/100はそのままHPの隣に移動する。


 ステータスが変わった瞬間、俺の身体から痛みがすっと引いた。


 嘘だろ……。


 やっぱり俺の予想は当たっていたようだ。


 俺はリーファを見やった。リーファは果敢にもルシアとバトルを繰り広げていたが、状況は劣勢になりつつあった。

 俺は慌てて他の経験値にも触れてそれを攻撃へと持っていく。


【登録名】

ルドルフ

【種族】

オーク

【装備】

ありふれた棍棒

【基本スキル】

レベル1+5

HP 5/50+15/300+80/100

MP 50/50

攻撃 20+150+350+350+150

防御 20

命中 30

回避 20

【特殊スキル】

金喰い


5000


 おおっ!!


 これで俺の攻撃は単純計算で1020だ。


 俺はそっと立ち上がる。

 リーファとの戦いに夢中のルイスの背後へと歩みよると棍棒を大きく振り上げた。

 そして、


「どりゃああああっ!!」


 力いっぱい棍棒を振り下ろした。

 が、その直前に、ルイスは俺の攻撃に気がつきリーファを弾き飛ばすとロッドを俺に向けて防御の姿勢を取った。

 振り下ろされた棍棒はルイスのロッドに直撃する。


 ルイスはロッドを構えたままズズッと押されるように後退する。

 これにはルイスも驚きを隠せないようだ。

 だが、俺は間髪を入れず二発、三発と打撃を加えていく。


「お、おい、なんなんだよ。お前っ!?」


 ルイスは必死に攻撃を防ぎながらも信じられない物でも見るように俺を見つめる。

 だが、俺は手を休めない。

 俺は何度も何度もルイスめがけて棍棒を振り下ろす。


 そして、十発ほど殴ったところで防ぎきれなくなったルイスはすっと素早く身を引いた。


 棍棒は意外と重い。

 それを十発も振り下ろすという作業は想像以上に体力を消費するのだ。

 いくら無我夢中とはいえさすがに息が切れてしまい、肩で息をしていると、同じく息を切らせたルイスが反撃に出る。


 ロッドを俺に向けると何かの呪文を口にした。


 直後、俺は意図も簡単に吹き飛ばされた。


 さすがは攻撃に全ての経験値をぶっこんだだけのことはある。さっきとは比べ物にならないほどに簡単に吹き飛ぶ俺にルイスはまた目を丸くする。


「な、なんなんだよ。お前は……」


 俺は再び瀕死状態に陥った。


 このままじゃまずい……。


 俺は再びインジケータをポケットから取りだろうとする。

 こうなったら全ての経験値を今度は防御にぶち込むしかない。


 が、


 俺がインジケータを取り出そうとした瞬間、俺の手からインジケータが滑り落ちた。

 ルイスは唖然とする俺を見て不敵に笑う。


「ほう……。何かよくわからないが、お前、ステータスを弄れるみたいだなあ」

「…………」

「が、それももう終わりだな」


 そう言うと、今度こそ俺を逃すまいとロッドを俺の顔面めがけて突き出した。


 そして、


「死ねっ!!」


 そう言うと、この間のダンジョンと同じようにルイスの背後に巨大な幾何学模様が現れ、そこから眩い光が俺目がけて一直線に伸びる。


 が、その時。


 俺、めがけて一直線に伸びる光の速度が急激に遅くなっていく。

 というよりも、自分の周りのスピードが急激にスピードを緩めていく。

 スローモーションのように。


 俺には目の前で何が起こっているのか理解できなかったが、とにかく、無我夢中に襲い掛かる光から自分の身を回避する。


 直後、周りの時間は再び元に戻り、さっきまで俺のいた場所が真っ黒になった。


「はあ?」

「はあ?」


 俺とルイスは同時に目を丸くする。

 俺にとってもルイスにとっても信じられないことが起こった。


 が、俺の方がほんの少しだけ早く真相に気がついた。


 俺は見た。

 リーファに甲冑を脱がされた上に上着をまくり上げられる少女の姿に。

 ルルナは顔を真っ赤にしたまま必死に両手で露わになった下着を隠していた。


「み、見ないでっ!!」


 ルルナが恥ずかしそうに叫んだ。


 どうやら、ルルナが恥ずかしがって彼女の回避力が俺に振り分けられたらしい。


 ルルナの叫び声にルイスは思わずルルナを見やった。


 そして、ルイスは後頭部を俺に向ける。


 今だっ!!


 俺は慌ててインジケータを拾い上げるとステータスへと手を伸ばす。

 そして、全ての経験値を命中にぶっ込むと、ルイスめがけて持っていた棍棒を全力で投げた。


 ゴーンっ!!


 と、鈍い音が鳴ってルイスはその場に倒れた。


 俺たちはまた魔術師に勝った。


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